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おばあちゃんとぼく。

 今日は祖母の誕生日だ。

 九十五歳を迎える長寿である。

 つい先日体調を崩して病院に入院していたのでお見舞いに行った記憶も新しい。

 祖母は携帯電話を持ってはいるのだが、知らない番号の電話に出ないこととを叔父や母に言われているので連絡を取る手段が無い。

 仕方がないので祖母と電話が出来る母に誕生日おめでとうとお伝えくださいとLINEをした。

 返事はすぐに帰ってきて今日の夕方に伝えておくねという話になったので気持ちが落ち着いた。

 これまでは毎年誕生日は会いに行くか電話を必ずかけていた。

 年々耳が遠くなる祖母との会話は何となく成立しているようで伝えたいことはちっとも伝わらないことも増えた。

 それでもこの歳にしては記憶力が抜群で私の学生時代の思い出をいつも楽しそうに話す。

 それも小学校の頃から大学に通うまでの長い期間を滔々と語るのは一種の話芸のような趣きがある。

 その私の一代記を語り終えるとようやく落ち着いて話が出来る。

 この間会った時にはまずまず元気そうだった。

 予定では昨日退院して住宅型老人ホームに入所しているはずである。

 足の調子が悪いので自力歩行が難しく手押し車も使えないそうで完全に車いす生活になるそうだ。

 祖母の希望としては病院を出たら自宅に帰りたかったのだが、バリアフリーではない段差の多い家で暮らすのは現実的ではなく、日常の介護を担当している叔父では手の回らないところもあるので老人ホームで落ち着いたらしい。

 さっき少し調べてみたがお見舞いは平日の二時から一時間ほどできるみたいなのでまた日程を調整して顔を見せに行きたい。

 まだ老人ホームに入りたてで疲れているかもしれないので祖母の体調を最優先する。

 そんな事を考えながら昨日の晩御飯を振り返ってみる。

 昨日は買い物に出かけないであるもので作ることにした。

 お米を二合洗って浸水しておく。

 解凍した鶏むね肉をフォークでプスプス刺す。

 炊飯器にお米を入れて塩、しょうが、にんにくの擦りおろしを入れる。

 そこに丸のままの鶏肉をドーン。

 後は炊き込みごはんモードで炊飯。
  
 炊けるまでの間にタレを作っておく。

 醤油、日本酒、黒酢、しょうが、ごま油を合わせてよく混ぜる。

 これでショウガ黒酢ダレの出来上がり。

 副菜はジャガイモの皮を剥いて一口サイズに切り分ける。

 それをレンジでチン。

 中まで火が通ったら油を敷かないでフライパンに入れて転がす。

 そこにウインナーを加えてよく炒める。

 味付けはシンプルに塩のみ。

 これで簡単ジャーマンポテトの完成。
 
 汁物は玉ねぎのみそ汁にした。

 ご飯が炊けたら鶏肉を取り出して切り分ける。

 それを大きめのお皿に盛ったらよこにご飯を添えてハイナンチキンライスの一丁上がり。

 妻を呼んでいただきますをする。

 昨日のお酒はビールで決まり。

 パシュッとプルタブを起こしてグラスにポッポッポと注ぐ。

 ではではと乾杯をしてキュビビビッと一気に飲む。

 クヒィ、美味すぎる…と思わず声が漏れる。

 ではではとつまみにジャーマンポテトを食べる。

 ジャガイモがホクホクでウインナーは齧るとパキッと心地いい音を立てる。

 味付けはシンプルに塩だけだが逆にそれが潔くて好ましい。

 仕上げにローズマリーでもあればよいのだが、おしゃれハーブは手元にないので仕方がない。

 二本目のビールに手を伸ばしてメインのチキンライスを食べる。

 まずは鶏肉をそのまま食べてみたがホロホロととろける柔らかさで箸ではつまめないくらいだった。
 
 味はかなり薄めだったので黒酢ダレをかけて食べてみるとキュッと味が締まってかなり美味しくなった。

 ご飯と一緒にスプーンに乗せて頬張るとこれがまた泣かせるほどイケル。

 軽めに盛り付けたのでもちろんお代わりをした。

 妻もこのタレが良いねと言ってモリモリ食べてくれた。

 お腹いっぱいになるまで食べてご馳走様。

 お酒はビール三本とまずまず控えめ。

 使った食器の数が少なかったので片づけはラクチンだった。

 すこしご飯が残ったので冷凍しておくことにした。

 週末のお昼にチャーハンにしようかな。

 さぁて今日もそろそろ晩御飯の時間。

 ふと、祖母の得意料理だったローカルフードのけんちょうと、茶粥が食べたくなった。

 飲みすぎた日の翌朝に食べると美味かったなぁ。

 あの味を思い出して少しおセンチになる自分。

 今度会ったらレシピを教えてもらうんだ。

 お婆ちゃん、ハッピーバースディ!

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