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三題噺「童話」「犯罪」「マインドダイブ」

犯罪者たちの心理世界にダイブして自らのトラウマを自覚させ犯した罪の意識を蜂起させるのが目的。

①マッチ売りの少女×放火魔

 とある雪深い地域の街の半分を焼いた元修道女。
 劣悪な環境の孤児院で育ち、子どもの仕事だったマッチ売りの最中、一緒に育った女の子が凍死してからは修道院に預けられた。
 修道院に預けられた後(煙草の不始末として一応は解決済み)件の孤児院を火災で失っている。
 極度の寒がり。
 自身が犯した罪の意識はないが精神的に不安定である自覚はあるのでマッチの火で精神統一を図る癖がある。このマッチが放火の道具。

 「あの子」はいつも、火の中でのみ幸せそうに見えて。

 豪勢な食事、光と熱を絶やさぬ暖炉、飾り付けられた部屋、そしてーー「あの子」がおばあちゃんと呼んでいた、孤児院の隣に住んでいた優しい老婆。

 ……焚き火共々雪に埋もれて息を引き取った「あの子」への償いは、より大きな炎を以てでしか叶わない気がしたの。


②赤い靴×連続殺人

 己が作った靴を買った十代の少女だけを斧で斬殺した、元靴職人の男。

 赤い靴を履いた血まみれの脚が、軽やかなステップを踏んで己の周囲を踊り狂う幻覚に悩まされている。

 片田舎の村で靴職人だった父について見習いをしていた頃、幼い自身が初めて作った靴を、少女が気に入って購入した。
 後日。少女は踊り続ける脚を靴ごと切り落とすことになり、そして切り落とされた脚はそれでもなお踊りながらどこかへと去って行った。
 修道女となった少女の義足(片田舎では木製しかない)も作ったかつての見習いの少年は、幼い己の恋心が靴に悪魔を取り憑かせたのではと思うようになり、その思考はやがて、男を凶行に走らせた。

 ーー悪魔が取り憑く赤い靴を作った男こそが、血で靴を赤く染める悪魔になった。


③ヨリンデとヨリンゲル×監禁→心中未遂

 一度は誘拐された許嫁を取り戻した青年は、愛する者を二度と危険に晒さないために恋人を二人の新居に閉じ込めた。
 家の中でのみなら彼女も好きに過ごせる。
 己が不在の昼間彼女が寂しくないように、小夜啼鳥(ナイチンゲール)も飼って。
 ーーそれだけしてもなお青年の不安は、魔法のように解けることはなく、心中を図った。

 己が異常だと、青年自身もわかっていた。
 彼女もまた、青年がおかしくなってしまったことに気付いていた。だけど、二人はただ一緒にいられれば、それだけで幸せだから。

 ーー真珠のような露を抱いた赤い花は、最も無垢で残酷な愛(魔法)を解いてはくれない。
 

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