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プーマ ウルトラ1.1 FGについての個人的見解

本日はプーマの新作として登場している超絶軽量スパイク、ウルトラ1.1 FGについての個人的見解を述べていきます。
シューズとしては面白い、その上そこまで悪くはないですが、良くも悪くも一番の長所が軽さになってしまっているのが個人的には気がかりなポイント。

ウルトラ1.1FGにはどういった良さ、そして懸念されるポイントがあるのか、お伝えしていこうと思います。


重量

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まずこのスパイクの最大の長所、重量に関してです。
プーマウルトラ1.1 FGモデル、今回25.0cmを購入していますが、その重量なんと

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片足 146g

物凄く軽いです笑
軽いだけのスパイクは今まで沢山ありましたが、その上ブレない強度を兼ね備えているのが今作ウルトラ1.1 FGの最大の長所

ただ軽いだけじゃない、実戦投入、運用が可能なレベルでの軽量性という事で、この軽さに関してはかなり期待の出来る一足となっています。

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正直、おススメする側からすると、軽量性というのは一定水準以上あれば、後はフィットしているかどうか等の方が重要なので、足切りライン的な意味合いが強いです。

ただ、一方で軽さというのは一般消費者的にはわかりやすく体感できる所であり、作り手側としては数グラム削るのも非常に難しい所になるので、

今までより軽くて、その上まともなシューズであれば、それだけで十分凄い

といえますね。

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LAST 足型

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今回のウルトラ1.1 FG、最高の長所はその軽量性ですが、足型やソール設計には一部難点が見受けられます。
特に足型に関してはもう少し頑張ってほしいというのが正直なところです。
(※同じタイミングで出たエックスゴーストが良すぎるのもありますが…)

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足型に関する難点は主に3つで、一つ目はこの指先の高さの傾斜。
もう少し親指~小指にかけての傾斜が欲しく、メリハリがあってもいいように感じます。
(※試着した感覚的には、素材が馴染んで合わせてくれますが…)

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二つ目は足幅部(MP関節部)よりも前に、ソールプレート、アッパーの一番幅広いポイントがきてしまっているという事。
今回のウルトラはこれが一番難点で、足にフィットするはずのない形になっています…。
(※母指が大分短くて、尚且つ内に出ていく形であれば、、あまり見たことが無いですが。)

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ヒトの足で一番多く突出しているのは足幅部になる(※正確には足幅部のわずかに後ろ)のですが、ウルトラは足幅部よりも前に最も幅のあるポイントを設計。(ソールの関係上)
親指が一番長く設計してあるようなシューズであれば、まだ合う可能性も多少は出てくるのですが、人差し指付近が一番長く設計されているので、このスペースは確実にダボつきます。

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それも足幅部よりも前に、アウトソールの幅が最もあるポイントが設計されているから。
切り返し時の前足部の左右の安定感という意味では効果的ですが、そもそもこの部位は一定のフレキシブルさが必要になるので、安定性を高めるには他の方法でも良かったかと思います。
(※ただ、僕がすぐに思いつく方法では、大体重量UPしてしまいそうです)

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このスペースが生まれることによる影響としては、屈曲時にアッパーがしわになり履き心地が悪かったり、サッカーだとボールタッチ、クロスに違和感を覚えるかもしれません。

この幅の部分が一つ、ウルトラ1.1 FGではネックになり得ます。

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最後、三つ目のポイントは足幅部の高さです。
ここは欧州メインの足型なので致し方ない部分ではあるのですが、それにしてもかなり高さのある設計になっているのがポイント。

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アシックス、ミズノ等の一部の製品で大体230~240mm程であるのに対し、ウルトラ1.1FGは248mm程の足囲に。
一方で足幅はそこまで大きな違いとなってはいないので、足幅部の高さが高く設計されているのが分かります。

足幅的にはE前後ですが、かなり足幅部に高さがあるので、足囲的には2E程度は欲しい、そんな設計に仕上がっており、日本人的には比較的ちょっと合いにくそうな印象は受けます。

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という訳で、指先、足幅、足囲それぞれで少しづつ難点が見えるウルトラ1.1 FG。
とはいえ致命的なのは足幅設計が合っていない部分といえるでしょうか。

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ちなみに他の部位に関しても、基本的にやはり欧州系の足型を使用している印象を受けるので、典型的な日本人的足型ではやや合いにくい可能性が高まるものに仕上がっています。

HGモデルが日本人(アジア系)向けとはいえ、機能的に大きく違いが出てしまうので、なかなか難しい所です。
(※だから国内メーカーのアシックス、ミズノ、デサントアンブロ、SSKヒュンメル辺りは頑張ってほしい所ですね。)

サイズ感

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今回のウルトラ1.1 FGは、同じプーマのフューチャーよりもサイズ的にはやや小さめになります。
フューチャー5.1SGが257mmであるのに対し、ウルトラ1.1FGは253mmと、縦の長さ的にはモレリア2JAPAN辺りと近いサイズになります。

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ただ、指先の設計上、割と人差し指が一番長く設計されているため、ベストであるのは人差し指が一番長い方。

