卒業、どすこいポーチ
かつて「拷問リュック」と言われていた私の重い荷物。
「これもあったほうがいい、これも…」無ければ無いでなんとかなる、という考え方が出来なかった。化粧ポーチはフル装備なのに、その中で使うものは一つか二つ。なのに、それらを全て持って歩けば安心と思いこんでいた。一体この顔面のどこをそんなに直す必要があったのか……自分が分からない。
荷物が軽いのは正義だ。
どこまでも歩いていけそうな気がする。
重い荷物を持っていると電車やバスに乗ってしまいたくなるし疲労がピークの時にはタクシーに乗ってしまったりと出費がかさむ。
一時期、ミニマリストに憧れて荷物を出来るだけ少なく、と心がけていたことがあった。
財布、ハンカチ、iPhone、ワセリンくらいか。
これに今は、マスクと消毒用のアルコール。
重い荷物に体力を奪われることもなく、
散歩をしたりドングリを拾ったりした。
ビニール袋を一枚持っているとなんとかなるとも思った。
雑誌でよくある、バッグの中身を紹介する特集が大好きだ。「へ〜この人のバッグの中身はこれなんだ!お洒落〜!」と色々感じながら読む。そして真似したくなる。
エマージェンシーポーチというのも、雑誌で知った気がする。出先で地震などの天災に見舞われた時に一時凌ぎできる様なアイテムを入れておくポーチだ。水、シリアルやカロリーメイト、飴。ホイッスル、防寒用のシルバーのシート。スマホのモバイルバッテリー。手拭い、方位磁石、ビニール袋など。
日本ではコンビニが沢山あるので、出先で必要なものは買えばいいやと思いがちだが、万が一の時、お金を持っていても買えない時がある。
東日本大震災の時、手元に現金があって良かったと、心から思ったものだ。
スーパーでは、入り口にカートを並べて食べ物を販売してくれていて、1人5個まで買うことができた。レジも動かないから、電卓で計算して現金払いだ。今、PayPayやnanacoで支払いを済ませているけど停電していないから出来ることなんだよなと思う。少しの小銭と紙幣を忍ばせておくのが良いなと改めて感じた。
自分で自分を守ったり、楽しませたりする為の手荷物。「なんでこんなの持ち歩いてるんだろう」と笑ってしまうものも入っていたり。
天候が違う山の上などは特に、防寒着とインスタント味噌汁やナッツやチョコレートなど持っていった方が楽しめる。
何でも手に入る時代になったからこそ、
少し考えを改めてエマージェンシーポーチよろしくお守りのようなものを持って歩きたいと思う。結局のところ、私の手荷物はなかなか小さくはならないのだけれど、安心料と思えばいいか、と誤魔化したりしている。
大好きなバッグに色々詰めて、毎日出かけていく。あの人のバッグの中身はどんなだろうと、たまに想像をしながら。