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この時期に推しを支えるためにできること。最も現実的な回答。

こんな状況でも春が来るのは2011年のあの頃と同じで、自分が高校を卒業し、浪人生活が確定した翌日に東日本が揺れたのを思い出す。

はじめまして、東京大学法科大学院に在籍しながらXXCLUBという漫才コンビをしたり、「コンテンツ全部見東大生」というYouTubeチャンネルでドラマや映画の解説をしたりしている者です。  


技術的にはとっくにほとんど全ての人が自宅にいながら、もしくは人混みを避けながら生活と仕事をできるはずなのに、結局それをクリアしていたのは一部の業界の一部の器用な人たちに限られていた、ということが露呈した数ヶ月であったように思う。

「生で人と顔を合わせる現場を収入の軸にすること」を私が身近なリスクと感じたのは、2018年の夏に大病を患った時だった。その後もすぐに心身が思うように動くことはなく、「まずいなー」と思いながら徐々に活動の場をインターネットに移した。(皆さんが目に見えるYouTubeなどでの活動もだけど、見えないところでも沢山裏方の仕事をやっているのです)結果的に今回のコロナショックでは、私の食い扶持となっていたインターネットの方は猛烈な繁忙期に突入し、収入にはなっていない舞台やイベントなどの表現活動は軒並み休業状態となった。  

私の周りには沢山のエンタメ業界関係者がいる。舞台だけで地道にやっている人もいるし、そこから突き抜けて全国区の人気者になる人もいる。出演者も裏方もそれは同じだ。自分みたいな若造に、業界歴が長いスタッフさんや尊敬する芸人さんが「舞台だけでやっていくことの限界」「これからの活動の指針」についてポロっと相談して下さることも多くあった。その度に自分は最上級に恐縮しながら「宣伝のためにも、いざという時のためにも、ネットの回路を太くしておくべきです」と生意気だとわかりながらお伝えした。具体的な作戦をその場で必ず5個は出すようにもしてきた。そしてその会話はいつも「なるほどなー。でもいろいろ難しいよなー。でも参考になったわ、ありがとう」という判で押したようなコメントで締められた。こういう会話をした先輩方の中で、実際にYouTube開設などの行動に移ってくれた人は、私が把握する限りでは1割以下しかいない。(私のプレゼン技術の問題だったらごめんなさい。てか多分そう。あの時もっと熱く言えばよかった。本当にごめんなさい)  

先述の通り、自分が活動の場を緩やかに移行できたのは時代感覚とは関係ない。でも、「既存の技術が使えるのに、移行するのが億劫なのでそのままにしておく」ことのリスクを考えないとまずいのは確かだ。とりあえず自粛して、なんとなくOKになったら喜んでまた舞台だけで生活する、というマインドの人も自分の身近な範囲には多いのだけど「まずいなー」と強く感じる。インターネットがない時代ならそれで良かったけど、今は同じ実力値ならインターネットを研究して使いこなした人が1000倍の差をつけて勝つからだ。  

ドラスティックな変化が起こり、大不況になる。産業まるごと、会社まるごと潰れるリスクが取り沙汰されてるんだから、生活に押し潰され数え切れない表現者が辞めるだろう。とりあえず我々にできることはなんだろう?  

もし推している芸人や団体が直接課金の窓口を設けているなら、とりあえず意思表示として、公演中止がなかったら払っていたのと同じくらいの額を課金しよう。公演が再開した時に自分自身が動けなくなるような額は課金してはいけない。ファンが「推し」を支える際に最も重要なのは「継続すること」であり、いっとき無理してしまって、のちのち継続的に支えられなくなるのはあまり素敵なファンではない。では、それ以上は私たちは何もできないのか?  