指先の高さ自体はある程度確保されており、ある程度奥までしっかり指が入るようにはなっています。

サイズ的にはやや短めですが、サイズを変えるほど小さい訳ではないという一足です。

アッパー前足部

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アッパー素材にはテキスタイル、繊維で編み込んだ、単一構造のMATRYXEVO®アッパーに仕上がっているのが今回のウルトラの特徴。
その繊維にケブラー素材、カーボン素材を混ぜ込んだことで、軽い、柔らかい上に強いというアッパー素材に仕上げてあるのが今作のポイント。

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ここで皆様には謝らないといけないのですが、

どこにカーボンが使用されているのかが判断できませんでした

申し訳ないです…

ケブラーもカーボンも強くて軽い素材という事はわかるのですが、それが一体どれくらい、どの範囲にわたって採用されているかが一つポイントに。

完全に予想で申し訳ないのですが、

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アウトサイド部を中心として黄色っぽいのがケブラー
かかとを中心に前足部まで使用している黒がカーボン
白、灰色がポリエステル繊維

という分け方なのではないかと思います…
繊維は染色が可能なので難しいですが、オレンジのウルトラにも採用され、ケブラーといえば黄色のイメージも強いと思うので、このアウトサイド部にケブラーが数本採用されているのは恐らく確定。

強さと軽さを謳いやすいカーボンは、恐らく強度の必要なかかとを中心に、グラフィックで表現しながら前足部にまで伸びているのだと思われます…。
(※但し、カーボン繊維も様々な特徴があるため、全面に採用されている可能性もあり)

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ただ、一つ言えるのは前足部(MP関節部より前)の裏材には薄く柔らかなクッションフォームが挿入され、触った感触もテキスタイルらしいハリ感は多少残りつつも、かなり柔らかく仕上がっているという事。

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その上でつま先の保形、周囲の強度を高める意図も兼ね備えたグリップコントロールプロと呼ばれる樹脂フィルムが前足部にも採用。

繊維むき出しのアッパー部は比較的滑り止めが少なく、縦方向への縫い糸による凹凸のみとなっていますが、周囲には樹脂フィルムによるグリップ強化パターンが配置。

コントロールする面積的にはインサイドのトラップや、クロス等ではアシストができるものの、基本的にはグリップ強化というよりも保形性を高め、強度を高める樹脂加工となっています。

アッパー中足部

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アッパー中足部にも同様にテキスタイルベースのアッパーを採用。
シューレースは外側にフックを設けて通した、5つ穴形状となっています。

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このようにアウトサイド部には黄色い繊維(ケブラー)が五本、後足部から前足部にまで伸びてサポート。
アウトサイド部の強度をより高め、切り返し等でも足が外にズレにくくするような仕様に。

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逆にインサイド側には黄色い繊維はなく、代わりに樹脂フィルム(グリップコントロールプロ)が他部位よりも上の方にまで採用。

ボールグリップ性を高め、インサイドでのトラップ精度を高めるような仕様に仕上がっています。

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そしてフック部分はテキスタイルでできた布地ではなく、一本一本の繊維によって構成。
耐久性的にどこまで持つのかは気になるポイントといえるでしょう…。
(※後述しますがフック形状には意味があります)

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そして甲部、一番圧迫感を受けやすい部分にはむき出しのニット素材を用い、高い伸縮性でフィットしやすい設計に。

その上、履き口~シュータン上部はニットの編み込みを変更し、もう少し伸縮しない、強く編み上げることで緩みにくく、サポート性を発揮させるような仕様に仕上がっています。

アッパー後足部、内部

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アッパー後足部にはアウトソールと一体成型されたヒールカウンターが搭載。
このかかと回りはやはり一番強度高く設計されており、

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かかと後ろに樹脂テープ、履き口回りに樹脂テープ、そして樹脂フィルムによる補強が採用。
高速スプリント時に圧のかかるかかと後ろ、切り返しやかかと接地時にグラつかせない履き口、そしてかかと自体も大部分を樹脂フィルムで補強。

この軽さを維持しつつ、補強すべきポイントはしっかり最低限補強してあるのが好印象な一足に仕上がっています。

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また、アウトソール一体成型のヒールカウンターも、非常に強固な設計に仕上がっているものに。
かかと下部はしっかりとサイドを固めてブレないように設計しているのも嬉しいポイントです。

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そしてかかと裏側には微起毛させた素材を用い、アキレス腱部が通る位置はクッションを薄く配置。

かかとを両サイド後方からソフトなクッションパッドで包むことで、脱げにくく、アキレス腱への圧迫も強すぎないものに仕上げています。

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同じくアッパーライニングには微起毛させた素材を用い、薄さとソフトな足当たりの良さを両立。

また、シューレースフック形状にしたことで、縫い目が甲部~履き口のニットを繋げる部分位しか内側に無く、非常にシームレスでストレスのない内部構造に仕上がっているのはかなりの強みと言えるでしょう。

