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sanaearts
出過ぎた鉛筆
天気予報が大当たりの日だ。予想通りの雨、冷たい空気。
「夜に向かって冷え込む」といったことをテレビで気象予報士の人が言っていた。念のためにと首に巻いたスヌードが電車内だと暑く、頭に「余計な荷物だったかも……」とよぎったけれど杞憂だった。特に帰宅時は、手が痛いほど冷えて、洗面台の蛇口をひねって出たお湯がいつもよりずっと熱く感じた。
ほぼずっと雨が降り続けていた一日。そんな中、仕事で外出もあった。
ある団体の冊子の編集作業を担当していている。その冊子は定期的に発行されるもので、団体に所属するさまざまな人が原稿を寄稿する。その校正も自分の役割に含まれている。その次号に関する打ち合わせだった。
牟田都子さんの著書『文にあたる』に「出過ぎた鉛筆」という言葉が出てくる。
てにをはを整え、説明を補い、文の前後を入れ替えて、誰にとっても読みやすくわかりやすい文章にすることが校正の仕事という気負いがあった。そういう個性を「出過ぎた鉛筆」と呼ぶのだと、あと読みの先輩に教わりました。
まさに自分も、そんな気負いがある状態で冊子の校正に臨んでしまっていた。だから読んだとき、ぎくっとしたと同時に、忘れないように胸に刻みたいと思った。またその気持ちが、はじまった仕事を前にしてより一層大きくなった。
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