サヨナラ夢の詰まった場所
最近隣町のおもちゃ屋さんが閉店したという話を聞いた。
このお店は祖父が初孫である私の兄の五月人形を買ったこともある歴史のあるお店だった。
閉店の理由は最近はおもちゃを買いにくるお客さんがいないのと店舗の老朽化ということだった。
私もこのお店には思い入れがかなりあり、小さいころに誕生日などのお祝いの時に父に連れられておもちゃを買いに行ったものである。
当時大人気だった太陽戦隊サンバルカンのロボットの超合金を買ってもらった時の興奮は今思い出してもドキドキと嬉しさで鼻血が出そうだったことを覚えている。
しばらくは兄にも触らせずに自分一人で合体させたり武器を持たせたりして眺めてはうっとりしていた。
その頃の古い写真の中にいかにも得意げにサンバルカンロボをもってニヤニヤしてる私の姿がある。
とはいえまだ子どもだったので飽きるのも早く、次の戦隊ヒーローの大戦隊ゴーグルファイブが始まると新しいものが欲しくなった。
しかし当時の超合金のおもちゃはかなり高価だったのでおいそれとは買っってはもらえなかった。
大人にしてみればサンバルカンもゴーグルファイブも同じに見えるらしくこの間買ったばかりでしょうと母にたしなめられる始末だった。
ほかにそのおもちゃ屋さんでの印象深い思い出はファミコンが登場してからで、気前のいいことにゲームの試遊がいくらでもできた。
スーパーマリオブラザーズが発売されて以来訪れた一大ファミコンブームに乗っかったおもちゃ屋さんは大賑わいだった。
たまに父にお店に連れて行ってもらうとファミコンの行列に並んで早く自分の番が来ないかなとそわそわしたものである。
父は気が短いのであまり長い時間待たせているとあからさまに不機嫌になってイライラして外にタバコを吸いに行った。
その隙に自分の番が回ってくると喜んでまだ遊んだことのないゲームに夢中になっていた。
アクションゲームが全盛の時代だったので一回のプレイでゲームオーバーになったら次の子と交代である。
そこで遊んだゲームで印象深いのはいっきである。
百姓のキャラクターが主人公で向かってくる忍者達を鎌で倒しながら代官屋敷を目指す内容だったと記憶している。
自分のような下手くそがプレイするとものの三分でゲームオーバーになるのでそれを見届けた父がじゃあほしいおもちゃを選べと言うのがいつものパターンだった。
ファミコンソフトは高価だったので当然買ってもらえず、たいていは千円もしないプラモデルとかを選んでいた。
そのころ私はプラモ作りにはまっていたので買ってもらったガンダムマークⅡやメタスを大切に組み立てたものだ。
私とそのおもちゃ屋さんとの蜜月はその頃までで、自宅の近所にゲームの中古ソフトを取り扱う新しいお店ができてからはそちらに夢中になった。
それから何十年もして甥っ子と姪っ子が小さいころに何度か連れて行ったことあるが、殊の外楽しかったらしく閉店を知らせるとあのおもちゃ屋さんにはもう一度行きたかったなぁと非常に残念がっていた。
町のおもちゃ屋さんというものが時代と合っていないのかもしれないが正直自分の思い入れもあって寂しさもある。
お店のおばちゃんのいつもありがとねーという笑顔を思い出すと何とも言えない気持ちになる。
せめて昔ここにはおもちゃ屋さんがあってねと語り継いでいきたい。
おじちゃん、おばちゃん長い間本当にお疲れさまでした。
そんなセンチメンタルな気持ちになった昨日の晩御飯がこちら。
昨日は昼過ぎに妻から体調不良で早退しましたという連絡を受けていたので気になっていた。
病院に行った?と聞くと更年期と気圧の関係だと思うという返事が返ってきたのでゆっくり寝ているんだよと返信を返した。
頭の中は妻のことが気にかかりつつ用事をこつこつと片付けてまっすぐ帰宅。
具合はどう?と聞こうと思ったが寝室のドアが閉まっていたので起こしてもいけないかなと思ってそっと離れた。
何か胃に優しいものがいいかなと思ったのでおかゆをメインにすることにした。
0・5合のお米を研いで一リットルの水で炊いていく。
水から炊いていって沸騰したら極弱火にして一回だけ底からかき混ぜて四十分コトコト。
おかずはあまり食べられないかなと思ったのでネギ入りの卵焼きのみ。
おかゆのお供にたたいた梅干しと塩昆布、大根の糠漬けを用意。
おかゆが炊けたので妻の様子を見に行った。
寝たらずいぶん楽になったというので一安心。
薬を飲みたいだろうから軽くご飯を食べようと誘って居間に移動。
おかゆをよそっていただきます。
五分がゆなのでサラリとしている。
はぁ、これなら食べられると妻が言うのでゆっくりで良いよと言って私は卵焼きをつついた。
おかゆも食べたがかなりあっさりだった。
時間をかけてそれなりに食べてくれた。
薬を飲んで顔色が少し良くなっていたので安心しておやすみなさい。
今朝には大分回復したらしく、行ってきまーすと元気よく出勤していった。
体調を崩したときはお互い様である。
それにしてもおもちゃ屋さん閉店のニュースは寂しい。
ショーケースに顔をべったりくっつけてロボやミニカーを眺めていた記憶が懐かしい。
残るおもちゃ屋さんは近所のデパートにテナントで入っているお店のみになった。
大人の二人暮らしだと子どものおもちゃを買う機会は滅多にないが何かあったら利用したい。
おもちゃを眺める子どものキラキラした目はいつだって美しい。