そんなことはない。あなたが推しているのがすぐにはバズらなそうな(好きな言葉ではないけど便宜的に使います)表現者だった場合、その動画の再生数を回しまくったりしても未来にはほとんど繋がらない(厳しいけれど、今までうんともすんとも言わなかった表現をネットに置いただけで環境が激変することはない。それはネットを使うことが「秘策」として奏功し得た古き良き時代の話‥)。私が一番良いと思うのは「推しの業界の直接の先輩でマネタイズ・パッケージ化ができてる人のコンテンツを視聴・拡散すること」だ。「推し」と「先輩」に接点があったり芸風に共通項があるとなお良い。もちろんあなたがその先輩の芸も好きなことは大前提。

例えばあなたの「推し」がほとんどメディアにも出たことない若手の芸人やアイドルだったとする。「推し」が舞台がなくなったことを理由にこの3月に急にYouTubeチャンネルを作ったとする。登録者が1000人超えたならスーパーチャットすべきなのだけど、それすらできない場合もある。そんな時、その芸人やアイドルの交友関係や所属組織や芸風的影響関係を辿ると、必ず「まあまあうまくいってるYouTubeチャンネル」が見つかる。「まあまあうまくいってる」の基準は「①平均再生数と登録者数を見る限りお小遣い程度にはなってそう②お笑いマニアやアイドルマニアじゃない友達にいきなり見せても面白がってもらえる可能性がある」の二つ。ここは厳しく選ぼう。ここを妥協すると意味がない。  

そして、
①そのチャンネルを観たり
②その動画に「〇〇(推し)のファンです!〇〇のブログから来ました!」とコメントしたり
③知人との会話の中でそのチャンネルを話題にしたり
④もしあなたがSNS上で影響力があるなら、そのチャンネルのキャッチーな動画を拡散する  

などやれることはいくらでもある。
ここでのポイントは「推し」そのものを直接支えるのは難しくても「推しの先輩」を支える方法はいくらでもあったりするということだ。しかも今挙げた①〜④は全て無料でできる。  

その先輩が伸びれば「推し」を引き上げてくれる可能性がある。これはあくまで「効率的な応援」という話で、推しを支えるために好きでもなんでもない先輩を推すのは本末転倒だし、「応援というのはとにかく熱量だ!」という人は多少効率悪くても、まだマネタイズもパッケージ化もできてないチャンネルを熱烈に推すのも全然ありだと思う。(実際、伸びてない動画にコメントが大量についてると気になってちょっと調べてしまったりする)ただ、勘違いしてはいけないのは「推し」を支えることは今の時期、「推し」が帰属する業界を、表現者の界隈全体を支えることと両立しないといけないということだ。


これはお笑いやアイドル以外のエンタメにも当てはまる理屈。自分はお笑い業界とテレビとYoutubeの業界を少〜し知っているだけの青二才なので、もし違ったらごめんなさい。推している俳優さんの演劇公演が中止になった時にできることは物販をオンラインで買うとか過去の出演作品を配信で観るとかくらいな気もするけど、例えばNetflixで、推し俳優と仲の良い売れ線の俳優さんの出ている過去作品を改めて観てみるとかもできる。日本ではそんなに観られていないので、日本向け企画はNetflix内で後回しにされやすいと聞くけれど、Netflixで日本人が映画をよく観ているとなれば、推しの俳優がいる事務所にゆくゆく落ちてくるお金の量も大きく変わってくるかもしれない。


つまるところ私が言いたいのは、我々ファンが推しにできることは大河の一滴、桶屋にとっての風に過ぎないと自覚した上で、自分がファンとして消耗せず、業界の若手の界隈を盛り上げるような、俯瞰的な支え方ができたら現状のベスト、ということ。未曾有の危機の中で、きっと辞める推しは辞める。それは個々の表現者のプライベートな事情もあるので考えてもキリがない。しかし、もしあなたの最愛の推しが引退しても、そのジャンルと若手を育成する風土自体が生き延びれば、いつかきっと「推し」とどこか似た雰囲気、佇まい、芸風の新人が現れ、あなたの新たな「推し」になるだろう。


※エンタメ業界のインサイダーでありかついろんな表現者のファンとして思うことをまとめてみた1つの意見です。

※こんなところに投げ銭するくらいなら公演が中止になって生活苦になりそうな推しに投げ銭して下さい!考え方に賛同してくれたなら記事の拡散は助かります!

文章を書くと肩が凝る。肩が凝ると血流が遅れる。血流が遅れると脳が遅れる。脳が遅れると文字も遅れる。そんな時に、整体かサウナに行ければ、全てが加速する。