ショートショート(41話目)自殺を考えている君へ
拝啓、自殺を考えている君へ。
先日、久しぶりに東京で会った時
君は「自殺をしたい」と言った。
少しばかり面を食らってしまい
あのときは何も言葉が出なかった。
だから、こうして手紙を使って
伝えられなかった気持ちを書こうと思う。
まず、君が自殺をするもしないも、自由だ。
よく、自殺を止めようとする人の中には
「他人に迷惑がかかるから自殺をするな」とか
「人間は生かされているんだ」とか
そんな理論を振り回す人が多い。
だけど、人間は生きてたって迷惑はかけるし
自分の生殺与奪権くらいはあっていいと思う。
それほど優しくない世界だから
死にたいと願う人はいて当然だと思うし
君もおそらく、そう感じたのだろう。
ただ、よく考えてみると
自殺は合理的ではないと私は思う。
自殺者の多くは楽になることを目的としている。
その目的が果たされるのならば
自殺にも意味があるといえるのだが
自殺でその目的が果たされる確率は
残念ながら極めて低いと言える。
こんな時に、確率の話をしても
君を元気づけられないことは知っている。
ただ、このことを知った上で
結論を出して欲しいと願っている。
仮に、君が自殺をしたとする。
「死」が、永久で完全なる無を提供してくれたら
君の願いはきっと叶うだろう。
これが考えうる最高の結末だ。
君の願いが叶い、君の苦しみが消えるならば
自殺という手段もありだと私は考えている。
だが、一方で輪廻転生する可能性もある。
仮に、君が自殺をして
来世も人間に転生したとしよう。
この場合、3通りの未来がある。
1.いまより良くなるか
2.変わらないか
3.いまより悪くなるか
このいずれかだ。
つまり、いまよりも良くなる確率は
わずか3分の1ほどしかない。
人間に転生したと仮定して、この確率だ。
家畜が人間より幸せかは私には分からないが
仮に家畜として転生したとしたら
君はそれに耐えることができるだろうか。
君が忌み嫌った人間の食べ物になる未来は
避けることができるなら避けたいと
私は思っている。
私は、「人間が生きる意味はあるのか?」と
長い時間をかけて考えてきた。
私にはどうしても
人間に生きる意味があるとは思えなかった。
人生に意味などない。
だから、自殺したい君の気持ちは理解できる。
ただ、少なくとも私は君に
生きていて欲しいと願っている。
ずっと黙っていたが
僕には友達と呼べる人が2人しかいない。
君は、そのうちの1人だ。
2人しかいない友達が1人減ったら
私は悲しい。
人間はそれほど長くない時間を生きて
やがて必ず死ぬ。
人生に意味はないが
時折楽しいこともある。
自殺は合理的ではないから
できるなら自殺以外の解決策を考えてほしい。
君は昔から聡明だったから
きっといい決断をしてくれると信じている。
また、そのうちに会おう。
もちろん、この世でな。
敬具
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