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滋賀の日本酒【不老泉】の16種類初呑み切りセットを一気に味わう(全種類コメント付)
滋賀県・上原酒造の「不老泉」。ここ数年愛飲している日本酒です。
杏を連想させる独特の香り・甘み、驚くほどの強いボディと飲み口、強い余韻、燗酒にしたときの爆発的な広がり。「飲みやすい」とは対局にあるためなかなか人には勧められませんが、他のどの銘柄とも似ない圧倒的存在感があります。
今回、そんな上原酒造さんの「初呑み切り」16本セットを一気に味わいました。
不老泉の初呑み切り
日本酒の出荷前に、できた味わいや熟成具合を確認するテイスティング会「初呑み切り」。上原酒造では毎年夏に関係者だけでなく一般消費者も招いて意見を集めていました。しかし2020年は中止(…行きたかった)。代わりにMakuakeにて「家庭でできる初呑み切りセット」として販売されました。
オール山廃、タンク貯蔵&瓶詰貯蔵の16種類!
(段ボールで届きます。ずっしり重い)
今回のセットは、1合(180ml)の小瓶が16本。
中身はすべて山廃仕込みの熟成。タンク貯蔵のものが6本、瓶詰貯蔵が10本です。なに言ってるか分からなければ「貯蔵方法もいろいろある」と思ってください。
お猪口付きです。これでこのまま唎酒ができます。
味のコメントを記入できる用紙もセット。こういうの楽しいです。
アンケートが同封されており、おいしかったものの感想を返送する仕組み。
つまみもスタンバイ。せっかくなので同じ滋賀の鮒寿司にしました。部屋中が日本酒の香りと発酵の酸っぱさでいっぱいに。
それでは、不老泉の初呑み切りスタート!全16種類コメントを書いていますが、ただの感想とお考えください。(利き酒はできません)
呑み切り開始!重い!強い!旨い!
1から順番に攻めていきます。正月で何も予定がなくてよかった。
No.01 山廃仕込 特別純米 原酒 参年熟成(タンク貯蔵)
原料米:たかね錦(滋賀) 精米歩合:60%
いきなり好きなやつです。市販では赤いラベルのものですね。
かすかに色がついていて、香りはけっこうはっきりと「カラメル」のよう。甘み、ボリュームともにしっかりどっしりで、だけど舌にすっと滲み入るなめらかさがあります。これぞ僕の思う不老泉のおいしさです。
ちなみにおちょこだけではなく平杯でも飲んでみると、舌全体にすぐいきわたるので、側面でやや苦味を感じます。おいしい。
No.02 山廃仕込 純米酒 旨燗(うまかん)(タンク貯蔵)
原料米:加工米(滋賀) 精米歩合:65%
熱燗専用のようです。これは初めて。有名なお米ではなく「加工米」という点が熱いです。
香りは控えめで、やや「枯れた」感じ。よくもわるくも日本酒らしいです。
飲んでみると…おお、結構ドライというか、口のなかがザリザリ持っていかれます。その後に甘みがぐーっと持ち上がる。凶暴です。どのポイントがいいというより、舌全体にピシャって伸びて総合でおいしい。おいしい。
No.03 山廃仕込 純米吟醸 原酒 紫ラベル(タンク貯蔵)
原料米:山田錦(滋賀) 精米歩合:55%
紫ラベルもよくお店で見るものです。ぶっといイメージのある不老泉ですが、山田錦&純米吟醸と、繊細な吟醸造りみたいなスペックもあるのですね。
香りはかなり抑えめ。よーく嗅ぐと鼻の奥で若い草っぽい香りが。
飲むと、うん、おいしい。不老泉の形ですが、もっと線が細くてきれい。甘みはしっかりあるものの、飲みやすさをキープしています。「バランス」という感じです。
