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月光のイタズラ〜相愛穿梭千年 II レビューPart2

方紫儀

父親の店『紫雨林』を取り戻すため、そして父親に自分の姿に気づいてもらうために紫儀は女優になることを決意する。
頑ななだけで、ろくに棋龍の話に聞く耳を持たなかった彼女だが、この辺りからとても魅力が出てくる。
その手助けをしたのが、ハリウッド帰りのスター、陳迅だ。

演じるは、鄭凱。
鄭凱は私が初めて観てハマった中国ドラマ『宮廷女官若㬢』で佐鷹王子を演じていた。
あまりにすてきで覚えている。佐鷹王子か13皇子(袁弘)か
…?あまりに悩ましい問題だ

陳迅はハリウッドスター
監督業をするために帰国し、自身の撮影スタジオをつくり、紫儀に一目惚れしてヒロインに抜擢。
あくまで紫儀を女神として扱い、恋愛対象とは少し異なる距離を持って接した点がよかった。

おかげで棋龍とは友情と信頼で結ばれ、爽やかな描写となった。この関係がよかった。

第11話

2016年に来た志剛は紫儀が撮影所で火事に遭うということを知り、ショックを受ける。女優になったことを知らないからだ。
そのときに見た新聞に、姜世凱が載っている。

見出しも記事もイマイチよく見えず、何かの伏線か説明でもあるのかと思ったが何もなかったw
しかし男前なのでこれだけでも満足。
この新聞ほしい

第14話

こちらは紫儀の父、方の回想シーン
日本総領事館幹部本庄と会食する組長の横でしっかり一緒に食事をしている世凱
すごく違和感があるのだが
こういう場合横で控えているとかではないのだろうか
店を出るさいはしっかり"清"しているが

第15話

さて
その陳迅を迎えての日本総領事の幹部本庄邸の改装記念パーティーに
場所がそこだとは知らずに棋龍と紫儀はやってきた
思い出の父の店が変わり果てた姿になったさまに紫儀は悲しむ。

2階の一室で陳迅に会えてご満悦の本庄に御膳立てをした姜世凱が付き合っている
陳迅から、作品に出演する女優を連れて来ていると聞き、もしか紫儀では、と思い至る場面。
いつものように視線を細かく変える芝居

やはり紫儀が邸の中の様々な部屋を見ては懐かしがっていた。そこを呼び止め、案内するつもりであれこれ世話を焼く世凱
←すごくがんばっている

"お帰りになられるなら、タクシーを呼びましょうか"と好意で言っただけだったのに"さっさと帰ったらどうだ"というように受け取られ、そんな…、、、な世凱

またもや立ち尽くすのみ

"誰が帰るものか"と強がり、パーティー会場に戻った紫儀が芸名を訊かれ"紫雨林"と、店の名を言ったので耳を欹てる世凱。

紫儀らが去ったあとのこのバルコニーのシーンはなぜか日本版にはない。
"またの機会に"。秘めた恋ーーー

第17話

このあたりで組長が入れ替わるのだが、いったいいつ入れ替わったのかが世凱と同じように分からない。
いつもピッタリ付いていた組長、残虐非道で他人などに情けをかけたりしない主の違和感を、世凱だけは感じ取った。

側近である自分さえ知らない場所ーーー後を尾けさせる

第18話

組長を尾ける毎日。
すぐに自分と入れ替わった人物がマフィアのボスで、いかに悪どい奴でどういう状況にあるか洞察した霖のおじいちゃんはスゴいと思う。
あの組長のクズさ加減はなかなか善良なおじいちゃんには再現が難しかったろう。

いつも傍らには世凱

そんなクズの権化のような組長に心酔していた世凱は
自分に隠れて志剛と密会を重ねていることにゲンメツしている。そのゲンメツ具合がいかに深いか、これだけのみのシーンで表現してみせる。

第23話

王組長(中身は霖のおじいちゃん)は歴代組長しか知らない密室へ入ってゆき、暫くしてから出てきた。
初めて側近の自分にすらヒミツにしていたことがあった事実にまたもやショックを受ける世凱。
韓国人俳優が演じていたなら、ここでの世凱は"怒り、憤り"を表したろう。しかし張暁晨はここでは"悲しみ"を全面に出す。
受けたショックが大きかっただけでなく、"悲しかった"ことを柱から体を半分隠し、額を柱に凭れさせることで表現。
このスタイルも張暁晨ならでは。

