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卿卿日常〜その哀哀日常のすべて Part3

ただ一人だけ、ただ一人だけ。

6少主、尹崢の独立を祝う邸の開府パーティーは
嫡長主尹嵩の顔色を窺い誰も来ず
日はとっぷり暮れ料理は冷たくなりと絶望感が漂ったころ
次から次へと集結
その中にはあの元祖ホラ吹き女もいた

ここは本当に涙涙の感動シーンで私も涙を拭ったものだったーーー

私が泣いたのは感動したからではない
絶望したからだ

花火を眺め
家族である彼らは和気藹々とパーティーを楽しみ
お互いを慈しみ、共感し合い慰め合っている

それなのに
私の愛する暁晨演ずる尹嵩はーーー

"嫡長主たる自分が行かないことで開府パーティーを失敗させ
いい気になってる弟の鼻を明かしてやる"
という狡くてしようもない企みがおじゃんになる片棒を担ぎ

よくも私の顔を潰してくれたなーーー

花神とやらに嘘八百を唱えて自分の目を盗み
剰え

"妾はただ親友と喋りに行ってただけです"
などとふざけた物言い

"あのガキとは二度と会うなと何度言わせる気だ
「他の意図はない」だと⁈

自分の夫が参加をやめたパーティーになぜ妻だけが参加する
ふざけてんのか

要するにお前は私の言うことに反抗するばかりでなく
あっち側なんだな?
私を慕っているなど嘘っぱちだろ

張暁晨が頬を掌で叩くとき
それはーーー

それは怒りをギリギリまでガマンして
辛うじて理性を保ち
相手にもそれを判らせようとするとき
このときの念弟は心酔するクールでイカした若頭の見たことがない豹変ぶりにそのヤバさを察して直様謝ったためそれ以上(殴り倒されたのちボコボコに蹴られた)の難は逃れたが

この女はこの期に及んでも認めようとしなかったため

"コロス"ことに

"女どものくだらんお喋りのために私の苦しい立場を更に追い込むようなことを
今あの6弟を抑え込まねばならんのだ
それを…!"

"お前は私の女だ
私がいるからこそのうのうと暮らせるのだ
逆らうのなら養う義理も価値もない
私の如何にお前も全て従う
それが妻というものだ!"


ーーー特に間違ってはいないと思ってしまうのは
私が昭和の女で
その点も女の義務の一つだと思うからだろうか
友情のために夫を蔑ろにするなら
なぜ結婚などしたのか
これである
その点『花と将軍』は素晴らしかった
真の理想の夫婦の有り様を見事に描き出していた
全ての夫婦においてである

しかしここでもう一人の裏切り者がーーー
それは正室の芳如だ
叱り飛ばし諌めるふりをして
郝葭が殺されるのを救ったのだ
逃げなさいーーー
これ以上の追及を避けるために

しかし
ここまで読んでいただいた皆さまも違和感を覚えたことでしょう
そう
私は殊更尹嵩兄さまに肩入れしていると
そこはしかし否定する
尹嵩兄さまのやってることも言ってることも
現代の社会では受け入れられない
尹嵩兄さまが強要していることは
今から30年以上昔の常識なのだ
"女は一たび嫁いだら全て夫に従い
夫を立て
夫のために体も心も差し出し
口答えなどせず
出しゃばらず
己の才もドブに捨て
自分のプライベートも人生も全て夫に捧げるもの"
ーーー
他の少主ん家の嫁共がやってることは
やってはいけないことなのだ

これこそがこの作品のテーマなのだ

尹嵩兄さまの口癖
"よー言ってくれたな!"

尹嵩兄さまは作品内に置いて
"全て受け入れ難い"存在としてピエロを演じる
このピエロは女共が忌み嫌う全てを持っており
強要してくる
このピエロが何かやったり言ったりする度に
他の嫁に尻に敷かれ言いなりになっている弟たちに支持が集まり
快哉を叫び
感激し感動する
そらそうだ
世の男がみんなそうなら
女のパラダイスだろう
夫は自分に何も言えず言わせない
家事は召使いと料理人がやってくれ金の心配もない
夜の営みすらも自分の都合で拒否できて
外で何時間家を空けて遊んでいても
夫が心配して迎えに来てくれ
自分を愛していると愛でてくれる

