イヤフォンの向こうから
今日は、ソニーからウォークマンが発売された日なのだそうだ。
1979年の7月1日にウォークマンの一号機の「TPS-L2」がデビューした。
気になる販売価格は33,000円とかなり高価であり発売当初はそれほど話題にならなかったそうだ。
しかし地道な宣伝活動の成果もあり徐々に売り上げを伸ばしていき後の大ヒットにつながった。
コマーシャルにも有名なものがあり、お猿さんが湖に佇んでじっと目を閉じて音楽に聞き入るCMは覚えている方も多いのではないだろうか。
私が初めてウォークマンを購入したのは中学生の頃だった。
お年玉とお小遣いを貯めてそれでも足りなかったので祖父にちょっとだけ援助してもらってようやくゲットした。
まだその頃はCDとカセットテープが競合しており音楽店でもどちらも取り扱っていた。
その当時の中高生はみんなお気に入りの歌手の歌をカセットテープに落として自分だけのオリジナルテープを作っていた。
中学生の頃はまだ中古CDを買うお金もレンタルショップも無くて友達同士でCDの貸し借りをして様々なジャンルの音楽を知るきっかけにもなった。
当時はちょうどバンドブームで様々なアーティストがヒット曲を連発していた。
その頃まではテレビの音楽番組などで歌謡曲を聞くことが多かったので、いきなりロックやパンクなどの刺激的な曲を聴いたのは衝撃だった。
洋楽を聴くようになったのもその頃で、ビートルズはもちろんローリングストーンズ、QUEENなどの超有名バンドからアングラなパンクバンドやプログレバンドなど様々なジャンルのロックに夢中になった。
そして高校生の頃にガンズアンドローゼズに出会ってからはしばらくはウォークマンのテープを入れ替える事も無く毎日毎日聴いていた。
ボンジョヴィやエアロスミスももちろん好きだった。
友達から邦楽のCDを貸してもらったりもしたのでBOØWYやTHE BLUE HEARTSにもかなり影響を受けた。
自分でももちろんあらゆるジャンルのカセットテープを作った。
高校生になるとアルバイトが出来るようになったので中古のCDを買う余裕が出てきた。
いっぱしの音楽小僧を気取ってどこに出かけるにもウォークマンは手放せない存在になっていた。
お気に入りの音楽を聴きながら歩いていると気分が自然と高揚してくる。
その頃一番羨ましかったのはお付き合いしているカップルがウォークマンのイヤフォンを片方ずつ耳につけて頬を寄せ合っている姿である。
ウフフキャッキャと仲が良さそうに音楽を聴いている姿は嫉妬の対象でしかなかった。
そんな姿を見せつけられながら聴く筋肉少女帯は何とも心に刺さったものだ。
ウォークマンはCDウォークマンを経てMDに進化したがそれほど普及しなかった。
そのうちにipodがあっというまに勢力図を塗り替えて、今では様々な音楽配信サービスをスマートフォンで聴く時代になった。
私も五年くらい前まではしぶとくウォークマンを使っていたのだが故障してしまいそれ以来スマートフォン派になった。
今は車で移動中にはBluetoothでスピーカーに繋いで音楽を流している。
中学時代から音楽にハマって今でも様々なジャンルの曲を聴いている。
発売から今年でちょうど四十五年、音楽を気軽にどこででも楽しめるようになったのは間違いなくウォークマンのおかげだ。
最近ではカセットテープが若者の間でひそかな人気を集めているという話を聞いたこともある。
実家の押し入れに眠っているであろう五十本を超えるカセットテープをもう一度引っ張り出してきて聴いてみたいなと思ったりする。
青春のタイムボックスとしてこれほど貴重なものは無いと思う。
願わくばテープにカビが生えていませんように。
無事に回収出来たら今度はラジカセを買おうかな。
イントロが流れたら一瞬であの頃に戻れるから。
音楽はいつでも自分を救ってくれた。
どんなに時代が変わっても心に刻み込まれた名曲たちが心の支えになってくれる。
ありがとうウォークマン、私に音楽のすばらしさを教えてくれて。
わが青春の相棒に乾杯。