『皇帝の恋』でもやっている

さあここからのボーナス・タイム!🌟🌟🌟

組長が訪れていた部屋が何だったのか確認するため潜入する世凱。
革手袋をしたままで電灯のスイッチを下ろすこの動きと指先のかたち!←これだけで床を転げ回るほどの興奮

そこには歴代の組長の写真が。

無闇にウロウロしたりキョロキョロしたりしない。
ゆっくりと舐めるように見渡し、窺うように目に入るものを吟味してゆく。

執務室の机の角に手を置き椅子の方へ

すれ違い様椅子を撫でる指のかたちの美しさ

机の上を物色するこのからだの角度、長慶、牧雲徳を彷彿とさせる優雅さ
そしてついにーーー

机の鏡面に映るその伏し目が止まった
パンアップでゆっくりと抽斗から取り出すようす
そう、これこそーーー

これこそ組長が世凱に取り戻せ、と言っていた帳簿なのだ。

世凱は頭が痛くなるほど考える。
なぜ帳簿がここに?←霖のおじいちゃんが志剛から預かっていた後ここにしまってあった
なぜ手元にあるのに捜させた?←王組長はここに帳簿があると知らない
なぜ志剛と密会を?←おじいちゃんが2016年のことを打ち合わせていた

"なぜ腹心の俺を騙した?"←騙したわけではなく霖のおじいちゃんに中身が変わったため一挙に不審な行動が増えただけ

そして画面はあっという間に70年後に。
蜘蛛の巣と埃塗れとなったその部屋の壁には、新たな写真が加わっていた。
一人だけえらく若くイケメンなそれ
そう、次期組長は世凱。

そうなんですよ

いい写真。これも額ごとほしい

黄組は姜世凱で終わりーーー
つまりどういうことでそうなったのか、、、
は分からず終いwwwこれだから韓国流は!
"それら"が知りたいが故に話数を消化するというのに!
心配するでしょ⁉︎死んだのか、生きてるのか、解散したのか壊滅したのか、って。

第24話

2016年からやっと1936年に戻ることができた王組長は真っ先に密室へゆく。そこへお約束のように横向きですっ、と姿を現す世凱、無言。
暫し見つめ合い
そしてゆっくりと視線も顔も逸らして。
その態度に組長は噛みつく。

捲し立てられている間はあくまで視線を合わさず
詰られてもまだ黙ったまま
組長が全て言い終えてから
"裏切ったのはそっち"
と。
今回の"自分は悪くない、悪いのは貴方"
というのが張暁晨的に珍しい展開。
そのとおり、世凱は悪くない。
"何だって?"
という組長にーーー

いつもの"非常に緩慢な動き"で胸元から手帳を出す
相変わらず独特な指遣いで持っている
これは黄組が日本総領事館の幹部、本庄に内緒で武器を大量に密輸していることが記された帳簿で
偶然発見した紫儀の父、方が持ち去り、組を挙げて血眼になって捜し、方ごと取り戻そうとしていたもの

"捜せ捜せとあれだけ私に言っていたものがなぜここにあるのです?"
←方が志剛に渡してそれを組長と入れ替わっていた霖のおじいちゃんに志剛が戻しおじいちゃんがここに隠していたから

"本庄と何をコソコソと相談してるんです?"←タイムスリップのアイテムである陶器の欠片のネックレスは全部で四つあり、それを全て集めタイムスリップのヒミツを解明するため表向き協力し合っている
"なぜ志剛と密会を?"←2016年に戻るときの打ち合わせ

"貴方のために組のために
ひたすら尽くし心を捧げていたのに
便利屋みたいに使っていただけだったの?
私は他の部下と変わらぬ貴方の手下でしかないの?
その気持ちを踏み躙り弄んでいたのね
酷い人と知っていたけど酷い人ね
納得行くよう説明して頂戴"
ーーーという無言の非難

極道に背く行いは許せない
洗いざらい吐け、と
組長の"なぜ私に背いた"という組長の"なぜ"に
"なぜ"の応酬で応えた世凱
世凱が疑う切欠の決定打はこの帳簿だが
組長は与り知らない
チンプンカンプンの組長が返答に窮していると

なんと本庄まで密室に入ってきた
もはや密室でも何でもない
組長は組長で密室のことをバラしたのかと世凱に噛みつくが

静かに否定するのみ
こういう芝居が張暁晨
私はいつも思う
同じ台詞、同じ演出ならば他の俳優が演じても同じだろうか
否、やはりこれは暁晨ならではの芝居なのだ
演出による効果ではない、と

机にあった秘伝書をめぐり、世凱の知らないことがらが展開される間もただ突っ立っているだけではない
この涼しげな風情で
しかし拳銃を躊躇わず本庄に向ける
顔を巡らさず視線だけでアクションする

張暁晨はとにかく事務所を移籍しメジャー作品に出演できるようになるまでにあらゆる役を経験した
なぜかその半数以上は悪役や諜報員や冷徹なものだったりした
その経験がこの静かで痺れる演技を洗練されたものへと導いていった

