ブラックな働き方も、ありえないクレームも全部思い出
この10年で9社の企業を経験した。
様々な業界や職種を経験できたことが会社員としての思い出だ。
1社目はトラックの運転手だった。零細企業だったから給与も安く、年間休日は90日に届かず、おまけに寝台の席がないトラックで泊まりの運行をさせるメチャクチャな企業だった。
運転席と助手席を使ってのアンバランスな格好での就寝をして、高速道路も使わせてもらえなかったけれど、いまにして思えばあの過酷な労働環境も懐かしい。
2社目は飲食店の広告営業だった。無形商売を扱う仕事で、広告の効果がなければクレームが来ることは必至で、中には掲載料金を払わないような企業もあった。
掲載料金の取立ても自分でやるため、探偵のように社長がいそうなところをくまなく探ったものだ。
広告の営業マンがパチンコ屋に飛び込み、借金取りをするなど誰か予想したことだろう。
残業することはデフォルトで、締め切り前は終バスの時刻ギリギリまでオフィスに居残ることもしばしばだった。
3社目は児童福祉施設の広告営業だった。やってみてわかったことは、児童福祉施設に必要なものは広告ではなく口コミだということ。
児童福祉施設は飲食店のように、インターネットで探して行ってみようなんて風にはならないので、提供しているサービスや口コミがよくないとどれだけ広告を出しても人は集まらない。
実際に人気の高い施設は広告なんて全く出さなくても入所制限ギリギリの受け入れをしている。
子供を預ける親の立場からしたら、まあそれは当然の考えだ。
4社目と5社目、6社目は人材業界にいた。中途採用や新卒採用と幅広くキャリアについてのアドバイスをした。
最初はなぜキャリアアドバイザーなんて仕事があるのか、私には不思議だった。求人サイトを見て、気になるところを応募したらいいじゃんと思っていたからだ。
しかし、転職を重く捉えている人が多く、失敗したらどうしようだの、どの業界が自分に合っているのだろうと迷う人はとても多く、迷える子羊のために人材紹介業なんてものがあるのだと知った。
それと、新卒採用に携わってみて感じたことは、多くの大学生は自分が行こうとしている業界のことを何も知らないということだった。
「安定した業界に行きたいから銀行で勤めたい」と言われたとき、近年メガバンクでどれだけのリストラが行われてきたかを懇々と説明したものだ。
インターネットが発達しても人の理性は進歩しないのだなとその時思った。
7社目は葬祭業界のIT系企業だった。ITリテラシー皆無に近いクライアントに対して、必死にインターネットの仕組みを教えるのに苦労した。
こんなにレガシィな産業がまだ日本に残っていたのだと感心したものだ。
メールで資料を送りますといえばFAXで欲しいといい、オンライン会議をお願いすれば直接来て欲しいという。
DX化が進まないのは、一定数以上の人間がITやテクノロジーを拒否しているからだと悟った。
大変な思いもたくさんしたけれど、いまとなってはなんだかいい思い出だ。
パワハラもモラハラも経験したし、ありえないクレームを受けることも多かったけど、その度に折れない心や精神力を手に入れて気がする。
これからも会社員生活を楽しんでいきたい。
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