平杯ですとこれも一気に味が広がってしまうので、もうちょっと味のやってくる段階を遅らせたい。ぐい飲みとかある程度深さのある酒器でじっくりいきたいです。おいしい。
こんな感じで、ラベルには細かいスペックも書かれています。飲んだものからくるっと前後を返していきます。
No.04 山廃仕込 辛々(からから)(タンク貯蔵)
原料米:吟吹雪(滋賀) 精米歩合:60%
「辛口」を謳ったものですね。ラベルをみると醸造アルコール添加の本醸造酒だからのよう。本醸造が入ってくるのは飲み比べならでは。
香りは02の「旨燗」に近いかも。舌に触れると、ピリッと鋭い刺激。そこからじわじわと甘さがやってきます。それもきれいな甘みではなく、ぷっくり太い感じ。舌の上にどっしりしたボールがのってぐいぐい押してくるよう。おいしい。
ここでおもむろに「鮒寿司」を一口。すごいです、発酵したお米の酸とぴったり。クセが強いもの同士なのに、そのクセの凹凸がぴたっと合う!同じ土地のもの(どっちも滋賀)って合いやすいのですね。
No.05 山廃仕込 純米吟醸 からくち(タンク貯蔵)
原料米:山田錦(滋賀) 精米歩合:59%
次も辛口。04との違いは…お米の種類と、精米歩合。それもなぜか1%だけ変えています。そしてアルコール度数も17と、No04の18%と比べて少し低いみたいです。
香りは不老泉特有の枯れたさみしいやつを存分に楽しめます。味はアタックが本当になめらかです。舌とお酒の間に壁がなくて、すーっとしみる。しかし飲み込むまでの最後でクッとひっかかるかんじ。じわじわとえぐみや苦味が残りますが、これがなぜか好みなのです。珍味といきたいです。おいしい。
No.06 山廃仕込 純米吟醸 木桶仕込(タンク貯蔵)
原料米:玉栄(滋賀) 精米歩合:55%
精米55!結構磨いています。注目は「木桶仕込み」。こういうの好きです。
香りはおとなしめですが、ふわっとドライフルーツ。味は…おお、きれい、というか滑らか。すーっと広がります。不老泉は不老泉なのに、不老泉らしからぬなめらかさ。これが「木」のニュアンスなのか(多分)。おいしい。
やっと6本。ここから「瓶詰め貯蔵」ゾーンに突入します。
No.07 山廃仕込 特別純米 たかね錦 生原酒(瓶詰貯蔵)
原料米:たかね錦(滋賀) 精米歩合:60%
ついに生原酒(=よりパワフルで味のってそう!)にきました。
香りは…あれ? 意気込んでいたものよりもふんわりと優しい感じ。味は甘みと苦味が結構はっきりでています。甘み主体。平杯でも印象は変わらず、ともすればベタっとするかもしれません。これは温めてみたい。おいしい。
No.08 山廃仕込 純米吟醸 中汲み 生原酒(瓶詰貯蔵)
原料米:山田錦(滋賀) 精米歩合:55%
「中汲」とは、お酒を絞るときのタンクのちょうど真ん中あたりのこと。一般的に「バランスがいい」「同じスペックでも高級」になることが多いです。
香りはソフトで、トゲがないです。甘さが主体ですが、後味は少し苦い。No.07の生原酒をもっと洗練させた感じ。都会派な不老泉です。甘苦の両方が好きならたまらないかもしれません。おいしい。
No.09 山廃仕込 純米吟醸 うすにごり生原酒(瓶詰貯蔵)
原料米:山田錦(滋賀) 精米歩合:59%
おおっ!うすにごり!(オリが残っているもの)。熟成の印象が強い不老泉ですが、新酒の時期に見られることの多いにごりパターンもあるのですね。(しかもにごりを熟成している!)
