ストリートビューで幼少期のちっさい思い出を探る

2024年8月30日(金)　雨時々曇り

小学2年生の時、転校した。転校先の小学校で、同級生たちが「クノ階段」と呼ぶ階段があった。「明日、クノ階段で待ち合わせしよう」「クノ階段、通れば近道だよ」。みんな、当たり前のように言う。実際わたしもクノ階段の場所を教えてもらって、友だちが多く暮らす団地エリアへ向かうためによく通った。

利用しながらも、わたしは「クノ階段」が「クノ階段」と呼ばれるゆえんがわからないでいた。あまり深く考えず、「クノ階段」とみんなが口にするたびに、脳内で「九の階段」と変換していた。9にまつわる何かがあるのだろうか。階段は9段ではない。9番地にあるとか、そういうことでもない。もしかしたら、「久野」みたいに、古い土地の名前や人の名前なのかもしれない。

ある日、クノ階段がある道と並行、かつ高い場所にある道を歩いていた。ふと、自分の視界状では手のひらサイズほどの「クノ階段」が見えた。遠くからあの階段を見るのは、はじめてのことだった。あっ！　思わず一人、大きな声が出た。全景を見て、「クノ階段」が「“く”の階段」であることを知った。斜めに続く2つの階段の中心を、踊り場が結んでいる。それまで、最も直線的で、簡単な「く」の存在をすっかり忘れていたのだった。

そんな話を会社の後輩にしたら、「グーグルストリートビューで、くの階段を見れないのか」と聞かれた。むずかしいかも、と言いつつ、かすかな記憶を頼りにまず当時通っていた小学校を検索。その後、グーグルストリートビューを起動させた。見覚えのある道もありつつ、くの階段は見当たらない。諦めようとしたとき、「年月を当時の時期にできないですかね」と言われる。このとき初めて知ったのだが、グーグルストリートビューは、データがあれば古い年月のモノでも見れる。

チェックしてみると、2012年ならデータがあった。もう一度、可能性がありそうな場所、その2012年版を眺める。

あっ！

あの頃、初めて“く”の階段の本当の意味を知ったときと同じように声が出た。画質は荒いが、あの日あの場所と同じ角度の階段を発見した。

写真中央（2012年）。わかりますかね？

久しぶりに見ると、改めて“く”の階段としか呼びようがないな。