私はヤングケアラーとして生まれた。⑤

始まった祖母の認知症は祖父のそれとは違う症状だった。

それは妄想や幻覚幻聴
祖母は朝から晩まで物が見えなくなれば、誰かに盗られたんだと大騒ぎ。
さらに夜中になると突然祖母の悲鳴が聞こえてくる。
「空襲だっ!逃げないとっ」「死んだはずの○○がいるっ!」と
大きな声を出して家の中を四つん這いで這いずり回るのである。

祖父の介護に慣れ始め、
私はやっとゆっくり眠れると思っていた矢先の出来事だったので
毎晩起きる祖母の幻覚幻聴に苛立ちを感じていた。

幻覚幻聴の症状がで始めた当初は、
両親と私がその都度なだめていたが、
次第に両親はなだめることを辞めた。無視し始めた。
その代わり、私が1人で対応するようになった。

両親は確かに日中の仕事や祖父の介護もある。
子供ながらに両親の忙しさは感じていた。
だが、だからと言って苦しむ祖母を無視していいのだろうか?
そんな疑問が日に日に膨らみ両親への不信感になり、
ますます苛立ちを感じるようになった。

そんなことが続いた祖母も介護認定を受け
精神科に通い始めて薬を処方してもらうこととなった。
症状や生活環境は落ち着き始めた。

しかし幼い私の心に生まれた
両親に対する不信感は拭えるどころか以後も増すばかりだったのである。

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