(結構にごっています)
なんというか…わかわかしい香り。新酒みたい。飲むとすっきりソフト。オリ由来なのかするすると入っていきます。一方、「不老泉らしさ」という点では個性は少し控えめに。そういえばうすにごりって、共通のニュアンスがあってどのメーカーも少し似る印象です。これもこれでおいしい。
No.10 山廃仕込 特別純米 備前御町 生原酒(瓶詰貯蔵)
原料米:御町(岡山) 精米歩合:55%
「御町」はお米の名前。御町好きな人もいる(オマチスト!)ほど人気のお米です。県外産の有名なお米でもつくっているのですね。そして精米も55。
香りは…あれ「森」? 青いというかすっきりしています。味わいはきれい、まろやか。まるで「不老泉ではないみたい」です。当然他の銘柄と比べたら「不老泉!」という個性はあると思うのですが、これだけ不老泉を連続して飲むと「他と違うポイント」に注意がいくもの。これもおいしい。
No.11 山廃仕込 特別純米 備前御町 火入酒(瓶詰貯蔵)
原料米:御町(岡山) 精米歩合:55%
スペックはNo.10と全く同じ。違いは「生原酒」と「火入れ」だけ。いい、こういう飲み比べは、まさにセットの醍醐味。(火入れは加熱処理で、味が変化しづらくなります)
香りはあまりなく、味は杏のような重厚的な甘さ(というべき独特の甘み)、でもとても上品。これは、とにかく飲みやすいです。No.10のジャンプ感をぐっと抑えた感じ。おいしい。
No.12 山廃仕込 特別純米 滋賀渡船 生原酒(瓶詰貯蔵)
原料米:渡船6号(滋賀) 精米歩合:55%
滋賀県が開発した酒造好適米・渡船6号。地元のお米を使っているっていうのがただただ惹かれます。
香りはほんのり甘く、味は…あーもっとわかりやすい甘み。ドライフルーツ、または黒糖みたいな、特徴的な甘さが全開です。洗練しすぎないゆえのぼってりした味わいを存分に楽しめます。おいしい。
No.13 山廃仕込 特別純米 亀の尾 生原酒(瓶詰貯蔵)
原料米:亀の尾(青森) 精米歩合:55%
No.14 山廃仕込 特別純米 亀の尾 火入酒(瓶詰貯蔵)
原料米:亀の尾(青森) 精米歩合:55%
またきたな、同じお米で生・火入れ比較シリーズ。並べて飲んでみます。ちなみに「亀の尾」は近年復活してきた幻の酒米。本当にいろいろなお米で試されているのですね。
No.13の生原酒は、香りは甘いが味は少し控えめ。飲みごたえがあり、適度にドライ。わかりやすい甘さから一歩大人になった感じです。おいしいフルーツがぎりぎりドライフルーツになる、枯れと熟成の転換点みたいな感じです。おいしい。
No.14の火入れ。香りはNo.13とかなり近いです。強いていえば、No.13の生原酒の方が「むわっと」した、密度が濃い印象。そして味の違いは…わからないです。生酒の方が味の要素が多い気もするけど、多分気がするだけです。
ちなみに、なぜか不明ですがつまみ(鶏ハム)と一緒にのむと、火入れの方がしっくりきました。おいしい。
No.15 山廃仕込 特別純米 総の舞 生原酒(瓶詰貯蔵)
原料米:総の舞(千葉) 精米歩合:55%
へー、千葉だけで作られているお米だそう!いったいなぜ?
香りに刺激はなく、ゆるやかに漂ってきます。おしとやかな印象。
甘さがいいです。バランスがあると思いきや、苦やえぐみも同時にきて、口のなかで暴れます。「野性味」のある感じです。ジビエとかと合わせたいです。おいしい。
ついに、ラスト!
No.16 山廃仕込 純米酒 酒母四段 生原酒(瓶詰貯蔵)
原料米:玉栄(滋賀) 精米歩合:65%
ラストは…酒母四段? なんだそれは。
調べてみると、お酒をより甘みを強くするための手法「四段仕込み」(通常3段。最後にもう一度お米や餅米などを加えて甘く仕上げる)で、そこにお酒のもととなる「酒母」を使っているのだそう。…?? とにかく「なんか変な造り!」と思ってください。
色はかすかに黄色。香りはしっかり甘いです。のむと…おーーーー、おもしろい。「熟さ」が前にでます。熟成のそれではなく、もっと生々しい、熟しすぎて放置されたフルーツがぷんぷん発するようなそれ。味は結構甘いです。そして異様な「艶っぽさ」があります。なんだこれは、おいしいです!
初呑み切りで、好きなお酒のイメージがかわりました
(その後、熱燗でもチャレンジしました)
もともと不老泉が好きで、「この味が不老泉の魅力」というポイントがあったのですが、イメージが結構かわりました。当たり前ですのことですが毎年毎年お酒造りを行うので、いろいろなお米を選び、磨きや保存豊富などを組み合わせてどんどんチャレンジされているのですね。
その上で、不老泉ならではの特徴ーー枯れと艶を行き来するような特徴的な甘みのニュアンス「不老泉甘」(と勝手に言います)はしっかり。それを土台に幅広い表現が楽しめる。
不老泉、やっぱり好きなお酒です。
次の「呑み切り」は、ぜひ現地に訪れて味わいたいです。
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