振り返れば…
一度過ぎた時は巻き戻せない。
起きてしまったことをやり直すことはできない。
だから人は後悔をする。
あの時こうしていれば、あの時こうしなければ。
思ったところで何も変えられない。
どれだけ後悔をしても、時計の針は無情に進み続ける。
でも、もし時を巻き戻せることができたら、やり直せるとしたら
あなたはどうしますか?
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○○)真夏…なんでだよ…
俺の彼女は車に轢かれて亡くなった。俺の目の前で、俺が少し手を離したその瞬間に。
○○)俺が、俺が手を離さなければ…
そうやっていくら後悔をしても、真夏は帰ってこない。俺が、真夏を殺したんだ。
○○)なんでだよ、なんでこうなるんだよ!!お願いだから戻ってくれよ!!
戻ってくれ、そう願うとおれは急な眠気に襲われた。
○○)な、んで…
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○○)んん…はっ、真夏!!…は?
目が覚めた俺は自分の部屋にいた。いや、何かがおかしい。
このポスター、俺が高校生の時の…
部屋には高校生の頃好きだった野球選手のポスターが貼ってあった。他にも制服やベッド、何もかもが高校生の頃と同じ部屋になっていた。
○○)何が起きてるんだ…
「○○〜、入るよ〜?」
ガチャッ!🚪
○○)母さん!
美波)え、何急に?いつママ呼び卒業したの?
○○)え、だって、母さんは母さんだろ?
美波)はぁ…寝ぼけてるなら早く顔洗ってきなさい!
バタンッ!🚪
○○)なんだよ…それより真夏が!…は?!
ベッドから降りて鏡の前に立った時、俺は思わず叫んだ。なぜなら、俺は高校生の頃の見た目になっていたからだ。
○○)どうなってんだよ?!髭もねえし、もしかして…うわっ!!
この時は下の毛も剃っていた。なんとも恥ずかしい。
○○)最悪だ…つまり、俺は11年前に戻った、ってことか?
ありえない、あり得るはずがない。でも目の前に広がる景色は、何もかもあの時と同じだ。
○○)なら、真夏は…
美波)○○〜?真夏ちゃんきてるわよ〜?
○○)真夏、真夏!!
そうだ、11年前に戻っているなら、真夏も生きているんだ!
ガチャッ!🚪
○○)真夏!!
真夏)わっ?!びっくりした〜…どうしたのそんなに慌てて?あ、そんなに私に会いたかった?💕
○○)よかった、よかった…グスッ
真夏)え、あ、そこまで?!ちょ、どうしよう…
○○)会いたかった…ギュッ!
俺は泣きながら真夏を抱きしめた。
真夏)え…///、ど、どうしたの急に…///
○○)あ、そっか…ごめん、なんでもない。
そうだ、この頃はまだ付き合ってすらなかった。
いきなりハグするなんて馬鹿か。
真夏)う、うん…それより、早く学校行こ?
○○)え、あぁ、そうだな笑、ちょっと準備してくる!
真夏)うん!
真夏とまた過ごせる。今度はもう、絶対に手を離さない。真夏を死なせない。
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11年後
真夏)見て、一番星だよ!
○○)本当だ、綺麗だな。
真夏)ね、あ、そうだ!あっちに良いところがあるんだ!見に行こうよ!
○○)あ、ちょっと待って!ギュッ!
俺は真夏を手を掴んだ。絶対に離さないように強く。
真夏)痛っ!ちょっと…きゃっ!
真夏のすぐそばを車が通り過ぎた。今度こそ、真夏を救えた。
○○)ごめん、いきなり走り出すから思わず…
真夏)ううん、大丈夫。ありがと!
○○)うん。
よかった、真夏は助かった…
真夏)ほら、早く行こ!
○○)あ、ちょっと待って!
キキィィィィィ、バンッ!!
○○)は?…おい、なんでだよ…
真夏は轢かれた。まただ、また轢かれたんだ。
○○)せっかく守ったのに、なんでだよ、なんでなんだよ!!結局こうなるのかよ!!
また俺が手を離したから、俺が安心しきってしまったから…
○○)戻れ、戻ってくれよ!!また!!!
そう言うとあの時のようにまた眠気に襲われた。
○○)ま、ただ…
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○○)ん…はっ!
起きると自分の部屋にいた。また戻ったようだ。
○○)よかった…ん、でも、何か違うぞ?
