【3分間のショートストーリー】じいちゃんを忘れないこと
僕はじいちゃんにとってきっと特別だった。
そのじいちゃんはもうこの世にはいない。
僕ができるじいちゃん孝行は、忘れないこと。
もうこれしかできなくなってしまった。
僕が生まれてすぐに僕のオカンは難病にかかった。今では元気なオカンもその時は入院。
僕は生まれてから1年くらいオヤジの方のじいちゃんとばあちゃんに育てたられた。
だから何人かいる孫の中で僕は特別だった。
実家とじいちゃんの家は近っかったからよく遊びに行った。毎月行ってたかな。
高校卒業まで僕だけお小遣いをもらっていたなぁ。高校生の時に1日5食食べれたのはじいちゃんのおかげ。
僕は友達をじいちゃんの家に連れて行ったこともあるし、大学生の時は1人でも遊びに行った。旅行に行けばお土産も買う。そんな家族の次に近い存在。
唯一の後悔は、僕の結婚式に参加させてげられなかったこと。この後悔だけはずっと僕に残っている。
じいちゃんの葬式の日、僕は仕事で残業を指示された。事前に有給を取りたいと言っても受け入れなかった。
僕は上司にキレた。
指示を無視して帰ったくらいだ。
職場から高速で向かったことを今でも覚えている。
じいちゃんは優しかった。
怒ったことを見たことない。
オヤジも怒ったことはほとんどないけど、
じいちゃんに似たんだろう。
じいちゃんとオヤジは似ている。
オヤジと僕は似ている。
だからじいちゃんと僕も似ているだろう。
そんなじいちゃんが僕の高校入学祝いに、
僕を連れて腕時計を買ってくれた。
当時五万円くらいした腕時計。
当時の僕はつけるのにビビったくらい。
僕は今もその時計を時々つけている。
もう傷だらけだし、
研修とか、プレゼンの時とか勝負の日につけることにしている。
何故そんなふうに決めたかは覚えていない。
その腕時計はもう時計屋さんで電池が替えることができない。
4、5回はメーカーに送った。電池交換の何倍も高くつくけど今でもそうしている。
何でそこまでしてつけるのか。
僕は腕時計が好きで何本ももっているのに。
それはじいちゃんを忘れたくないから。
ただそれだけ。
じいちゃんに頑張ってる姿が見せられないから頑張る日はじいちゃんにもらった時計をするって決めたんだった。
じいちゃん見ているかい?
僕は何とかやってます。
一応元気でやってます。
ひ孫を抱かせてやりたかったな。
僕にできることは忘れないことだけ。
きっとそれで十分。
僕の中のじいちゃんはいつまでも笑顔だ。
いつかきっと会える。
じいちゃん、僕ももう36になりました。
もらった腕時計まだしてるよ。
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