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「47酒店」デザインの力で、日本酒の価値が変わる。

「日本酒のデザイン」というと、なにを思い浮かべますか?僕は「ラベル」と安直に受け取りました。
酒質設計や、販売戦略まで広げることもあるかと思います。

現在開催中の「47酒店」。「日本の酒をいう存在そのものをデザインする」非常におもしろい空間でした。

「47酒店」
渋谷ヒカリエの「d47 MUSIUM」で開催されている「酒づくりからその土地の文化を学ぶ展覧会」です。
http://www.hikarie8.com/d47museum/2019/07/47-48.shtml

D&DEPARTMENT
https://www.d-department.com/ext/company.html
デザイナーのナガオカケンメイ氏による、日本全国の「その土地で愛されるデザイン」を発掘・発信する「ロングライフデザイン」活動の発信拠点「D&DEPARTMENT」(東京を中心に全国に店舗を拡大)。2012年から渋谷ヒカリエに常設ミュージアムを設置し、47都道府県の個性を発信してきました。

前置きが長くなりましたが、今回の47酒店はd47MUSIUM25回目となる「酒」をテーマにした展覧会です。もちろん購入も可能です!

「地域への活動テーマ」でお酒を選ぶ

会場はこんな感じです。47都道府県から各1酒蔵を展示。簡単な紹介文2〜3程度の商品が展示されています。さすがデザイナー集団。シンプルなのに、洗練されています。酒ってミュージアムになるんだ。

ここで、47酒店で買えるお酒について

①地域資源や技術に価値と誇りを生む
②環境に対して取り組む
③地域の酒文化を発信する
④農業と消費者をつなぐ
⑤地域の活性化
⑥酒造りにかかわる人たちの関係性作り

これら6つの活動を行なっている酒蔵を選定されているそうです。

つまり、「別に日本酒じゃなくていい」のです。

これが参加蔵一覧。日本酒だけでなく、日本ワイン、日本ウイスキー、焼酎まで並びます。まったく、違和感なく。

「日本酒」「ワイン」などの「酒の区別」は、ここを訪れる人たちにとってはまったく重要ではないことに、いまさらながら気づいきます。

「日本の酒」をデザインするとは?

各蔵のスペースには、こんな簡単な張り紙が1枚。

その下には小さな文字でもうちょっと詳しい説明がありますが、基本的に「どんな味のお酒なのか」の説明はありません。

それでも、お客さんは興味深そうに各酒蔵の説明を読み、次々と手に取っていきます。

「おいしそうだから」ではなく、
「共感できるから」「興味あるから」が、お酒との出会いになっています。

これって、すごいことだと思います。

(渋い!「フレー!」もありました)

D&DEPARTMENTのナガオカケンメイさんは紙媒体全盛期にエディトリアルデザイナーとしてキャリアをスタートするも(と…お聞きした気が…)、地域に眠るデザインの可能性に気づき、それを「発掘」「発信」する活動にシフトされたそうです。

それは決して、「デザインすることをやめる」のではなく「デザインという枠組みをデザインした」のだと思います。

最近は「地方創生」という言葉が広がり似たような活動を多く見るようになりましたが、「ロングライフデザイン」の視点を持ち続けているD&DEPARTMENTは、いまもその第一人者。お店を訪れるとやっぱりいいし、欲しいと思います。

そんなD&DEPARTMENTが「日本酒」をデザインすると…「日本酒の味」という枠を真っ先に外すのですね。

(イチローズモルトもありました)

日本酒の世界の人が日本酒の魅力を伝えようとすると、「純米」「純米吟醸」とかいう「スペック」、「辛口甘口」といった指針が常套句です。日本酒に詳しくない人にどうやったら伝わるかと頭をひねり、「フルーティー」や「フレッシュ」のような表現もでてきました。

しかしそれは「ただの言い換え」。本質的ではなかったのかもしれません。

また、活況の日本酒イベントを見てみると、そこに踊るキーワードは
・お米の特性を楽しもう(雄町の会!など)
・ペアリングを楽しもう
・いろいろな味を飲み比べよう
…などなど。もちろん僕はどのコピーにも惹かれるのですが、「興味の枠の外」にいる人にとっては「なにも言っていない」のと同じかもしれません。

(角打ちもありました!)

「へーここの蔵おもしろそう…なんて読むんだろう?」
という人が、日本酒とビールをスッと買っていくようすを見て、
「価値をデザインする」パワーを感じました。

心惹かれた「日本の酒」を購入!

これが本日購入したものです。

①カップ酒(大嶺酒造)

1822〜1955年まで酒造りをした大嶺酒造が2010年に醸造を再開。カフェ併設のおしゃれすぎる酒蔵が話題になっています。デザイン性の高いカップ酒をいただきましたが、うん、ふつーにおいしい。軽やかで甘みもほどほど。モダンな味わいです

②SAKURA ROCK(田島酒造)

地元のコシヒカリを「ワイン酵母」で醸したお酒。日本酒の可能性を広げようという意図が感じられるお酒です。

飲み方はなんと「ロック」で、しかもちょっと氷を溶かして。甘酸っぱくとろりとした味が、氷の冷たさで締まります。初めて飲む味。

③こうじチョコ(仁井田本家)

「自然派酒造り」で有名な仁井田本家がつくる「チョコレート」。
とはいえ、原料はお米だけ。麹の甘酒を凝縮したものです。

これが、ひとくちめは本当にチョコ。だけど口のなかで蜜のような甘みがどんどん出てきて不思議です。ただ、おいしい。
これをせっかくなので仁井田本家「金寶」の熱燗で。チョコレートを口に含み、熱燗でおいかけ、口内で少し溶かすといい具合です。
※ただ、お酒がやさしいので普通のおつまみでもよかったかもと。

お酒の価値を変える。もちろん、「おいしい」「品質がいい」が基本になければ、はじまりません。しかし、その「おいしい」「品質」という枠も、もう機能不全を起こしているのかもしれないと思いました。

ちなみにですが、d47のみなさんは地方のものを発掘して雑誌(自社)で紹介するとき、「まずは自費で試してみて、ほんとうに良ければ依頼する」というルールがあるといいます。まだ見ぬ魅力に触れ、感動して、その価値を再発信する。なんですてきなんだ。

今回は展覧会という形でしたが、ぜひ常設してほしいです(季節によって欠品だらけでも全然いい!)。

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クリーミー大久保(日本酒)
もちろん、お酒を飲みます。