蕎麦においでよ。
今日はお昼ご飯を食べにお出かけしてきた。
目的地は車で三十分のお蕎麦屋さん。
運転中のBGMは妻のお気に入りのアイドルの新曲。
リピートして何度もかけるものだからサビの部分はすぐに覚えてしまった。
二人で熱唱しているとお店に着いたので車を停めようとしたら満車だった。
時計を見ると十二時を少し回ったところ。
このお店はお昼時は大抵混雑している。
開店は十一時からなので出遅れたと思ったが仕方がない。
お店の入り口の手前で駐車場が空くのをじっと待った。
しばらくすると一台分空いたのですかさずそこに車を滑り込ませた。
お店に入ると女将さんがまぁいらっしゃい、久しぶりねと出迎えてくれた。
最後に訪れたのは確実に一年以上前なのでかなりのご無沙汰である。
いやいや、不義理をしちゃってと言うと、ううん来てくれたら嬉しいよと喜んでくれた。
一番通っていた頃は月に二度は訪れていた。
お店が混んでいるのでお喋りもそこそこに空いている席に座った。
さっそくメニューを開くと不動の一番人気の自然薯蕎麦が一ページ目を飾っていた。
温かいのと冷たいのが選べるようになっておりどちらかと言えば冷たい方が人気がある。
二ページ目は天ぷら蕎麦とカツ丼が載っている。
その次に隠れた名物のだし巻き卵が輝いていた。
後は飲み物のページでおしまい。
お蕎麦中心の潔いメニュー構成でいつ見ても気持ちがいい。
私は悩まずに冷たい自然薯蕎麦の大盛を頼んだ。
妻は冷たい天ぷら蕎麦。
それからだし巻き卵も忘れずに注文。
女将さんがはい、かしこまりました少し時間がかかるけど待っていてねと言って厨房に引っ込んでいった。
このお店は大将が一人で厨房を切りまわしておりお昼時になると戦場のような忙しさである。
当然料理の提供スピードはそんなに速くはないがイライラしても仕方がない。
本を読んだり手入れの行き届いた庭を見ているとそのうちにだし巻き卵が届いた。
焦げ目の無い綺麗な黄色でワサビと大根おろしが添えてある。
温かいうちに早速箸を伸ばす。
ふわりとした食感で出汁をたっぷり含んでおりジュワッと美味しい味が口に広がる。
薬味のワサビを乗せて食べると軽くツンとした刺激が加わって味わいが複雑になる。
大根おろしも一緒に食べるとリッチな味わいで食べていて笑顔になる。
何でもだし巻き卵には一度に五個卵を使うそうで今となっては贅沢品である。
それでいてお値段は据え置きだったので偉いなと思った。
それから少し待っていると天ぷら蕎麦が届いた。
天ぷらは揚げたてサクサクで見るからに美味そうである。
アツアツを食べなきゃと言いながら妻がエビ天から攻める。
かじった時にサクッと音がして食欲をそそる。
んー、美味しいと妻がウットリしている。
その姿に見とれていると私の頼んだ自然薯蕎麦が到着。
大盛りの蕎麦と摺り下ろした自然薯、十穀米のご飯とデザートのコーヒーゼリーと大ボリュームである。
何はともあれまずはお蕎麦から食べる。
何もつけないで麺の味を堪能する。
それから塩を振って味見をする。
この儀式を終えた後は麺つゆに蕎麦の先っちょをつけてどんどんすする。
ここの麺つゆはやや辛めなのでつけすぎないことが肝要である。
時おり自然薯に蕎麦を潜らせて食べるとこれがまた絶品である。
蕎麦が乾かないうちに一気呵成に手繰りこんでから、十穀米ご飯に自然薯を回しかけてザフザフと掻き込む快感は何とも言えない。
そうこうしていると女将さんが蕎麦湯を持ってきてくれるのでじっくりと滋味を堪能する。
妻が食べ終わるのを待ってから次のお客さんのこともあるのであまり長居
をせずにお会計を済ませた。
帰りぎわに厨房にいる大将に、いやぁ美味しかったです、また来ますねと言うとどうもありがとうございます!と元気のいい声が返ってきた。
ずいぶん久しぶりの訪問だったが女将さんも変わっていなかったのが嬉しい。
何よりお昼からご馳走を食べたので大満足である。
大将、女将さん、またお邪魔しまーす。
いつまでもお元気でいてくださいね。。
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