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ネイルカラーと決断力
連続で、担当ネイリストさんが同じだ。「よろしくお願いします」と目の前の席に座る様子を眺めながらすぐに気づいた。
ジェルネイルをするようになって1年が経った。けど、通っているサロンでネイリストの指定はしていない。サロンのスタッフ人数は正確に把握しているわけではないけれど、少なくともこの1年の間、5人のネイリストの方に施術を行ってもらってきた。どのネイリストも全員マスクを着用しての接客をしているので、誰1人としてマスクなしの顔は知らない。
目の前で施術を始めようとしているネイリストさん(以下、Aさん)は、中でも記憶に新しく、かつ印象的な人だった。おそらく、今年か昨年末あたりに入社した新人なのだ。今の店に来る前、別のサロンで経験があったのか否かはわからない。
ジェルネイルを塗ってもらう前に、ネイルをオフ(取り除く)して、爪の長さをカットしてもらう。これに一時間の内30分掛かる。確か2024年1月頃、研修の一環かわからないけれど、片手分だけオフとカットを行ったのがAさんだった。サロンに通うようになって初めてのことだったので、まだ強く印象に残っていた。
「実はここに来たばかりのとき、お客さんのカットさせてもらったときのこと覚えていて」
ジェルネイルを塗りながらAさんが言う。「え、ほんとですか」。片手分だけオフとカットをしたときのことだ。向こうもこちらを覚えていたとは。
「前回も今回もそうですけど、とにかくカラーを決めるスピードが早くて印象的だったんですよ。前例がないカラー変更もあまりためらったり悩んだりされないので。決断力が在りますよねえ」
まさかネイルサロンで自分の決断力を褒められるなんて思わなくてびっくりした。サプライズでプレゼントをもらったような気持ちになる。
デザインではなくカラーに触れたことが、プレゼントをつい否定してしまうことなく受け止められたのだと思う。タブレットに並ぶネイルデザインから選び取るのにいつも一番時間が掛かる。けど、それが決まると他の決定が早いのは確かだ。
カラー決めが早いのは、その時の季節をイメージしたものだったり、自分自身のその瞬間の感情に近いものから選ぶからだと思う。たくさんの単色ネイルチップのサンプルを見ると選択肢がとても多く見えるけど、その中のいくつかが輝いて、目を惹かれるものだから、あまり躊躇わずに選ぶことができるんだろう。
今回はブラウンがベースのデザインだったけど、これから桜の季節になっていくし、ピンクベースにした。とはいえ華やかすぎず、落ち着いた雰囲気が良いなと思って、ああだこうだと色変更を依頼。パッと見、前回の時期(バレンタインシーズン)よりもバレンタインの色が強い感じにもなったが、これはこれでかわいいなと満足。
「うーん、やっぱりいいですねえ……」と小さめの声でAさんがそう言ってくれたのを聞いて、ひっそりと得意げな気持ちになった。
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