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ピアスホールを開けたとて

耳にピアスホールを開けたのは、社会人1年目の時だ。

漠然と憧れは抱いていたものの、学生時代はイヤリングで不自由が無かったので、特段開けたいと思わなかった。

先に開けた妹が「便利」「ピアスをしておけば、格好が適当でも、なんかちゃんとして見える」などといった感想を伝えてきて、ズボラでできるだけラクをしたいと思考するわたしを刺激した。

それでも、最初に開けるなら皮膚科クリニックでやってもらうもの、と思っていたこともあり。予約が面倒で実行しようとはあまり考えなかった。

一転して開けることにしたきっかけは、ちょっとしたストレスだった。一言で言うと人間関係から発生したもので、日々どうしたら解決できるのかと悶々としていた。

鬱屈としたものが自分の中で溜まってきたとき、ぼぉっと歩いていた道すがら、とある皮膚科クリニックが目に入った。別に「ピアスホール開けます」とか、そんな広告が出ていたわけでも無かったけれど、見た瞬間、「ピアスホール開けてやろう!!」と強く決意した。

こうやって書きながら思い返すと、まるでちょっとした自傷行為だったようにも思えてしまう。物理的に自分自身に何か変化を起こせば、風穴を開ければ、日常に突破口を見いだせる。そんなことをふわふわ考えていたのかもしれない。

なんでこんなことを思い出したかというと、洗面台の棚の奥から空の、小さな消毒液のボトルが出てきたからだった。クリニックでファーストピアスを付けてもらったあと、「膿む可能性があるので、外すまではピアス周りに塗布してくださいね」と先生に言われたもの。捨てたと思っていたのに。

勢いで地元の最寄り駅にあるクリニックを予約して、開けて。最初の1週間くらいは、膿んだり、かゆくなったり、痛くなったりする可能性にビビりながら過ごした。先生に言われたとおりに、真面目に消毒液を塗布し続けた。

1ヶ月経っていざピアスを外そうとしたら、想像を絶する固さで、「一生外れないんじゃないか」と半泣きになった。1時間くらい格闘してパンッと片方外れたけれど、もう一対あることに気付いて軽く絶望する。外すのにトータル2時間くらい掛かった。その間、1ヶ月前の自分を呪い続けていた。

結局ピアスホールを開けたって、別に何の奇跡も起きなかった。きっかけになった人間関係も、関係の無いところで解決した。けどあのとき妹が言った「なんかちゃんとして見える」って言うのは間違ってはいないと思う。

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のん
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