黒猫トムの帰還 〜ある魔法猫とそのお友達の物語〜
ー挨拶もなしかや?そこのこんまいのー
黒い毛並みの艶々とした小さな猫は、周囲をキョロキョロと見回した。まるで「ぼくのことですか?」とでもいいたげに小首を傾げるさまは、どこか人間臭さを感じさせる。
ーはじめまして、お稲荷さん。お世話になっていますー
黒猫は言うと同時に、トン トトンと展示台に軽やかに跳躍すると、その上に置かれた明神堂の中を覗き込んだ。
陶製の明神堂には、素焼きに着色が施された、人間の大人ならば手のひらサイズの、全体的にふくよかなフォルムの狐の人形が一体納