Dear… 第七話「過大な過小評価」
「齋藤様ですね、お待ちしておりました。ご案内します。」
隣を歩く飛鳥さんは、全く緊張する様子もなく振る舞っている。
それに比べて僕は…
○○)飛鳥さん、本当に大丈夫ですか?
飛鳥)大丈夫だって。逆に怪しまれるから普通にしてて。
○○)は、はい…
不安と緊張で挙動不審だ。
こんな高そうなレストランなんて来たことないし、なにより周りの目が怖い。
「どうぞこちらへ。」
飛鳥)ありがとうございます。
執事のような店員さんは、深くお辞儀をして去っていった。
飛鳥)ねぇ、緊張しすぎ笑
○○)そりゃ緊張もしますよこんなとこ…
飛鳥)そっちから誘ってきたのに笑
そう、僕と飛鳥さんは今デートをしている。
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「デートに行きませんか?」
電話をかけた日。
思い切って伝えてみたこと。
飛鳥)……。
やっぱり、だめか…
飛鳥)いいよ。
○○)え?
飛鳥)やっと誘ってくれたか笑、ずっと待ってたんだぞ?
○○)あ、え?で、でも、文春がどうたらこうたらって…
飛鳥)そりゃ確かにめんどくさいけどさ、バレたらバレたでいいじゃん。素直に認めちゃえばさ。
○○)えぇ?!
飛鳥)だって別に私恋愛禁止とかされてるわけじゃないもん。私が何しようと私の勝手でしょ?
○○)そうかもしれませんけど…
飛鳥)誘った側がそんな否定的でどうすんのさ笑、大丈夫よ、ちゃんと安全な場所知ってるから。
それに、、、私だってデート…行きたかったからさ。
○○)飛鳥さん…
飛鳥)な、なんか恥ずかしいからもう切るね!じゃっ!
ピッ!
○○)飛鳥さんとデート、か…ふふ、楽しみ。
真夏)ふふっ…。
○○)え、起きてる?!
真夏)すぅ…すぅ…
○○)たまたまか、びっくりした…
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○○)あの、メニューってどこに…
飛鳥)え、そんなのないよ?
○○)え?
飛鳥)ここはコースだから、最初から何が出るか決まってるの。
○○)そ、そんなのがあるんだ…
飛鳥)安心して。こう見えても私、食にはうるさいから笑
いや、そこじゃないんですよ。
「お待たせしました。」
会話が途切れたタイミングで上手いこと入ってきた執事、じゃなくて店員さん。
運ばれてきたのはいかにも高そうなワイン。
飛鳥)お酒、飲めるでしょ?
○○)いや、あんまり飲んだことないです。
飛鳥)え〜?意外だね。
○○)そうですか?僕そんなに飲んでそうに見えます?
飛鳥)うん。未成年飲酒してましたって顔してる。
○○)してません!ちゃんと20歳になってから飲みましたよ!
弱くてビール一杯で倒れたけど。
飛鳥)それじゃこのお酒飲んだら他の飲めなくなるかもね笑、んじゃ。
飛鳥、○○)乾杯。
恐る恐る口をつけてみる。
○○)…ゴクッ。
飛鳥)ゴクゴク…どう?
○○)うっ、ちょっと苦いかも。
飛鳥)あはは、まだ早かったか笑
揶揄うように笑う飛鳥さん。
子供っぽい笑顔にグラスのワインが映える。
口の中で甘い香りが広がった。
その後もまるで見たことのない料理が運ばれてきた。
料理なのか芸術作品なのか分からないそれを、飛鳥さんは当たり前のように口に運ぶ。
飛鳥)モグモグ…
一口が小さいな。可愛い…
飛鳥)食べないの?
○○)あ、いただきます…
飛鳥)どう?
覗き込むように僕の顔を見る飛鳥さん。
○○)ん〜、なんか不思議な味ですね笑
飛鳥)ふふ、もっと大人になればこの味がわかるよ。
○○)一応もう大人なんですけど…笑
飛鳥)ふふっ。
口に手を当て、上品に微笑んだ。
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○○)ご馳走様でした。
飛鳥)努力だけは認めてあげる、笑
食べ終わった後、財布を出してお金を払う準備をしたが渡された伝票を見て思わず声が出てしまった。
○○)次は僕が払います!
飛鳥)別に良いよ笑、私の方がお金あるんだし。
僕が誘ったデートなのに、結果的に飛鳥さんにリードされてしまった。
これは梅澤さんに怒られるなぁ…
飛鳥)そんな肩落とさないでよ。
○○)だって、ずっと飛鳥さんに色々やってもらってばかりで…僕飛鳥さんにちゃんと返せてるのかなって。
出会った時から飛鳥さんに頼ってばかり。
僕は飛鳥さんになにも返すことができていない。
そんな自分が嫌になる。
飛鳥)…グイッ!
○○)え、ちょっと!
飛鳥さんは僕の腕を引っ張って歩き出した。
○○)飛鳥さん、どこ行くんですか!
飛鳥)いいから、ついてこい。
その声には、静かな怒りを感じた。
言葉を交わずにしばらく歩いた。
公園のような場所に着いたところで飛鳥さんはキョロキョロと周りを見てからベンチに座った。
飛鳥)座って。
○○)はい…
なにをされるんだろう…
ギュッ!
○○)え…?
飛鳥)今から喋るのは全部独り言だから。
飛鳥さんは横から僕を抱きしめて、腕に顔を埋めた。
飛鳥)これが私の気持ち。私は○○のことが大好き。返すとかそんなの必要ない、ただ私のそばにいてくれればそれで良い。だからこれ以上、自分を責めないで。
だんだんと抱きしめる力が強くなっていった。
それほどまでに、飛鳥さんは僕を大事に思ってくれているんだ。
きっと飛鳥さんは、僕が思ってる何倍も僕のことが好きなんだ。
○○)飛鳥さん…僕も大好きです。
その気持ちに応えるように、僕も飛鳥さんを強く抱きしめた。
ぼんやりと光る街灯の下、一つに重なった影がコンクリート色の地面に映っていた。
??)ふ〜ん、いいじゃん笑、カシャッ!📸
To be continued……
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