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0-10リレー小説Ⅱ

俺にはたまにこうゆうことがある。まるで洪水のように止めどなく記憶が溢れてくるのだ。

母が車に残した少量のコロンの匂いが身体中を駆け巡った感覚。気持ち悪いと思った瞬間それに取り込まれる。

―トリガーはもうわかっている。静寂と女性独特の残り香だ。

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<記憶は、毎回車の中から、始まる>

俺は助手席に座っている。何か違和感を感じ足元を見ると、足が席の下についていない。

サイドミラーを確認すると、やはりそうだ。小学校低学年のような少年がそこにいた。

窓の外はどうにも暗くて、顔がよく認識できないが長い髪に白いワンピースを着た女が運転席に座っている。

しばらく走った後、異変を感じだす。間近に迫ったガードレールを前にしても車のスピードを落とそうという素振りが女には見られないのだ。

「止めて!!」俺は、その女に向けて叫ぶ。

何回も経験しているので、叫んでも止まらないこと分かっているのだが叫ばずにはいられない。記憶に現実の俺の意思は作用しない、ただループするだけだ。

現に女は、運転のスピードを緩めることはなくそのまま車体をガードレールへ衝突させる。

「ガ、ガガガ、、」とガードレールが衝突により音を立てたかと思った刹那。車体は放り出され、浮遊感が伴う。

そして気づいたときには、車体の周りは水であった。

とりあえず、車外にでようとシートベルトを外しドアを開けようとドアに手をかけたとき女は俺の腕を自分のもとに引き寄せ、首に手をかけるのだ。

『ここで、一緒に死にましょう。』

逃げ出そうとするが体が小さい俺は、大人の力にあらがえず呼吸が奪われていく。

酸素がどんどん足りなくなってきたらしい。意識が朦朧とする。

もう終わりだーー。

<これは俺の記憶なのか、他人の記憶なのか>

― - - - - - - 

「はあ、はあ。」

記憶から解き放たれ、現実に戻ってくると体は大きな倦怠感に包まれる。まるで、マラソンを走った後のような倦怠感のなか先ほど購入したばかりのチルドドリンクを掴む。今日は何だかこの発作が起こる気がしていたので買ってすぐストローを刺しておいてよかった。今の俺にはストローを刺す力すらなさそうだ。

一口そのドリンクを口に含むと「苦っ。」思わず想定外の味に声を上げる。

先ほどコンビニで購入したとき味をミスってしまったらしい。てっきり、チョコ味だとパッケージで考えたものが、ブラックコーヒーだったようだ。ついてない。

苦いコーヒーを飲みながら、ある女の子のことを思い出した。

ブラックコーヒーが好きな彼女を。

彼女との出会いは、突然だった。

write:eri

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