その代表的な作品《冷袍手》。主役を務めた

隙をついて逃亡した王に対しても発砲する世凱
地団駄を踏む本庄
もはや
自分に対する信頼を失った理由を問い質す必要もないほど
否、最初からそんなものなどなかったのだと思える王の行動に

今まで尽くしてきた日々に思いを馳せ
裏切られた失望と哀しみをこの表情で表す
暁晨が最も優れていると思うのはこの"哀しみ"の表現だ
二つの画像は同じではない
ひとみの輝きのみでそれを表現する
この余韻こそ
張暁晨を見る醍醐味だ

全く与り知らないことがらを知っていたか知らなかったかなど煙に巻いて本庄を追っ払う
組と関係のないものなど
世凱は最初から求めてなどいない
組長にどれだけ諭されようと
嫌で仕方なかったのだ
捲し立てる本庄に歯牙もかけず
"出てけ"

とにかく痺れる

去り際
本庄が紫儀を狙うと言ったため世凱はぎょっとする
彼女に累が及ばぬよう護らなければーーー
拳銃を握る手に力がこもる

第25話

最悪の事態
父親、方が王組長についに殺害された。
黄組に追われながらちゃんと供養もできぬまま埋めるしかなかった紫儀。
打ちひしがれながら爪のあいだに残る泥を洗っていると
ゆっくりと誰かが入ってくる
そして
美しくコックを持ち美しく水を止める
ゆっくり+美しさとなれば
その人物は特定される

このアングルは本編にはない
壁付けのシンクだからだ
カメラアングルの妙
紫儀の前にはたしかに壁がある
壁の向こうから見る二人のショット

"またあなたなの"
悲しい一言め
父を埋葬した直後に仇の幹部が目の前に来て素直になれる訳もなく
"何しに来た"と捲し立てる紫儀
悲しいが

世凱は頑張って汽車の切符を渡す
本庄から身を守るためだ
事情をこの落ち着いた口調で話せばいいのだが
極道には秀でていても(?)恋には不器用な世凱
真心を尽くしていることを紫儀にも分かってほしかった

世凱は鎮江の出身なようだ

頑なに耳を貸そうとしない紫儀
無理もないが
"父親を殺したのは俺じゃない"
との主張は却下された
こちらも無理もないことだ

切符を投げつけられ傷心の世凱
かわいそう
まだ告白もしていないため誠意が伝わるわけがない

このあたりの報われなさが主人公との決定的な違い
報われない姿ばかりは悲しい
自分が一番愛しい人の愛され、幸せな姿を見たいと思ってしまうのはそのためだ

"もうどうでもいい、好きにしろ、殺されようが未練はない"
という紫儀の言葉
これが最後の会話となった

第27話

夕暮れの上海郊外。棋龍と紫儀は王によって射たれた。棋龍の止めを刺そうとした王を銃弾が襲う。
それは世凱によって撃たれたものだった。

足元に無残な姿で倒れた愛しい者を見つめ、世凱は再び下手人に報復と憎しみの銃弾を容赦なく浴びせる。

倒れた王、世凱はそれを確かめ、

変わり果てた姿となった紫儀の亡骸に駆け寄る。
部下が殴っただけであれほど激昂した彼
その嘆きは如何許りだろうーーー。

悲劇ののち
本庄との対決。

くろちんとは我が家の猫。

失礼しました
徐に部屋の扉を閉める世凱。
いつもの見返り暁晨の逆バージョン。
このときから世凱は決めていた。何を?
それはーーー

王組長は今やあの世、と聞いて本庄はタイムスリップの探究はできなくなったと思いめちゃくちゃに世凱を詰る。
再び紫儀を盾に脅しをかけられるが
紫儀ももうこの世には居ないのだ
他でもない本庄と王の欲望の生贄にされてしまったーーー
愛しい者への悔恨を
滲ませる繊細な演技。

捲し立てた本庄に薄ら笑いを刷いたまま
着席する姿を視線だけで追うカット
この独特さこそ張暁晨
王なんかどうでもいい、秘伝書さえ手に入れられればーーー先程あれほど貶しておいて
横柄にもそれを寄越せと手を出した本庄に

またもや胸に手を入れる
しかし演じているのが張暁晨な以上
たっぷりと思わせぶりなこの所作で出されるものには何の保証もない

次の瞬間その手から
呪いの人形(←お手製)
を渡されても大丈夫なように心の準備をせねばならない(from『皇帝の恋』)

