ショートショート(9話目)知らない公園のプラネタリウム

夏。

空は青い絵の具を散らしたようだった。

殺人的な暑さも、どこか気持ちがいい。

この1週間、雨をみていない。

まだかまだかと雨を待つ植物が、少しかわいそうだった。


今日は知らない公園にやってきた。

花を観るのが僕は好きだった。


好きな花はヒマワリ。

というより、他の花の名前をあまり知らない。

ヒマワリがあれば僕には充分だった。

暑さに負けず、花を咲かせるヒマワリ。

その美しさは一瞬だけど、観るものを魅了する。


物思いに耽り(ふけり)、気が付いた頃には日が落ちていた。

公園を1周して帰ろうとおもい、徘徊しているとプラネタリウムがあった。

僕はプラネタリウムを見ることにした。


~~~

プラネタリウムで星をみれるとおもったのに、最初に映し出されたのは僕の過去の映像だった。


(なんで、僕の過去の映像なんか流れているんだろう)


幼少の頃の僕。

暗い部屋にたった一人。

何年も引きこもっていた。

外界と遮断された空間で、僕は毎日妄想を繰り返していた。

このまま、一生を終えるのでないかと、そんなことすら思っていた。


外の世界は明るくて、美しかった。

もっと早くでてくればよかったなと、そう思った。

僕はいまとても幸せだ。

過去にとらわれてはいけない。

~~~

プラネタリウムは次の映像へと移った。

僕が引きこもりをやめてから現在までのものだった。


6日前、僕は引きこもりをやめて外にでた。

この時はまだ、身体が白かった。

いまじゃあ、すっかり肌も茶色くなったけど。


5日前、恋に落ちた。

最高の女性に出会えたことに感謝した。

その日、僕らは結ばれた。


2日前、仲間が猫に食べられた。

僕も今日、カラスに食べられそうになった。

人間にも注意が必要だ。


今日は地上にでてきて7日目。

どうやら、もうじき僕は死ぬらしい。



満天の星空がまぶしい。

僕がみていたのはプラネタリウムではなく、走馬灯だったようだ。


まだ死にたくない。

そんな想いを胸に、僕は精一杯に叫んだ。

「ミーン、ミーン」

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