今度は野球選手のポスターではなく、バンドのポスターへと変わっていた。
○○)このバンド、大学の頃好きだった…じゃあ、もしかして…
鏡を見ると大学の頃の俺が写っていた。
○○)やっぱり…今度は大学時代か。
どうやら、今度は高校生ではなく大学生の頃に戻ったらしい。
○○)短くなって行ってるのか…
真夏と過ごす時間がどんどん短くなっていっているということだ。
○○)絶対に真夏の手は離しちゃだめだ。ずっと手を繋いでいれば大丈夫なはず…
真夏)私の手がどうしたの?
○○)うわっ?!ゴンッ!、いった〜…
驚いて壁に思い切り頭をぶつけた。
真夏)ちょ、大丈夫?!もう〜ドジなんだから…
○○)いてて…真夏、いたのかよ…。
真夏)何度も呼んだのに全然来てくれないからだもん!
あ、可愛い。あ、痛い…
○○)今日何限からだっけ?
真夏)もう〜、頭ぶつけてお馬鹿さんになっちゃったの?今日は2限から!
○○)お馬鹿さんって…そっか、じゃあそれまで寝てるわ。
真夏)じゃあ私も!
○○)お、おい!狭いって!
真夏は俺のベッドに入ってきた。
真夏)くっついたら狭くないでしょ?💕
○○)あのなぁ〜…
懐かしいな、これ。真夏はいつも早く家に来て、俺は眠いから二度寝しようとして…大学の時はいつもそんなやりとりしてたっけ。そんなことを思っていると何故だか泣けてきた。
真夏)え、どうしたの?!
○○)いや、なんか懐かしくなっちゃって…
真夏)もう…ギュ~!そんなに私のこと好きなの?
○○)うん、大好き…
真夏)嬉しい…私も大好きだよ!
幸せだ。この幸せをずっと続けられるように、今度こそは…
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8年後
真夏)見て、一番星だよ!
○○)本当だ、綺麗だな。
真夏)ね、あ、そうだ!あっちに良いところがあるんだ!見に行こうよ!
○○)あ、ちょっと待って!ギュッ!
俺は真夏を手を掴んだ。絶対に離さないように強く。
真夏)痛っ!ちょっと…きゃっ!
真夏のすぐそばを車が通り過ぎた。まずは一回。
○○)ごめん、いきなり走り出すから思わず…
真夏)ううん、大丈夫。ありがと!
○○)うん。
よかった、真夏は助かった…
真夏)ほら、早く行こ!
○○)あ、ちょっと待って!ギュッ!
真夏)痛っ!さっきから何…きゃっ!
よし、救えた!今度こそ真夏を救えたぞ!!
○○)よっしゃ〜!
真夏)危なかった…ありがと、○○!
よし、これで、これで真夏と…
"危ないぞ!!"
○○)え?
ガシャァァァァァン!!!!
上から鉄骨が降ってきて、目の前にいた真夏は消えた。
○○)あれ、真夏…?どこだ、どこに…う、うわぁぁぁぁ!!!
下を向くと、血だらけになった鉄骨があった。
○○)真夏!!おい真夏!!!くそっ、なんだよ!なんなんだよ!!俺が何したってんだよ!!!…そうだ、戻れ!戻ってくれ!!
そう願うと再び眠気が襲ってきた。
○○)よっ、しゃ…
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それから俺は何回も何回もやり直した。
それでも、真夏を救うことはできなかった。
何をしても必ず事故は起こる。
気づけば、事故が起きる日から2ヶ月前までしか戻れなくなってしまった。
○○)どうすれば、どうすれば真夏を…
真夏)ん…あれ、もう起きたの…?
○○)あ、真夏…おはよう。
真夏)ん、おはよう○○。
目の前で眠そうに目を擦る真夏が愛おしい。
こんなにも愛おしいのに、2ヶ月後には事故が…。その事実が、俺を苦しめる。
○○)なぁ真夏。もし俺が明日死ぬとしたら、どうする?
気づけばそんな言葉が漏れていた。
真夏)え、どうしたの急に?ん〜、私はいっぱい思い出を作るかな?
○○)思い出を?
真夏)うん。多分、何をしても○○が亡くなっちゃうことは絶対なんでしょ?なら、せめて最期に幸せだったって言えるように、いっぱい思い出を作るかな。
○○)そっか…
真夏)でもわかんない。もし本当にそうなったら、どうなるんだろうね…。
○○)真夏、俺のこと好き?