帳簿を切り札に逆に脅され再度激昂する本庄
相手をばかにしきったこの世凱の風情
笑いを噛み締めるために口元に添えられた手
この細かい芝居が最高に憎たらしい

誰のおかげで今までいられたと?
そんなことを言われたところでどこも痛みはしない
極めつけに言うことには
"お前はチンピラで犬だ"と

蓄音機のボリュームを上げる指さき
刹那漲る殺気
そしてーーー

いつものように優雅に扉を開け
涼しげな顔で出てくる世凱
背後には絶命した本庄と
王から奪ってきた秘伝書
どちらも要らない
黄組組長姜世凱の誕生だ
そしてこれが
最終シーンとなった

"犬にも劣る奴め"ーーー
その捨て台詞が決め台詞
この痺れまくるクールな若頭姜世凱が
《月光のイタズラ》にいる
出番は僅かだが
張暁晨はたしかな印象を残すーーー

全編通しての感想

とにかくお初魏大勳がよかった
呉建飛によく似ている
建飛は暁晨の親友だ
志剛のときに特に感じた
おかげで親近感。

呉建飛

私的にはシュッとした紳士の志剛よりも
明るく気さくで、可愛いところがある棋龍が好きだった

心を掴まれるシーンは棋龍と紫儀のCPの方ばかりだった
タイムスリップものにはつきものの"別れ"
紫儀がオーディションのときに演じたシーンのせりふに切ない思いが溢れる

タイムスリップものの面白みは、過去の人々に現代の知恵や習慣、言い回しなどを教えたりする場面
この作品にもそれが溢れている。

韓国ドラマならではの美しくロマンチックなシーン
ここは私のお気に入り
父は失踪、家は乗っ取られこの先どうしたら、と傷ついている紫儀を励ますために
棋龍は木に登って花びらを揺すって落とす

蘇州でのキス・シーン
過去の人を愛してしまう
しかしずっとこの時代に生きることはできない
美しい紫儀
苦悩する棋龍

そして陳迅
もう色男で困った
彼の表情がいい

紫儀にはあくまでも女優として惚れ込み力になり夢を共有する
棋龍とも信頼で結び合っている

初監督作品のヒロインに紫儀を抜擢し臨んだ撮影
恋人と別れる悲しいシーンを笑顔で表現した紫儀の迫真の演技に周囲が魅入られる場面
紫儀の頬に涙が伝い
アクションが終わってもカメラを回し続けろ、と指示を出す
伝説の映画女優、紫雨林の伝説の場面

そして暁晨

王組長役の王徳順と

悪の権化王組長の側近、というただそれだけの役だ。
役柄も、敵でありながらヒロインの紫儀に片思いで、ただ一人優しい気遣いを見せるものの伝わるわけもなく、作劇ももっと何かあるのかと思い期待したがただ"それだけ"の役だった。

ただ、それだけの役、あれっぽっちの出番ではあるが放送前のスタッフからの評判も、放送中の評判も頗るよかった。

腹心の友、王伝君が撮影に遊びに来たときのショット。
顔パスで撮影所に入れる著名実力派映画俳優伝君と暁晨とは知名度で格段の差があるが、この親密ぶりがまた話題となった

張暁晨といえば無言のシーン、もしくは無言に近いシーン
画面に出た瞬間からカットが切り替わる刹那まで
その繊細な表現、説得力のある表情で魅せる
よく早送りしてまで最初から最後まで筋だけを辿れればよいという見かたをする人もいるが、そのやり方では暁晨の演技は伝わらない。
逆にコマ送りで堪能しなければと思うほど、その表情はコマ毎に変わる
一言のセリフに最低6コマ。
それくらい細かい

そのためこういうことになる。この作品の直前に撮られた『海上牧雲記』。
驚愕を押し殺し、動揺。涙が滲んだことで瞳に映る灯火の輝きが変わり、揺れ、ついで視線を落とし、長い睫毛が絶望と悲しみに伏せられるまで。

静かな中の背筋が凍るような恐怖、次の瞬間には激しいアクションで更に恐怖、

なのに溢れる優しさ、思いやり、そのキャラクターが持つ背景さえも思わず想像してしまう確かな解釈に依る表現。

窓辺に佇む、扉を閉める、スイッチを入れるーーー
あらゆる動作とその姿勢は優雅で美しい。張暁晨を見るうえで欠かせないこちらの魅力も、この作品は満載だ。

つまり、この作品での張暁晨は"最高"だった
このレビューを参考に
彼のシーンだけを見ていただきたいくらいだ
所詮脇役で
話の筋とは距離を置く役なため全く問題はない
むしろ
彼の演技によって
筋がわからずとも全てのシーンに心動かされ
彼が何を考え何を表現したか、それは必ず理解できるはず
それが張暁晨
だから私は彼に惚れ込み抜け出せない沼の中に嵌っているのですーーー

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