雨の中夫が迎えに来てくれる最高の目玉場面

女側には一切のストレス要素がない
夫も嫁たちも頗る仲が良く
皆で協力し悩みを解決する
なのでこの作品は公開されるやものの4日間で
(今まで紹介した14話分、この辺りでまだ4日分。これが中国ドラマだ)
"今までにないノーストレスと爽快感溢れる最高におもしろい作品!"
と本国のみならず世界中の視聴者から絶賛されることになった。

今回話題になった"熱度指数"なるもの、従来の再生回数以外に微博や百度などの検索数、スレッド数、タグ数、TikTokやBiliBiliなどの動画投稿数などを含めた関心度のような新たに設けられた指数がたった4日で1万近くまで伸び、興奮した愛奇芸が
"出演した俳優らそれぞれが熱度1万をマークしたら〇〇します!"宣言を発布する企画を出した。
それが更に注目を浴び更に熱度が上がるというお祭り騒ぎになった。

暁晨一人の海報もあり、狂喜したものの…

バスケで3P決める、逆立ちする、レモンを食べる、24節気全て唱える…etc.そんな大注目の中我らが暁晨が宣言したのは

"もし一万突破したら、私は奥さんたちに謝ります"
だった。
正しくこの頃世間が求めていたことだ。
その大注目の一万突破は放映されてから丁度1週間めに果たされた。

"みんな愛してるよ"

他のキャストらが動画でいろいろやったため、地味極まりないこの"謝罪"はほぼスルーされた
いつもはウィットが効いたあれこれで私たちをノックアウトさせるというのに、肝心な時にこれである。
ガックリしたものだ
というのは
この頃には尹嵩兄さまと同じくらい暁晨(正確には暁晨ファン)は窮地に立たされていた

この夜のツイートのを書いたのち私は泣きながら床に就いた
それは本国のファンたちも同様だった
歴代一位の早さで1万の熱度を突破した作品だけに
他のキャストが全てと言っても過言でないほど共感と好感で絶賛されているとき
"ただ一人"
全ての視聴者の怒りを一身に受けていたのが尹嵩兄さまだったのである

全く悪者やいけすかない役柄がいない
しかし一人だけ許せん所業を重ねる人物がいる
その悪業は止まることを知らず
許せざるものからしょうもないものまで全て
尹嵩兄さま一人の所業なのだった
恨みと憎しみからいつしかその袍の色から
"紫芋🍠""焼き茄子🍆"
と呼ばれるようになったーーー

私たちファンはどうやら
私たちの愛する張暁晨はこの作品で唯一嫌われまくる役らしいとこの辺りで腹を括った
ここまでの14話の間、私たちは新たなエピソードを視聴する度に具合が悪くなっていった
不眠、胃腸の不調、涙を流す、胸が痛む…、
毎晩ファンダムはお通夜の様相だった
"今晩も悪事を働いたよ…"
で始まる晩だった
そんな時

暁晨が降臨したのである
これは微博のファンダムの中にあるファンたちのチャットルーム
中国ではファンダムやこのチャットルームに推し本人が現れ、直接やりとりするのである
何と近い距離だろうか
同時に中国では自分のファンは自分が管理しコントロールせねばならない決まりだ
自由奔放無秩序無邪気な向こうのファンのこと
これは一筋縄ではゆかない

暁晨は"洗白"を連発し
"僕は善人だ。みんな変わらず僕を応援してほしい。きっと名誉を回復してみせる"
と言った。
"哥、洗剤は足りてんの?"
と返すのがさすがでしょ?
暁晨ファンは鍛えられてるの
私たちファンが毎晩のように泣き暮れているのを見て
彼は何かを決意したようだった
私は"嫡長主にはまだ何か隠された要素や展開があるのかもしれない。
だって先に彼は私に言ったもの、『彼は悪人ではない』って(Part 1参照)
名誉回復に繋がるような何かーーー改心するとか?
そうよ、こんなにハートフルで嫌なキャラクターもエピソードも何もない作品だもの!
きっとあの海報のように、最後はみんな和気藹々とハッピーで終わるんだわ!"ーーー