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また、ミッドソールは前足部のみ樹脂プレートを採用。
プレートには6本の屈曲溝(四か所)が設けられており、保形性を出しながら屈曲性もしっかりと確保。

また、プレート表面に凹凸を設けることで、インソールが中で滑ってしまう事を防ぐような仕様になっています。

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また、インソールにはナノグリップテクノロジーと呼ばれるグリップ性のあるインソールを採用。

表面に特に前後方向に摩擦力が高くなるような仕様を施すことで、適度なグリップ性を発揮するようなインソールに仕上がっています。

アウトソール

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アウトソールには天然芝で使用できる11本のブレードスタッドが採用。
ソールベースにはぺバックス(ポリエーテルブロックアミド)が用いられています。

一応メーカー公式ではFG/AG、人工芝対応可ですが、とてもじゃないけど日本の人工芝環境では人工芝ならどこでも使えるとは思えないので、基本天然芝用として評価していきます。

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ソールプレートに関しては、前述した母指側の出っ張りを除けば、前足部は概ねよくできているものに。
長さの内訳は下記にて。

つま先のL字型…10mm
他L字型…13mm
中央L字…7mm
かかと…16mm
サブスタッド…1mm

基本的にはスタッドは長めで、深い芝等にしっかり噛むような仕様。
土台部は意外と太く設計されており、刺さりの良さと突き上げの最低限の分散、グリップ強化を上手くバランスよく取り入れています。

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スタッドは、前4つのL字型スタッドが、前方向への推進力とカットイン、カットアウト時の鋭いキレを生み出すような設計に。
中央部のL字スタッドでソールの落ち込みを防ぎつつ、前への推進力を確保し、短めの設計で足部に干渉しすぎないように設計。

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先端部、及びソール底部にはかなり短いブレードスタッドや三角スタッドを配置。
深くまで刺さり切った際に、最後のアシストとして前方向への推進力、加速力を更に高めるようなソール仕様となっています。
(※ちなみにプーマ的には空力による抵抗を受けにくいように設計もしてあるそうです。)

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また、前足部最後列の三角上のブレードスタッドが、側方安定性を確保。
縦方向に15mm伸びたブレードスタッドによって、前方への推進力を殺さずに安定感を高めるような仕様に仕上げています。

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そして中足部には凹凸(リブ)を設けたことで強度を更に増す設計に。
内側が適度に捻じれ、外捻じれはややしっかり目に抑えてくれる仕様で、この辺りも丁度いい捻じれ感に仕上がっていると思います。

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ただ、多少癖があるのが後足部のスタッド。
完全に縦方向に伸びたスタッド設計で、左右への動きには強く安定感があるものの、縦方向へのグリップが甘いものに。

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まっすぐ止まるという動作はあまり多くはないものの、想定されるシーンではスリップする事が即失点に繋がるような場面が多いものに。

ラグビーであればとにかくアグレッシブに前へ仕掛ける選手、サッカーであれば前線の選手であれば概ね問題ないとは思いますが、止まろうとしたときに滑ると困るシーンは多々ある印象。

もう少し、最後列は角度をつけるか、L字気味にするかで良かったのではないかな、と思いはします。

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ちなみにスタッドが内側に入り込んでいたりするスパイクもありますが、このウルトラ1.1 FGではそういったこともなく、ストレートに伸びているものに。

安定性、グリップ性の調和がとれた設計となっています。

ウルトラ1.1 FGの長所、短所

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長所

・超絶軽量である上に、そぎ落とされがちな要素が機能している
・シームレスな裏材設計による包み込まれるようなフィット感
・前~横方向へ抜群のグリップを発揮するソール

短所

・足型設計が仕方ないが欧州向け、かつ一部疑念点あり
・人工芝対応は難しいと思われる仕様設計
・フック部の耐久性はいかほどかが疑念の余地あり

総評

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この超絶軽量性を発揮しながら、シューズとしての基本的な要素はそぎ落とさずにしっかりと形に出来ている、新時代の超軽量スパイクだというのが率直な感想です。

今までであればこの軽さだと強度が足らなかったり、逆に硬すぎたりと、実際にプレーできるシューズになかなかならない事も多くありましたが、今回のウルトラ1.1 FGでは全体のバランスもうまくとりながら、超軽量化されているという事で素直に好印象を受けています。

一方で足型の部分で一部、特に日本人には比較的合いにくいであろう仕様設計(仕方ない)や、人工芝対応については少し無理のある設計(これも日本市場向けじゃないから仕方ない)には難点が見受けられる商品となっています。

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とはいえ大きく破綻した仕様設計は無く、欧州系の足型であればかなりフィットしやすい可能性を秘めているウルトラ1.1 FG。

どうしてもHGモデルとの差が出てしまうので、外資メーカーよりも国内メーカーの方が有利に働くことが多いですが、今回のウルトラ1.1 FGはなかなかに面白いスパイク。

この軽さがこれからスタンダードになっていくのか、それともそうでもないのか、以前2010年にF50アディゼロが変えたように、シューズの軽さの転換点にウルトラがなれば、これは非常に面白い事になりそうです。

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