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薬を作ったのは私のエゴだったのかもしれない~ゲーム【Hotel Sowls】レビュー※ネタバレ注意
昨晩は数か月前に買って起動したはいいものの5分ほどで注意散漫が発揮されてしまい進行させずに放置してしまっていたゲーム「Hotel Sowls」で遊びました。
このゲームを買った理由
Switchにてセール価格で販売されていたことがきっかけで購入しました。主に黒、紫、白で表現されたかわいいながらもその色遣いでほのかな不気味さを演出するビジュアルに魅かれたように覚えています。また、おそらく主人公であろうふにゃふにゃした生物と、その表情がまさに「無」であることが気に入りました。
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ストアページには当てはまるジャンルに「ホラー」とありますが、少し不気味、、、かもしれない程度の表現があるのみで、ホラーが苦手な方も楽しめると思います。
ただ、上で触れたようにSwitchのセールをきっかけにSwitc版を購入したところ、操作性があまりよくなく、特にカーソルの動きがゆっくりだったため「これPC版を買ってマウスでクリックしたほうがいいじゃん!」と思い、結局Steamで同じゲームを購入して遊びました。マウス・キーボード操作の方がストレスなく遊べるゲームが特にインディーズの中では多くある印象ですので、どっちの操作性がいいのか比べる機会が欲しいなと思います(なおこの問題は両方を購入すれば解決します)。
主なストーリーの流れとゆかいなホテル従業員たち
主人公のふにゃふにゃした紳士が全財産をつぎ込んで購入した「不思議な石」をもってホテルソウルズに滞在したところ、眠ってる間に何者かに石を盗まれてしまう、その石を無事取り戻し、チェックアウトするのが目的です。ストーリーは主に5階建て(地下、屋上あり)のホテル内で様々な従業員と会話をすることで進みます。そんなに難しくない。
楽しいのは探索パート。ホテルのあちこちに残された日記の断片を集めていくことで、このホテルがいったいどんな場所なのか、どうしてここにホテルがあるのか、といった謎が少しずつ明らかにされます。
このホテルの従業員がみんなそれぞれに癖があってとても楽しい。玄関ホールにある大きな絨毯の汚れを気にし続けるメイドさんとか、ちょっと不愛想なウェイトレス、自分の焼いたパンを食べてくれることにとても喜んでくれるパン職人、人生に嫌気がさしている屋上の警備員。そしてこれはホテルスタッフではありませんでしたが、ピクルスになりたくてプールに浮き続けるキュウリ(たぶんそのままじゃピクルスにはなれない……)やジュースになりたいトマトなど、ストーリー進行には全く関係ない野菜やオブジェクトとの会話が楽しかったです。
私が一番好きなホテルスタッフは地下一階のバーテンダー。やたらとレモネードのことを話してきたり、めちゃくちゃ雑なタロット占いをしてくれたり。この人との会話が一番楽しかったかもしれない。高速でシェイカーを振る姿もとてもかわいい。でもお酒を限界以上に飲ませるのは勘弁してください。下手したら死んじゃうから!
ホテルでの滞在日数が経過してくごとに「それ」と呼ばれる存在の謎がどんどん深まっていきます。明かされるのではなく、深まる。正直3日目くらいでは情報がどんどん集まるけれど「それ」が生き物なのかどうかすらよくわからない。それから次第にこのホテルで起こったこととともに、主人公は一体どうすればよいのか、選択肢が示されることになります。
このホテルにいる従業員たちはある期間を過ぎると「それ」についての言及がテキストでポップアップするのみで、会話もできなくなります。そんななか、自分の好きなものを持っているメイド(大広間の大きい絨毯の清潔維持にこだわりを持っている)とバーテンダーさん(レモンとレモネードの話しかしない)の二人だけは相変わらず絨毯とレモネードの話をしていたのでよかったです。ほどよい執着が人間をまともなままでいさせてくれるのかもしれません。
ストーリーの感想(ここからは特にネタバレ注意)
実はこのホテルはずっと昔、治療法もなくただただ苦しんで死を待つ者が集められた(捨てられた)病院であったとのことでした。そこへある日突然「それ」が現れ、「それ」が発する光を浴びたその瞬間、絶望に打ちひしがれていた者たちの病気が一気に快癒し、さらに皆「永遠のいのち」を手に入れた。その代償に「それ」は人間のタマシイを欲し、その要求にこたえるため、病院をホテルとして改装し、宿泊客らからタマシイを少しずつ分けてもらっていた、という背景が説明されました。
「身近な人たちに捨てられ、正を待つだけの絶望」を私は経験したことがないので、「どうせこの苦しみはわかるまい」と言われたとき、わからないよ、想像することしかできないし、それは理解したことにならないと思いました。そして「それ」について「私たちをそんな絶望から救ってくれた唯一の救済者」としてあがめるホテルスタッフたち。しかし実は「永遠のいのち」は建物内でのみ維持されるものであって、元患者たちは結局ホテル(元病院)にとらわれることになります。それが、悲しかった。「希望がない」という点で、病気にかかり苦痛とともに死を待つだけだった状況と全く同じであるように思われたためです。病気だってかかりたくてかかったわけじゃないけど、永遠のいのちだってほしくて手に入れたものじゃなく、勝手に「享受させられ」、そしてその恩を返さねばとただホテルで100年以上の年月を過ごすしかなくなってしまったのだから、結局違う種類の病気にかかってしまったようなものじゃないですか。しかも「永遠のいのち」病は救いとして認識されているからたちがわるい。
しかしなんとそんな「人間ではなくなってしまった」彼らを人間に戻す薬を主人公は作れるとのこと。全財産をかけて手に入れた石を砕いて利用すればその薬は完成します。私はその薬を作り、従業員たちに飲ませました。それが正しいと思ったから。そして無事ホテルの人々は普通の人間に戻り、ホテルの外へ自由に出ることができるようになりました。
私はこの結果に満足していましたが、のちに元ホテルの従業員から手紙が届きます。
・大切だったのだろう石を砕いてまで薬を作ってくれてありがとう
・何人かは、自由を求めてホテルを出ました
・ただ、突然の変化についていくことができず、これまで通りホテルにい続ける選択をしたものもいました
との内容。これを読んだ時、私がしたことは結局彼らにまた「臨んだわけでもない救いの押し付け」をしたのだと気づかされました。たとえホテルの中限定だとしても永遠のいのちを保ち続ける方がよかったと思う人がいるのは当然のことです。また、150年も外の世界と隔絶されていた彼らが突然自由になっても、その変化がもたらすのは喜びだけでなく、強い不安や狼狽もまた、彼らの心を揺さぶることになります。
人間に戻す薬を作って飲ませたことは正しかったのか、今でも私にはわかりません。それでも「何人かは自由を求めてホテルを出て行った。今はどこでどうしているのか、わからない」という一文にかすかな希望を感じます。
まとめ
どうもまだ真のエンディングは解放できていない様子。ホテルの従業員たちを人間に戻した後、タイトル画面に戻る前に一瞬、左隅に小さく「わたしのところへおいで」と表示されたことも気になっています。
結局「それ」が地球の外からやってきた存在らしいこと以外、まだ何もわかっていませんので、気が向いたときに、全部のエンディングを回収しようかなと思います。
BGMがとても素晴らしいゲームでした。Steamなら、なんとサントラも数百円で買えます!
そもそもゲーム本体は520円、サントラは410円、二つ合わせて購入するとなんと割引が入って837円! なんという破格。買うしかないね!
こんなところかな。じゃあまたね!