尹崢無双

尹嵩兄さまの管轄している戸政司も
尹崢の夜市解放政策でてんてこまい
余計な残業が増えて役人も兄さまもウンザリしている
金川から公主をゲットして帰ってきたことも
尹崢のやることなすことが
あまりにも順調で大胆で鮮やかなため
尹嵩兄さまたちは驚いてばかりでイラつく暇もないほどだ

しかし何事も初めてなことは難しい
開府したものの
尹崢が起草した"夜まで営業を伸ばす"
という試みは勤務時間が増えた役人たち、治安が悪くなったことに困った商人たちなどから訴えが爆発し、尹崢は早々に謹慎となった

一先ず安堵した尹嵩兄さま
しかしこれもパパの作戦だった
本当に息子たちはパパの駒に過ぎないのである

頑張っているのに注意とか言われている可哀想な兄さま

どんなに活躍したくとも偏ってはならず
失敗したと思ってもそれは見せかけだったり
パパは息子たちの頑張りと思いを何だと思っているのか
どの作品の統治者も同じである
嫡長主は殊更スパルタで期待をかけ育て
庶子たちはそろそろ年頃になってきたなと思ったとたんによりどりみどり(?)操作し放題だ

いつしか朝堂には特に功績のない五少主と七少主まで参内を許され
尹嵩兄さまは自分のときは相当頑張って実績を重ねてからやっと認められた経験から
モヤるばかり

そしてまたもや難題が
墨川へ盟約どおり60年おきに貢女を出すことになっているのだが
それが今年で年頃の郡主(姫)がいない
加えて墨川は大変に不便で寒い辺境の地
尹嵩兄さまは同腹の妹は嫁にやりたくない
尹岐兄さまの妹もだめ
どうする問題

すてきな優しい顔💕💕💕

誰も行かせたがらず行きたがらない
尹嵩兄さまは誰もが困らない方法を考え出した

いないなら作ればいい
3弟はやたらめったら側女がいるでしょう
弟の妻を一旦川夫人の養女ということにしてから嫁がせようと目論んでいた兄さま
初婚でなくていいの⁉︎

丁度ママに挨拶するためにやって来た尹岸兄さま

ママのようすから尹岸兄さまが後ろにいる、って気づく部分
絶妙すぎる
暁晨なりにコミカルな様子を入れてきている。

気まずくて誤魔化すけど、兄の余裕と貫禄と嫌らしさが絶妙。
やっぱり胡散臭さが最高✨✨✨

ママに余計な心配をかけたくなくて外に出てから尹岸兄さまにまた釘を刺す尹嵩兄さま。
自分が酷いことをしたくせに。

予告編にあったくしゃみのシーン。
これで私の、いつか尹嵩兄さまもコミカルなシーンが似合うようないい人になるんではないかという期待は虚しく崩れ去った。
背後から尹岸兄さまが呪詛の声を。

風を孕んだ袖が可愛い💕💕💕

愛しい細いからだ、袖を広げてから歩き出すこのベテランの貫禄ーーー
踵から歩く癖のために上下に揺れる、
どこまでも愛しくてならないものを
ほとんどの視聴者はその背中を尹岸兄さまと同じように睨みつけているのだ
こんな悲しいことがあるだろうか?

酔っ払い夜遅くになっても戻らない女ども
ヒロインら女子ーズの行動もいよいよ夫らが眉を顰めるほど無放図になってきた
夫たちが心配し迎えに来るなか
尹嵩兄さまもわざわざ馬車を出し迎えに来ていた
しかし
"嫡長主も迎えに来てる!すてきー!"
とはならない
この人は招かれざる夫なのだ

何という存在感
何という恐怖だろう
ゾッとするようなこの音のないカット
痺れるったらないわ
尹崢を睨みながらその幕から指を離すまで
何てすてきなの
馬車に吸い込まれてゆく郝葭の身をみんなが心配した。

罰としてひたすら何か書きものを命じられた郝葭。想像していたよりは軽い罰

朝堂での尹嵩兄さまはますます危うくなってきた
今度はまたもや尹崢が尹岸、尹岐兄さまと墨川へ赴き、新川から娘を嫁がせる代わり、農耕の指導支援をして助けるという制度に変えさせて帰ってきた。

その功により尹崢は事務司の官職を任される
いよいよ看過できなくなってきた

普通サイズの姫暁飛さんと一緒にいると細さが際立つ

尹嵩兄さまたちは管轄している戸政司の官吏らと
やりたくもない"尹崢提唱の改革"とやらの準備に追われていた
金を証文から貨幣へ
商業時間も深夜まで延長
その辺をパパの命令通りに妨害せずちゃんとやった。褒められるために

横から見ると
膝を出し踵から歩く暁晨の癖がよくわかる
からの脚組座り
これも暁晨の癖だが、時代劇の中でこのように座る姿は珍しい

しかし兄さまたちも尹崢の"すごさ"は思わず「よくやっている」と思ってしまうほど感じている
それまで全く目立たずずっと腹下しに悩んでいる弟だったのに!

