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ストリートライダー達へ "Urban Wild" -野性の証明-
以前、OUT RIDER という雑誌があった
いま巷じゃ、アウトドアが流行りだ
お手軽な自然、自己主張の野性
市街地を走り回るピカピカの4駆
腑(ふ)に落ちないが、勝手にすればいい
ただ、今まで静かだった波打ち際を
宴会場兼ごみ捨て場に変えるのだけは、勘弁だ。
皆、口を揃え「自然を感じたい」と語る、
“壊したい”の間違いだろう
込み合う野営地に、自慢のアウトドアグッズを並べ
家電製品をこれでもかと持ち込み
量販店で仕入れた薪に、着火剤を仕込んでくべる
何がしたい? 自己満足か? 真似事か?
分かっている、大きなお世話だ
利便と空調の中で生かされてきた
それは恥ずかしいことじゃない。
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ただ、それでもどうしても、自然を味わいたいのなら
自分の肌で感じたいと思い立ったのなら
簡単なことだ、「バイクに乗ればいい」
ナナハンでも原付でも構わないさ
剥き出しのバイクに跨ればいい
スロットルを開けた途端、走りだしたその瞬間から
風になれる、……というのは真っ赤な嘘で、
“容赦ない自然の驚異に晒される”。
陽射しに焼かれ、北風に震え、
雨に叩かれ、砂塵にまみれ、
やがて、大抵の人はそれだけで
己の弱さと浅はかさを悟り、後悔する
さらに、転倒という危険を前に
曝け出している肉体の、脆(もろ)さを思い知る
所詮、街中でしか暮らしていけない、 弱者の自分に初めて気づく。
リスク無き野性など、存在しない
自然の中に身を置いてなお、快適さなど追求するな
自然とのふれあいに、大げさな道具や“うんちく”は必要ない
かつての OUT RIDER 達は、こう言うだろう
本当の野性とは、
ただ自然を愛すること
そこからしか始まらない