PCRの概要とPCRでの検査について
コロナウィルスで情報が錯綜していますので、自分がある程度自信をもって言える範囲の事実について説明します。
PCR…Polymerase Chain Reaction(ポリメレース連鎖反応)
とは、一言でいえば、
いるか、いないかを明らかにする技術です。
この反応をかけることで、採取したものの中にウィルスがいるか、いないかがわかります。
細菌やウィルスなどの眼に見えない物体を相手にする医療において、病気を引き起こしている相手の正体を判定するのは、治療方針を決めるうえで最も重要なことの一つです。
では、全員やればいいじゃないかと思うのが人の情だと思いますので、どこに落とし穴があるか解説したいと思います。
結論だけを先にのべると、時間と意義の二点から、意味がないという結論。
PCRは処理時間が長い
問題点の一つが、PCRは一処理に3時間程度かかるということです。
先ほど、PCRとは
いるかいないかを明らかにする技術
と述べましたが、どういう感じかと言いますと、
「貴方の中にコロナウィルスさんはいますか?」
と尋ねて
『はいそうです(いいえ違います)』
という返事をもらうのに3時間かかる技術だと思ってください。
健康診断の尿検査の1次診断は30秒くらいで終わってしまいますが、
PCRはその反応に3時間かかるんですね。
今回のコロナウィルスでは逆転写という処理が必要なので、1回あたり4時間は取られるでしょう。
PCRは1つの機械の中行いますが、1度に96個のサンプルを処理できます。
1回の反応で4時間ということは、機械にインターバルを与えずにやろうとしても1日に約600個(96*24/4)までしか処理できないことが分かります。
ついでに言えば検体の輸送その他でさらに時間がかかります。
採取後2日で分かればかなり早い方でしょう。
PCRは症状が進行してからでないと検出しにくい件
こちらが、もっと本質的な問題です。
PCRで調べるには検体(患者から採取した物体)が必要です。
検体は喉の奥を綿棒でぐりぐりして採取するんですね。
下図でいうなら、喉の奥の緑色の四角いところあたりをぐりぐりして、そこに付着したモノに対して、上記のPCRで質問をするという流れです
筆者は医者ではないのですが、およそこんなところでしょう。
もし、ウィルスが喉に均等に分布していて、その地点が青い丸で見える目があるとしたら、上図の黒い四角の枠はこんな感じに見えるハズです。
ここで、綿棒でぐりぐりすると
とこんな感じで青い丸が回収され、PCR検査で正体が判明するわけです。
ここで問題なのは、現実ではこんなに均等にウィルスが分布しているはずがないということですね。
感染初期、症状がない時期というのは、もしコロナウィルスがいるとしてもこんな感じで、いない部分が大きいわけです。
一方、感染後期では
こんな感じでウィルスのいる領域が増えますから、感染していればコロナであるといえるし、なければコロナでないといえる蓋然性が上がります
現実にはウィルスが見える目
なんてものはないですから、ウィルスがいるところから採取できるかは運次第、
感染初期に検体をとると、ウィルスがいないところから検体をとることは頻発すると思われます。
感染場所をうまく拾えた人が、症状がないのに陽性の人。
不運にも不一致だった人が、風邪用症状があるのに陰性だった人。
(※もしくは本当にウィルスを持っていない人)という結果になります。
なので、現在やっているPCRの検査は、肺炎の症状が重い人に対してコロナであるのか、ないのかを確定させて、病状のデータを集めることが主目的でしょう。
コロナウィルスの治療法
現在、コロナウィルスそのものに対する特効薬はありません。
肺炎など個別の症状を和らげる対症療法をする以外の道がないため、
コロナウィルスであるかどうかよりも
肺炎の対症療法を出来る病院の余裕があるかどうかが、
人を死なせない治療をする上での肝になります。
報道で明らかなように、今回のコロナウィルスでは
・重症化するケースとしないケース
・無症状だけど陽性のケース
があります。
そして、死亡例や注意喚起からも明らかなように
お年を召されている・もともと疾患持ち
の人ほど致命率が上がるとされています。
コロナ以外の理由でも人は病院に行きますから、多種多様な"弱っている"方がいる病院に、
・意識せずウィルスを保持してしまっている人が検査目的で来院すること
よりも、
・自宅待機してそのまま治癒してもらう
方が弱っている方を感染をさせて死なせてしまうリスクを低く保てる分、人死を減らせるわけです。
また、こうしていれば病院も(検査目的での来院がない分)空いていますから、万が一重症化してもすぐに治療が開始でき、救命率が上がるわけです。
自宅で療養せよというのは怠慢ではないということは声を大にして言いたい。合理的な判断なんです。
終わりに
ということで今回のノートのまとめですが、
・PCRは処理時間が長い。
検査希望者が100万人いたら、すべて終わるのに1666日/機械・日かかります
処理している間に大体の人は完治し、一部の人は重症化する。
それならば、感染を広げないために疑わしい症状が出たら休む。
風邪をひいたらいつでもそうするような社会通念の設立が重要です。
・PCRは菌の数が少ない時に陽性になりにくい
・特効薬がないので、診断したところで治療上のメリットがほぼない
コロナウィルスというモノの広がりかた、致死性などの特性を調べるための、情報を精査するためにPCRで判定しているだけだと思った方が良い。
私目線で気になった点の解説でした。
他にも言いたいことはあるんだけど(特に偽陽性、偽陰性)、
ほかの人が良く指摘しているのと時間問題の方が大きいだろうと思ったので
私は私の気になる点を。
そういうわけで、手洗いをして咳エチケットをして過ごしましょうね。
事実誤認な点等ありましたらコメントください。
余談…PCRについて
PCRの詳細を知りたい方はこれまでの説明でも使ってきた、タカラバイオの説明PDFをご覧ください。
http://www.takara-bio.co.jp/kensa/pdfs/book_1.pdf
余談…値段詳細
自分に馴染みがあるので研究用試薬ではありますが、値段のスケールを把握するのに必要だと思いますので記述。
PCR反応時間、使う酵素を変えれば短くできるのですが、そうする場合コストが跳ね上がりますので検査で用いるのは現実的ではないでしょう。
上段が、処理時間の短縮が出来る酵素
下段が、処理時間が長いが安い酵素の例です
(タカラなのは筆者に馴染みがあるから)
話が煩雑になるのでまずは下段のEmeraldAmp®を見ていきます。
まず、値段については
とこんな感じ。
800回 69000円(1回86円)
今は年度末の大安売りをしているので少し安い値段が提示されてますね
ということで、1回の反応で80円程度、薬品代だけでかかるんですね。
100万人しらべればそれだけで8000万円です
これが上段のGXLの高速プロトコールにすると1検体370円になります。
100万人なら4億円かな。
あと細かい話ですが、
容器自体が1本7円くらいするとか。ほんとに細かい話ですが。
というわけでして、PCRで調べられるほかの検査をすべて無視してコロナに当てても、1機械で600検体/日しか処理できない。あとはどれだけ機械を持っているかという物量戦になります。
PCRの機械は
と200万円以上する装置をたくさん導入してないとだめなんですねぇ。
10台あっても100万人希望していたら半年待ちになるだけですが。
以上が、金銭面からの余裕があれば出来ますよ。でもそれでも希望者多すぎたら何もできないよという話。
面白かったら投げ銭お願いしまーす! 投げられたら投げ返す主義です