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生まれて初めての二日酔い
生まれて初めて、二日酔いを味わっていた。
いや、正直叶うことなら、一度も味わうことなく人生を終えたかったと思う。
帰巣本能なのか、地元の最寄り駅でちゃんと降り、帰路に着いた。家につき、手洗いうがいをして(ここら辺我ながら偉い)、リビングに着くや否やホットカーペットの上に倒れこんだ。えっちらおっちらコンタクトレンズを外し、そのまま「気持ち悪い」「記憶が既に途切れ途切れ」「わたし、手洗ったっけ?」と母親に向かって呻きながら眠ったという(母談)。
そうして早朝4時半ごろに目が覚め、起きてみるとなんだかもう、気持ちが悪い。「寝れば酔いは醒めるだろう」と帰路に着きながらどこか思っていたので、地味に動揺した。よろよろと立ち上がり、化粧を落とし、シャワーを浴びる。自分の体が、知らない体に作り替えられたようだった。自室に移動しベッドでもう一度眠った。「ああ、気持ち悪いの無くなっていますように」と考えていたら寝付きにくかった。
もう一度起きたら、結局なにも良くなっていなくて、落胆しながら再びよろよろと立ち上がった。「これは二日酔い」と認めざるをえない。「味噌汁が染みる」というのを、本当の意味で初めて体感した朝だった。
友人や上司らの「酔って記憶を飛ばしたことがある」だとか、「気づいたら家で寝ていた」とか、「次の日の午前中いっぱいはずっと気分が悪くて……」といった話はよく耳にしたけれど、かなり他人事として聞いていた。
要は、「わたしはなんやかんや二日酔いにはならない」と己を過信していたのだ。
初めて、記憶がなくなる(一部)ということも体験した。会食の帰り、先方とも別れ、最寄り駅へ着いた頃から記憶が歯抜けになっている。そこらへんを順序立てて思い出そうとするも、「あれ、あの時どうしてたっけ?」ということが度々起こった。そうして「家の鍵どうしたっけ?! 定期券は?! 財布……」と大慌てで鞄を漁り、安堵する、ということを繰り返した。
いざ二日酔いを経験してみると、「これは全世界のバグでは?」「こんなことをしていったい何になるというの……」と見えない相手に恨みつらみを言いたくなる。
ビールジョッキ1杯と、日本酒3合が自分の限界のようです。お酒はほどほどに、気を付けます……。
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