夢を売るなら上手にだまして
先日、妻の推しのアイドルが結婚するという一大ニュースがあった。
本来ならばとてもおめでたいニュースなのだが、熱心なファンからしてみたら重大な裏切り行為らしくそれはもう生活が荒れた。
ファン歴が十年以上で冗談抜きで生活の最優先事項として応援してきたアイドルからの突然のこの報告は妻にとっては大ショックでしばらくは感情の整理がつかなくて怒りや悲しみがないまぜになって情緒が不安定になっていた。
妻が言うにはアイドルも一人の男性なので恋愛や結婚するのは仕方ないのかもしれないがそれをファンには絶対秘密にしておいて欲しいというのが正直な気持ちらしい。
何よりアイドルというのは夢を売る仕事でありプライベートな部分を必要以上にさらけ出す必要はないという言葉を妻の口から何度聞いたかわからない。
ここ十年ひたすら一途にそのアイドルの応援に人生の大半を捧げてきた姿をずっとそばで見てきたので妻の深い嘆きも分からないでもない。
年末年始にあるコンサートでは全国を飛び回り、CDやDVDは観賞用、保存用、布教用と何枚も買い集めており応援することに本気で命を懸けてきたのでそれが無駄だったのかもと深いため息をつく姿を見るとどうしていいのかわからず見守る事しかできない。
ちなみに私は移り気なので俳優さんやアイドルにこの人が大好きという一途な惚れ方をしたことが無いので共感が出来ないのがもどかしい。
ここ最近になって少しだけ感情の整理がついてきたのか落ち着いている表情を見せてくれるようになってきたが、これからそのアイドルを応援するかどうかを決めかねているらしい。
アイドルの世界では本気で恋をして恋愛対象として応援する人をリア恋枠と呼ぶらしいが、そこまでのめり込んでいると今回のような話を耳にするのは本当につらいだろうと思う。
正直報道があった直後からしばらくは家の空気は重苦しくて何を話しかけてもうわの空の妻の傷心具合が良く伝わってきて何とも言えなかった。
本来ならとてもおめでたい話題なので私はいい事だと思うが、そんな意見を口にしてしまうと我が家の平和が崩壊しかねないので何を話すのにも妻を傷つけないように気を配るのが大変だった。
幸いにも落ち着いてきて笑顔も見せてくれるようになってきたが、あのまま悲しみの感情に飲み込まれていたら心が壊れてしまいかねないと思っていたので何とかして気持ちの整理をつけてほしいなと思う。
担当を降りる可能性もあるし、改めて応援しようという気になるかもしれないがそれは妻にしかわからない。
私に出来る事としたら少しでも妻が楽しいと思える事を一緒にする事くらいである。
なのでつとめて明るくバカ話をするようにしている。
そんな事で彼女の心の霧が簡単に晴れるとは思わないがいつでも笑っていてほしいと思うので。
十年の恋が冷める時って残酷だなぁと思ったここ最近の我が家の一大事である。
後は時間が薬かなと思いつつ平穏な日常を取り戻したい。
それはそれとして昨日の晩御飯の話を少しだけ。
昨日は妻の帰りが遅かったので簡単に丼物をメインに。
実家から貰ってきた鶏のから揚げがあったのでこれを小さく切り分ける。
玉ねぎを細切りに。
鍋に昆布だし、めんつゆ、酒、みりん、醤油、水をいれて出汁を作る。
そこに唐揚げと玉ねぎを入れて火を点ける。
沸騰したらアクを取りつつ軽く煮こむ。
その間にキャベツのみそ汁を作った。
副菜はこれまた母が作ったおからの煮物を温めなおした。
後はぬか漬け。
昨日はナス。
どんぶりの具が煮えたら卵でとじてご飯の上によそったら鶏のからあげ丼の出来上がり。
うん、こんなもんでしょうと思いつつ妻といただきますをする。
まずはぬか漬けから。
ナスは皮が厚いので半割りにして漬けるのだが、まずまずの出来だった。
次におからを食べる。
子どもの頃はちっとも美味しいとは思わなかったが大人になるとこういったお惣菜がしみじみと体に染みる。
みそ汁で一息入れてメインの丼を食べる。
唐揚げの衣がほとびていてちょうどいいとろみがついている。
卵でとじたので優しい味わい。
鶏肉も噛むほどに旨味がジュワッと出てきてなかなか良かった。
ご飯を食べている時の妻は少し元気になるので私も心が安らぐ。
おかずも少なくて丼もボリュームが控えめだったで割と早く完食。
後片付けをしてお風呂に入って買ってきたばかりの本を読んでいたら寝落ちしてしまって朝を迎えた。
それにしても推しの結婚はファンにしてみたらとってもデリケートな話なんだなと痛感したここ最近。
なにか別の夢中になれる事が早く見つかりますように。
愛する妻の心に平穏と安寧をと心の底から願う。
懐かしのドラマのキムタクばりに後ろから抱きしめて「俺じゃダメか?」と言えばいいのだろうか?
うん、多分ドン引きされるので止めておこう。
まだ尾を引いているが一時は本当に大変だったっす。