だからもっと早く起きるべきだったんだ
今日は終日忙しいことはわかっていた。仕事は休み。しかし明日、亡母の一周忌がある。その準備をしなければならなかった。あいにく妻は出勤日だ。妻は自分が仕事なもんだから、これでもかこれでもかと用事を言いつけてくる。まいる。おかげで僕のメモは真っ黒だ。ちょっと大袈裟か。いやでもまぁそれに近いことは事実だ。
だからもっと早く起きるべきだったんだ。今日の文章筋トレは妻が起きてくる前の静かな時間にするべきだったんだ。起きてくる前の静かな時間に済ませておくべきだったんだ。
でもそれができなかった。僕が悪かった。
朝7時10分。しまった寝過ごしたと飛び起きて着替えを済ませ顔を急いで洗って朝食もとらずに文章筋トレするためリビングのテーブルに座るなりポメラを開けた。
さて何を書こうかな。しばらく考え込む。しかし今朝は何も浮かんでこない。たぶんどこかで妻が起きてくる前に済ませねばという焦りが邪魔をしていたんだ。違いない。
ブレーキ。完全にブレーキ。焦れば焦るほど何も書けない。書けない。書けない。書けない。三者三振で書けない。
朝7時30分。そうこうしているうちに案の定、妻が起きてきた。やっぱりな事態。両手で着替えを抱えて寝室からパジャマ姿のままリビングに出てきた妻は、花の咲いたキャベツのような何とも歪な髪型でリビングのテーブルに座って文章筋トレをしている僕の斜め向かいに腰掛けた。
もうこうなったらおしまいだ。文章筋トレどころではない。やっぱり妻は、椅子に腰掛けたままの姿勢で着替えながら何やら呟きだした。
僕が書きものをしていることなどお構いなしだ。
食パンがなかったから… あと果物はリンゴとかバナナとかでいいわ… それからイチゴも一パック必要… 和菓子もね。桜餅なんかどうかな…
文章筋トレは孤独な作業なんだ。僕は、いまその孤独な作業の真っ最中なんだ。
夕御飯を炊くなら2合でいいわ…
だからもっと早く起きるべきだったんだ。でもそれができなかった。今日、終日忙しいことはわかっていたんだ。僕が悪かった。
夜9時45分。妻は炬燵で横になってテレビを観ている。やっと文章筋トレの時間がやって来た。よかった。いまなら思考を中断されることはない。至福の時間。
今日も無事、文章筋トレできてよかった。明日もまた文章筋トレできますように。僕は祈る。 960文字