適応能力?
「なんか……適応能力?が高いですよね」
そう言ってきたのは、美容師の方だった。といっても、いつも担当してくれる人ではなく(指名は特にしていないけれど、普段は大体いつも同じ人がカットを担当してくれる)。
美容室に行く度顔を合わせることはあったけれど、その人に切ってもらうのは約1年ぶりとずいぶん久しぶり。
会話の内容も、この1年前から最近までの近況報告がほとんどだった。今社会人何年目なのか、仕事はリモートより出社が増えてきたこと、よく使うカメラが変わったこと、初めてジェルネイルをしたこと、出張は多かったけど旅行はできなかったこと……。
話ながら、そういえば、と思って聞いてみる。
「今すぐじゃないんですけど……髪の毛、思いっきり染めてみたいんですよ。そうなると施術メニューってどうなりますかね」
「染めるの!?」と驚いたように返される。今のわたしは真っ黒な地毛だ。
「いいねえ~! でも、会社は大丈夫なの?」
「いや、勤務中はちょっと明るすぎるのは厳しいんですけど……長めの休みとか狙って期間限定で染めてみたいなあって」
「あ~結構お休み長いんだっけ」
ブリーチの回数とか、大体の料金などの話を「ふんふん」とうなづきながら聞く。
「それにしても真面目っていうかさ、適応能力が高いよね」
突然そんなことを言われて「え?」と返すと、
「当たり前かもしれないけど、ちゃんとルール守るよね。それで、その隙間を狙うっていうか……その場でできること結構考えるよね」
わたしはすっかり覚えていなかったけど、大学生の時「ネイルしてみたいけど、バイト先が喫茶店だから無理なんですよね。セルフネイルで楽しむしかないなあ」という話をしていたそうだ。
以前も書いた記憶があるけれど、自分は結構同じ場所に留まり続ける傾向がある。バイト先や部活などを自ら辞めたいと思ったことがほぼない。もちろん変わらずに、ではなく、その場で立場が変わったり、できることも増えたりしているんだけど。
それはある意味、その場でよくできるものは良くしていったり、できることの最大化みたいなことを試みる傾向があるからなのかなーなんてことを考えた。ちょっと毛色が違う話だとも思うけど。