真夏)本当にどうしたの今日?笑、うん、大好きだよ。
○○)そっか。俺も、真夏のことが大好きだよ。
時間は残酷だ。どれだけ戻りたくても戻れない。
もし戻れたとしても、必ず起きたことは変えられない。
だからこそ、生きていくしかない。
どんなことがあっても、強く、強く生きるしかない。
時間は残酷だ。でも、時間は傷を癒してくれる。
いつかはまた、2人で笑える時が来る。
それがいつになるかはわからない。
来世、来来世、もっと先かもしれない。それでも、俺たちはきっとまた会える。
また愛しあえる。
だから、これは別れじゃない。
真夏)ねえ、わがまま、言ってもいい?
○○)うん、いいよ。
真夏)じゃあ、目を瞑って?
○○)え、うん…
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真夏)開けてもいいよ?
○○)ん…え、これって…。
真夏)私たちが初めて会った時だね。覚えてる?
○○)なんで、なんで…
真夏)実は私も、戻れるの。しかも、好きな時に。
○○)そう、だったんだ…
真夏)ふふっ、この時はびっくりしたなぁ〜。いきなり私のこと生徒会長に推薦するんだもん笑
○○)いや、なんか、やりたそうにしてたから…
真夏)でも、おかげで生徒会長にもなれたし、○○にも会えたね。
○○)そうだな。あ、懐かしい!ほら、“制服のマネキン"!
真夏)あ、本当だ!2人で落書きしたやつ!!
○○)結局2人とも怒られたよね笑
真夏)うん。笑
次に戻ったのは俺が告白した時。
○○)うわ、恥ずかしい…///
真夏)え〜ほんとに?私、すっごく嬉しかったんだよ?え〜っとなんだっけ…「1度目のキスは恋の終わり、"2度目のキスから"は愛の始まり」だっけ?笑
○○)うわ〜最悪だ…
真夏)え〜私はいいと思うけど…チュッ!
○○)え?
真夏)これ、何度目にキスだっけ?笑
○○)わかんない笑、でも、チュッ!
真夏)ん…///
○○)キスは何度したってもいいでしょ?
真夏)またカッコつけちゃって…///
そして、俺と真夏は何回も戻った。2人の11年分の思い出を、ひとつひとつ集めていった。そして、次に来たのは俺たちが結婚をした時。
真夏)このプロポーズは本当に嬉しかったなぁ〜。
○○)プロポーズするなら絶対に真夏の誕生日って決めてたんだ。
真夏)最高の誕生日プレゼントもらっちゃった笑、この時は、"ひと夏の長さより"も、何倍も長く感じたな〜。
○○)帰りもわざと時間かけたよね笑
真夏)確かに笑、でも良く言うじゃん?"帰り道は遠回りしたくなる"って。
○○)うん。ずっとこの夏は忘れないな…
そして、11年分の思い出旅行が終わった。
真夏)楽しかったでしょ?
○○)うん、懐かしくて、楽しかった。
真夏)私も、最期に思い出作れて良かった。
○○)なんで、自分が亡くなるって、気づいたの?
真夏)私は時間を戻れるだけじゃなくて、未来を見ることもできるの。でも、どれだけ繰り返しても、私と○○がおじいちゃんとかおばあちゃんになるまで一緒にいる未来は見えなかった…。
○○)じゃあやっぱり、無理なんだね…
真夏)でも、私は悲しいことじゃないと思う。
○○)え?
真夏)○○と11年間一緒にいて気づいたの。私たちはずっと一緒だって。きっと前世も、来世も、いつまでも○○とは一緒にいれるんだって。そういう運命なんだって。
○○)ずっと一緒…
真夏)うん、だから、今は少しだけサヨナラするだけ。またきっと、絶対にどこかで会えるから。私は、○○と過ごせて本当に幸せだった。今までありがとう。
○○)真夏…俺も、真夏と出会えて本当に良かった。ありがとう。
そうして俺たちは"最後のタイトハグ"をした。きっといつか、また会える。だから、これは別れなんかじゃない。これは、"僕たちのサヨナラ"だ。
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数ヶ月後
○○)ここ、か。
俺はとある場所に訪れていた。
○○)真夏、ありがとう。
俺は一枚の手紙を出した。
「真夏へ
いつでも、どんな時でも笑顔なあなたが大好きでした。辛い時も、悲しい時も、いつもあなたの笑顔に励まされました。
大変なこともあったでしょう。みんなを引っ張っていくことに不安を覚えた日もあったでしょう。それでも、あなたは笑顔であなたらしく引っ張ってくれました。
これからは、彼女たちが引っ張っていくのを、優しく見守ってあげてください。彼女たちは、きっと、これからもずっと成長し続けます。あなたが、引っ張ってくれたから。
今までも、これからもずっとずっと大好きです。またいつか会えるその日まで、サヨナラ。」
fin.