「くるっと回って着地する」231107摂取コンテンツ日記
佐藤究『テスカトリポカ』KADOKAWA
とても面白い本だった。タイトルになっている「テスカトリポカ」という神様は本書の中で何度も登場するけれど、それを語っているのはいつだって人間で、一貫して人間の話だったように思う。その名前を簡単に口にしてはいけない、その姿を安易に描いてはいけない、目に見えず・触れられない、そんな神様に対する信仰が存続するのは神様が本当に「いる」からではなく、そう信じる人間がおり、その人間が連綿と信仰を繋ぎ続ける努力をするからである。そんな信仰が牙を見つけ、研ぎ澄まし、力を増して、蹂躙し、それから、負ける話だった。
なにがなにに負けたんだろう。バルミロがコシモに、飼い主が飼い犬に、大人が子供に、父が息子に、いろんな言い方があるけれど個人的には思考をやめ盲信した者が思考し続けた者に負けたという言い方がしっくりくる。バルミロはアステカの神様たちの話を「そういうもの」として教えられたからそもそもそれを疑ったり存在について考えたりする土台が失われていた。教育、育ちという言葉で片付けられてしまうかもしれないけれど、それではあまりに情緒がない。
最終盤、コシモの「どうしてお父さんたちは気づかないんだろう」という疑問がとてつもなく孤独で寂しい問いかけに感じられた。どうしてだろうね。たぶん、面と向かって伝えても彼らは気付かないよね。どうしようもないね。
久しぶりにとてもいい読書だった。同作者の他の小説も読んでみる。
にゃんにゃんファクトリー『ヤニねこ 2巻』講談社
『テスカトリポカ』との雰囲気の落差が凄すぎて午前中にこれを読んでからテスカトリポカを手に取るまでかなり時間が必要だった。
相変わらずめちゃくちゃ汚い。私はアルねこが一番好き。酒ずっと飲んでるから。最近更新されたTwitterの方では大学の健康診断で「このままじゃ卒業する前に死ぬから酒をやめなさい」って言われてた。かわいいね。2巻の中ではみんなと居酒屋で飲んでいる最中トイレを探して店を出てしまいそのまま江ノ島まで行って翌朝海を見ているところを回収されていた。ねこたちが仲良さそうというかそれなりに明るいコミュニティを形成しているところと、それに人間の大家さんが巻き込まれているのが好き。あの大家さんはなにを考えてあんなにも獣人を住まわせているのだろう。どんな問題を起こされても追い出さないところが優しいね。かわいそうに。
ゲーム「Inscription」
改めて遊び直している。BGMの低いがよい。フィルム回収を忘れて最初からやり直しになっている。クソ〜2周目だから見落としないだろって油断してた。MOONのカードをクサリヘビマークで一発KOするのが好き。体力が多いことの虚しさを教えてくれる。
その他日記
『テスカトリポカ』が綺麗に着地を迎えてくれて久々にいい気分になっている。物理本の装丁を見て電子版を買ったことに後悔していたけれどKindleが軽いおかげで長時間の読書に耐えられたのだと思うとまあ、まあね。紙はずっと残るとかいうけど燃やしたら灰だからね。Kindleも燃やせば燃えるけどね。
最新作の『幽玄F』は三島由紀夫についての知識があった方がいいらしいのでステイ。読書家の祖母が「三島由紀夫は微妙」と言っているのを何度も聞いて育ち、私も「なんかその、趣味じゃないな」と嫌厭しているのでステイのままになる気もする。
ほいじゃまた。
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