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Dear… 第二話「その女性」
それから、その女性は毎日店に来るようになった。
そして毎回決まって、レシートの裏に一言書いていく。
「お疲れ様」
「頑張ってね」
「今日もありがとう」
最初は気味が悪かったが、段々とそれが毎日の楽しみとなっていった。
美波)最近、顔が明るくなったわね。
○○)え、そうですか?
美波)うん、なんだか、ようやく生きてるって感じ笑
○○)なんですかそれ笑
美波)あの人のおかげかな?
○○)そうなん、ですかね。まぁ僕に優しくしてくれるのは家族と梅澤さんとあの人くらいですから。
美波)私も入れてくれてるんだ笑
○○)それはそうですよ笑あ、いらっしゃいませ〜。
あの人が来た。今日はなにを書いてくれるのだろう。
……。
○○)500円になります。…ちょうどお預かりします、ありがとうございました。
??)本当に毎日いるんですね笑
○○)え?あ、はい…
??)他にお仕事はなにされてるんですか?
○○)実は、ここ以外なにもやってなくて…
??)そうなんだ…じゃあこの時間帯はいつもここにいるの?
○○)そうですね。
??)ふ〜ん、わかった。ありがと、頑張ってね!
○○)ありがとうございます。またどうぞ〜!
初めてあの人と話せた、しかもあっちから。
美波)よかったじゃん、話せて。
○○)別に嬉しくなんてないですよ。
美波)素直になればいいのに笑
そうだ、別に嬉しくなんてない。
ただ
少しだけ、これからのバイトが楽しくなっただけだ。
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○○)ご馳走様でした。
真夏)○○くん、最近いいことあった?
○○)え?いや、特には…
真夏)本当に?なんだか、最近明るくなった気がするよ。
○○)そう、ですか…まぁ、あったことにはありましたね。
真夏)どんなこと?もしかして好きな人ができたとか?!
○○)そんなんじゃないですよ、バイト先に新しい話し相手ができただけです。
真夏)なんだ、そんなことか〜、でもよかったじゃない。
○○)はい。じゃあ、行ってきます。
真夏)行ってらっしゃい!気をつけてね。…ふふっ。
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○○ちち)どうしたんだ?なんだか嬉しそうじゃないか。
真夏)○○くんが楽しそうにしてると、私も嬉しくなるの。
○○ちち)そうだな。○○くんは、俺たちの家族だからな。
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○○)いらっしゃいま、って梅澤さんですか。
美波)一応お客さまなんですけど〜?笑
○○)お仕事お疲れ様です。
美波)ありがと。…あの人はまだ来てないのね。
○○)そうですね。
美波)ふ〜ん、わかった。
○○)もしかして、また揶揄ってるんですか?
美波)だって、あの○○くんがあんなに嬉しそうにしてる顔、見たことないもの。これは、恋だね!
○○)違いますよ。あの人と話してると心が落ち着く、それだけです。
美波)ふ〜ん笑ま、そういうことにしておくよ。あ、来た来た!
○○)え?あ、いらっしゃいませ〜!
??)また来ちゃった笑
○○)いつもありがとうございます。
梅澤さんがニヤニヤしながらこっちを見ている。
??)いつもここにいて飽きないの?
○○)まぁ、仕事なので笑
??)そっか。
○○)えっと、あなたはお仕事なにされてるんですか?
??)え?あ〜、もしかしてわからない?
○○)はい…有名人の方なんですか?
??)え〜っと、あった!
そう言うと女性は一枚の雑誌を手に取った。
??)この人知ってる?
○○)齋藤飛鳥?わかりません。
??)そ、そっか…一応、私がその齋藤飛鳥なんだけど…
そう言って深く被った帽子とマスクを外した。
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○○)あ、本当だ。そんな有名な方だったんですね!すみません気づかなくて。
美波)え、あんた気づいてなかったの?!
○○)はい、あんまりテレビとか見ないので。
美波)あんたね〜…あ、初めまして〜、いつも見てます!
飛鳥)ありがとうございます〜!
なるほど、どうりでいつも帽子を深く被っていたのか。
しかし、こんな有名な人が来ることなんてあるんだ。
てっきり有名人はコンビニなんて来ないと思っていた。
飛鳥)お〜い、聞いてるか〜?
○○)え、あ、すいません。
飛鳥)じゃあ私はもう行くから、頑張ってね〜。
○○)はい、ありがとうございました〜!
美波)はぁ〜可愛い!あの齋藤飛鳥さんをまじまじと見れる日が来るなんて…!
○○)良かったですね。
美波)なによその反応〜!あんたはどう思ったの?
○○)え?
美波)だから、飛鳥さんのこと、どう思ったの?
○○)どう思ったって言われても…まぁ、綺麗な人なんじゃないんですかね。
美波)うっす!何それ…ほんと、あんたって感情ないわよね〜…
○○)そんなこと言われても…
飛鳥さん、か…また少しあの人のことが知れたのかな。
To be continued……