訥々と人生語る年男
今年は辰年、何気に私は年男である。
何だかあっという間に干支を4回分も過ごしてきたと思うと時の流れの速さにクラクラする。
これまでの人生をざっくり振り返ってみて十二歳の頃は自己主張をしない気弱で病弱な少年だった。
とにかくゲームが好きで時間さえあればテレビの前に座ってファミコンに興じていた。
兄弟もゲーム好きだったので特に兄とは一緒によく遊んだものである。
大作RPGを協力して進めていくのはとても楽しかった。
まだゲームの攻略情報と言えば雑誌しかない時代であり、たまにエンディングまで全て丸出しにしている本もあったので油断がならなかった。
それから干支が一周して二十四歳の頃は社会人一年目だった。
私は就職浪人をしておりその上初めて勤めた会社が給料を払ってくれず大揉めで仕事を辞めた経緯がある。
職探しをしながらアルバイトに勤しんだ話は結構面白いのでまたいずれ書きたいと思う
二十歳過ぎのこの頃はとにかくやる気に満ちており、文字通りバリバリという擬音が聴こえるくらいにがむしゃらに働いていた。
プライベートも充実しており、人生初めてのモテ期でウハウハだった。
お酒もしこたま飲んだし、遊びもギャンブル以外は釣り、キャンプといったアウトドアもこなしゲームも相変わらずよくやっていた。
キャンプに女性を連れていって焚き火を見ながらたいしてありもしない深い人生の話をするとロマンチックな雰囲気もあってかなり好意的な目で見られることが多かった。
もちろん二股や浮気とは無縁で一度お付き合いした女性とは最後まで添い遂げるという気持ちでいたのだが、私が重すぎるのかお相手はそうでもないらしくいつも決まって私が振られるというパターンばかりだった。
それでもめげずに理想の女性を探していたのが二十代前半である。
そして今から十二年前の三十六歳の時には最愛の人を伴侶に迎えて七年目だった。
仕事も順調で小さくて古いながらの自分の城を構えて順風満帆だった。
しかしこの年の冬に妻の父が急逝した。
義父はお酒を飲まないと何もできない人でいつも泥酔していた。
そして大声を出しながら私や妻の事をなじって場の空気を凍り付かせるという少し困った人でもあった。
ごくまれにお酒の入っていない時に会うと借りてきた猫みたいにウソのようにおとなしかった。
晩年は医師からお酒を厳重に止められていたのだが、義母の目を盗んで飲み続けていたようだ
そしてお酒が原因で還暦を直前にして亡くなった。
今考えてもあまりにあっけなくて早すぎると思う。
季節ごとのお墓参りは欠かさないがやっぱりまだ元気でいてほしかった。
三十六歳の時の一番大きな出来事は義父の事に尽きる。
そして迎えた今年。
気が付けば私も五十歳まであと二年と確実に人生の折り返し地点は過ぎておりやや気持ちが焦る。
「遅すぎる事はない早すぎる冬よりも」と拓郎が歌っていたがまだまだやりたいことが山ほどあるので気力と体力が充実している今のうちに種をまいておきたい。
そして迎える収穫の時期にああ、あの時やっといてよかったなぁと思えるように行動していきたい。
次の年男が巡ってくるのは、おお何と還暦である。
キュッとスリムになって赤いちゃんちゃんこがビビットに似合うイケオジになれるように今から自分磨きをキュッキュとね。
今年六十歳の有名人は、阿部寛、堤真一、高橋克典…。
ううむ、目指しがいのある人たちばかり。
目標は高ければ高いほど燃えますよねぇ。
そんな事を考えている年男四回生の昨日の晩御飯がこちら。
年末からお酒を飲みっぱなしだったので昨日は休肝日。
献立を何にしようか迷ったがまずはスーパーへ。
さすがにお正月ムードはほぼなくお客さんもまばら。
ねらい目だと思っていた半額商品もあまりなかったので残念。
それでも蕎麦が安かったので購入。
他にお肉も鶏肉が三割引きだったのでまとめ買い。
後は野菜をちょこちょこ買い足して帰宅。
手洗いとうがいを念入りにして調理開始。
まずは出汁を取る。
お正月用で余っていた鰹節と昆布で丁寧に。
沸騰前に昆布を引き揚げ鰹節をバサッと加えて少しだけ煮込んでザルで濾す。
そこに醤油、酒、みりん、砂糖、塩で薄めのつゆを作る。
乗せる具はかまぼこと鶏肉。
鶏むね肉を一口サイズに切ってフライパンで炒めて醤油、砂糖、みりん、ほんの少々うま味調味料を入れて味を調えてとろみが出るまで煮詰める。
これで鶏肉の甘辛煮の出来上がり。
副菜はだし巻き卵。
後は冷凍しておいた稲荷ずしがあったのでそれを解凍。
大鍋にお湯を沸かして蕎麦をパラリ。
一分半茹でてお湯を切ってどんぶりに。
つゆをかけてかまぼこと鶏肉を乗せて上からねぎを散らして鶏蕎麦の出来あがり。
まあこんなものでしょうと思いつつ妻を呼ぶ。
いただきますをしてお茶で乾杯。
まずは出汁巻き卵から。
ハムリと噛むとほんのり甘くて出汁がジュッとあふれる。
ううん、これは良いものを教わったと思いつつポクポク。
次に伸びないうちに蕎麦をすする。
まずはつゆから飲むと真面目に出汁を取った味がする。
すっきりしていてそれでいて味に深みがあって嬉しくなる。
麺を掴んでスルスルと啜る。
生麺なのでコシはあまりないが十分に蕎麦の良さは楽しめる。
鶏肉を齧るとじんわりと甘くてこれもなかなかいい。
妻と年越しをしていなかったので年越され蕎麦だねと言って笑いあった。
稲荷ずしも解凍が上手くいったので良かった。
お酒無しあっさり晩ご飯だったので三十分くらいでご馳走様。
片づけもラクチン。
さぁて、今日も晩御飯の支度をしようかな。
やっぱり毎日妻と一緒にご飯を食べるのが一番のシアワセなのだ。
てへっ、ノロケちゃいました。