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とにかく10回

趣味で素人落語をやっています。観るのも好きですが演じるのはもっと好きです。3年前から落語教室に通っています。習ってるわけで。半年で1クール。半年ごとに発表会があります。成果発表会です。半年かけて新しいネタをひとつ覚えては高座にかける。このくり返しです。

教室は月に2回。1回あたり2時間。生徒は14人。2時間なので毎回全員に稽古をつけてもらえるわけではありません。つけてもらえるのは月2回のうちの1回です。半年あるといっても実際ひとりひとりに稽古をつけてもらえるのは正味のところ5回(あとの1回は発表会)です。

ネタは他の生徒とダブらないかぎり演りたいネタをやらせてもらえます。ありがたいです。「そのネタは素人のあんさんでは、ちょっと・・・」と言われることはほとんどありません。ネタ選びは自由。やりたいネタをやりなさい。これが先生の方針です。ただし時間制限があります。基本12分。長くなっても15分にはおさめなさい。これが唯一、先生からのお約束です。これは守らねばなりません。

発表会は2部構成。7人ずつ2班にわかれて生徒全員が高座にあがります。つまり素人落語がそれぞれ7席つづくわけです。これって正直しんどいです。お客さんの身にもなってみなさいというわけです。いうても素人です。下手です。せいぜい長くても一人15分が精一杯です。言われてみればその通り。全員納得です。

選ぶネタは自由です。これはほんとにありがたいです。好きなネタができるわけですから。落語ネタといってもさまざまで15分、20分のネタもあれば、30分、40分の大きなネタもあります。自分の実力は棚に上げて大きなネタもやってみたい。冒険したい。これが人情。これが素人です。だから教室に通ってまでしているわけで。しかし大きなネタを選べば苦労するのは自分です。でもその苦労もしたいからしてるわけでこれもまたウレシタノシです。

まず苦労するのはネタを短くすることとネタを覚えることです。いつもはじめにこの2つ、ほんま苦労します。毎度毎度苦労します。ネタを短くするのはなんとか先生の知恵も借りながらでもできます。しかしネタを覚える方は先生が手伝うわけにはいきません。手伝いようがないのです。

ネタを覚えてなければ先生も稽古のつけようがありません。しかも稽古は正味5回です。本番までに発表会までに仕上げなければなりません。ネタ覚えは必死です。でもそうそう簡単には覚えられません。しかも高齢になればなるほどそうです。覚えられません。でも高齢だからと言いわけしているわけにはいきません。覚えるのと忘れるのの、忘れるのと覚えるのの、壮絶な戦いのくり返しです。

はじめの1、2回、いや3回ぐらいまではうろ覚えでの稽古です。稽古らしい稽古にはなりません。まことにもったいないはなしです。けどこれがほんまのところです。なんとか早く完璧に覚えてガチンコ稽古でレベルアップしたい。誰もがおもっていることです。僕もそうです。

最近、覚えるためにはコツがあると、やっとわかってきました。わかるのん、遅いわっ。けど。まぁええ。わからんよりマシやろ。開き直るしかない。で、そのコツというのは、すごく簡単。とにかく10回、です。

すみません。知ってた人はごめんなさい。ここまで読んで、なんやそれですよね。まぁ薄々感じてたでしょうけどね。

すみません。

ここから少し聞いたはなしです。知人の女性が、着物を自分で着たいとおもったそうな。でも習いに行く時間も余裕もない。そこでどうしたか。まず着物の着付けの方法をインターネットで調べた。それから見よう見まねで、とにかく10回やってみたそうな。反復練習です。そしたらあらま10回もしたら、できたできたできました。誰にも教えてもらわずインターネットだけで着ることができたそうな。

さてこのはなしを聞いて。とにかく10回。効果ありそうと、さっそく僕もやってみました。まず12分のネタ原稿を作り。原稿の棒読みからはじめて、とにかく読む読む読む読む。10回読む。すると10回も読む頃にはなんとなく原稿ははいっている感じになりました。

そして次に、今度は原稿なしで演ってみる。はじめは辿々しいもんですがとにかく原稿なしで演ってみる。みるみるみる演ってみる。とにかく10回演ってみる。

すると、あら不思議(ていうか不思議でもなんでもないけど)。できる。やれる。必ずそうなる。まぁ騙されたとおもって、お試しくだされ。たぶん、たいがいのことは、できるようになるとおもいますよ。知らんけど 1863文字


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