まだ重要な尹嵩兄さまの戸政司は任せて貰えないけど

たった半年で丹川金川墨川の積年の問題を鮮やかに解決してきた手腕
どう考えても自分より優秀

書いても書いてもパパから突き返された奏上書の山に疲れ果て困憊する尹嵩兄さまーーー
残酷にも生まれながらに脳味噌の性能は決まっているため
無いものを幾ら振っても何も出てこないのだった

それを一番よく知っているのも兄さまだ
尹崢には勝てない
どうあってもーーー
行き詰まったその先がどうなるのか全く見えない
ただ一つ弟にないものがある

それは血筋だ
逆立ちしても尹崢は"嫡長主"という呼び名は得られない
しかし嫡長主という呼び名も
血筋も
パパの前に何も意味のないものだとしたら?
パパは庶子から川主になったのだものーーー

尹嵩兄さまが困憊している間に
いつしかいがみ合っていたはずの側室と正室がタッグを組むようになっていた
モラハラパワハラ夫とこの限られた屋敷という牢獄の中で
気の遠くなりそうな時を生きてゆかねばならない
少しでも明るく楽しく自分たちが過ごすために…

郝葭は芳如との交流の中で漸く腹をくくった
友情よりも寵愛
退屈だがそれが結婚というものだ
独身の頃のような自由は求めないことだ

そうなのだ
他の世界に目を向ければ不満だらけのこの最低夫も
言うことをきき大人しく
彼の好ましいようにしていれば
愛してくれる

暁晨の大きな手が小繧の細い手首を強く握りしめる
暁晨は"尹嵩を演じるにあたって僕が表現したのは『切望する愛』"と言っていた
逆らうな
服従と献身こそ私が求めるものーーー

私が忘れてはならないと思うのは
女が家を守っている間男は外で戦っているということだ
女が"私のことなんかまるで関心がないし分かってくれない。好きなようにさせてほしいのに"
と思うなら
男も"僕のことをお前はどこまで知っているんだ?
仕事がどれだけ過酷だと?
僕にも好きなようにさせてくれるのか"
という言い分も聞くべきだ
現に尹崢は尹嵩兄さまを危機に晒している
そんな奴の嫁と仲良くするとは!

あの連中の中にいれば自ずと感化される
あんな連中と連むな
という尹嵩兄さまの考えは間違っているのだろうか?
尹嵩兄さまもみんなと仲良く協力し国づくりをしてゆけばよいのだろうか?

それでも不満そうな郝葭
もちろんだ
"あの連中"はみんなでわいわい楽しそうに楽しいことばかりしているのだから
私もあっちに混ざりたいと思うのは当然だろう

いったいこれで何度目だ
いい加減に言うことを聞くのだ
これが尹嵩兄さまからの最後通牒
言っても聞かないから殴られて首を絞められることになる
ーーーハイすみません
それは現代では許されません
しかし言うことを聞かなかったのは郝葭なのだ
え?大体からして言うことを聞かなければいけないの?自由にさせてあげて、可哀想という話でしたか。
そこが最高にモヤるのよ

さあさあそんなことよりも!
他人の芝生や女のくだらん友情よりもっと大切なことがある

"また美しくなった"
尹嵩兄さまだってこんなふうに優しく言われたら嬉しい言葉で愛してくれる
だのに恐らくこの場面を虫唾が疾る気分でみんな見ているのだろう
うっとりでしょうが?
従順ならこんなにも愛してもらえるのに?
ダメなのか従順は

"いざ!"❤️❤️❤️❤️
そうよそうよ
結婚したんだから最も重要なのは営み!
いっぱい愛してもらうのが最重要事項なのに…

Part 4につづく
















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