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贅婿
このほど放送を終了した『贅婿』。
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郭麒麟を主役に制作された作品だが
これに張暁晨も出演するらしいと分かったのは放映の半年ほど前。
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『贅婿』とは何ぞや
興味をそそられるシンプルな題名に心踊らせながら
一切情報のない中待ち続けるいつもの待機時間
ある日舞い込んだ撮影中のようすーーー
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ん?
古装劇(時代劇)じゃないの?
しかも
この写真には
"キャー張若昀よ!""『贅婿』に彼も出ているの⁉︎ステキ!"
などと
全て張若昀に関するコメントばかり。その通り、この写真自体が張若昀をお送りするために撮られたものなのだ。
誰も張暁晨には触れない。
『贅婿』とは何ぞやーーー
そして年を跨ぎ
あの忌まわしい事件が起こる
忌まわしい事件とは
暁晨が参加していた鳴り物入りの映画
日本縁の原作に日本人の音楽家が起用された映画で
二部仕立てだったある映画が
監督の犯罪によって葬られてしまったという事件のことだ
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私は暁晨をこの映画で大々的に宣伝しようと非常に非常に楽しみにしていた
しかし目の前でその映画は映画の形にすらならないままガッチリと封印され無期限の上映延期とされ
毎日泣き暮れていた
そして更に1か月経ち
無期限封印された暁晨の出演した二部の方を尻目に
Netflixで一部目が世界中に配信され軒並み一位を独占した
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私の夢
世界中でこの映画の中にいる暁晨を見てもらうという望みがひといきに叶う筈だった
それがーーー
こんなことがあっていいのか
こんなことがあるものなのか
神様は何と意地悪なのだと
泣き疲れ果てた2月ころ
『贅婿』は播出(放映)されたのだ
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私が暁晨を追いかけて一年余り
初めてリアルタイムで迎えた播出だった
ここに至るまで何の海報(ポスター)も役がらに関する情報もない
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群像海報(レギュラーが概ね並べられている横長のポスター)を何度見てみても暁晨の姿はない
同じ事務所の海一天はいる
ここでまず落胆
すると
"張暁晨はカメオ出演"との名目らしいとわかる
カメオ出演ーーー?
"あれは誰?"といつも言われている俳優が
カメオ出演と呼ばれるものなのか?
そして迎えたバレンタイン・デー
この日は更に私を翻弄させた出来事があった
その出来事とは
無期限封印されたはずの例の映画の予告編が流れたのだ
封印では?
もしかして早くも封が解かれ罪は解かれたのか?
と
不安定な気分のままーーー
何と
— hanoroses (@hanoroses) September 5, 2021
冒頭も冒頭
始まってすぐである
今ノリに乗っている張若昀がセレモニー会場に乗り込んで来たかと思うか思わないうちに椅子でナグられるという!!
いかにも!な張暁晨の役どころ
たまにはナグる方もしてみたいところだが
悲しいがそれはない
悪役とはそういうものだーーー#張暁晨#贅婿 pic.twitter.com/1KCRatUt5U
放送後このカットのみ
公式ページと暁晨が自ら紹介してくれた
始まってわずか1分
そしてその場面のみーーー
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暁晨は唐明遠というCEOだ
莫大な投資額をつぎ込みあるプロジェクトに着手する
その発表記者会見場に主人公である江皓辰が乗り込んでくる。
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名を呼ばれ振り返ったその顔に
振り上げられた折り畳み椅子
土砂降りの舞台に倒れ伏し
眼鏡は吹っ飛んだ
勿論それだけの怒りを買うようなことをやったからだが
いつも胸が痛む瞬間だ
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私はこの二年というもの
ろくに他の作品を見ていない
だから『慶余年』という作品で大ブレイク中の張若昀もこのシーンで初めて見た
公式のこのカットの動画に溢れる若昀礼賛の嵐
暁晨に対するコメントは見つけ出すのが困難なほどーーー絶対数で太刀打ちなどできるはずもない
(微博のフォロワー数は若昀が2700万、暁晨が370万)
私が悲しくなる瞬間だ
あの事件の後だったので尚更だった
脇役でなく主役だったなら
一部にいたはずなのだ
脇役だったために日の目を見られなかったのだと
楽しみにしていたのに
また悪役
胸倉を掴まれている私の推しに対して
"張暁晨カッコイイ💕"
という声はなくーーー
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また憎たらしくてどうにかなりそうな相変わらずのこの芝居!
若昀は大した苦労もなく殺意を抱けるであろう
一旦かけた眼鏡を振り返りざままた外しかけ直すという
小技が効いている
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私は以前こう書いていたものだ
"憎たらしくて堪らない芝居をさせたら天下一品
いけすかなくて胡散臭くて殺したくなるほど憎らしい
そんな役は張暁晨にお任せ下さい
この上なく憎たらしく演じて見せましょう"
と。
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しかしあの事件いらい
私は以前のように茶化すことができない
悪役は必ず主人公に殺されるものだ
痛めつけられ
止めを刺され
葬られる
賛辞は主人公に
悪役にはーーー
張若昀はそのまま主人公郭麒麟にバトンタッチし『贅婿』本編が始まる
放映の間
『贅婿』の評判はものすごかった
毎日上がる劇中スチル
本編をカットした紹介動画ーーー
毎回目を皿のようにして探すも
張暁晨の姿はない
やはり
冒頭のあの場面のみかーーー
ところが
『#贅婿』大結局末尾部分。
— hanoroses (@hanoroses) September 6, 2021
張暁晨全球後援会会員悦姐姐さま提供。
播出の間、いかに目を凝らそうと暁晨の姿はなく、やはり冒頭のみだったかと諦めていたら最後の最後にーーー!
これにどう反応すべきか、皆さまなら如何です?
こんな宙吊りの心境のまま放り出される、それが私の日常なのです#張暁晨 pic.twitter.com/bcm6R00JNm
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最終回最終シーン
奥からふわりと変わらぬ優雅な身のこなしで現れた人物
細身の長身
間違いない
やはり
古装部分はあったのだった
画面に映らないほどの撫で肩
衣装の高い襟が映える長い首ーーー
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"思えば皇子がこちらにいらして早一年"
"青雲6州を得て国力は増大しました"
"一年のうちに武朝は滅びるでしょう"ーーー
この3行のせりふを
いつもの静かな調子で淡々と呟き
最後に不敵な笑みを浮かべながらこちらを向く
そこへ
"第一季 完"
とーーー
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私は
"まだ出番があった!古装姿の彼が見れたわ!"
と
思った
思ったが
次の瞬間には泣き崩れていた
人気がすごく評判もすごかった作品なのに
その"面白い"本編には一切出番なく
冒頭の2分と末尾の2分
たったこれだけーーー
カメオ出演なのだ
短いのは仕方ない
それでも
飛ぶ鳥を落とす勢いの若昀に椅子で殴られ
台詞を切って決めた顔の上に"完結"だなどと
"これで終わり。どう、面白かった?"
と揶揄われているような気持ちになった
これだけ?あんなに待ってこれだけだと?
以来私は悲しみと共に"贅婿サンドイッチ"と呼んでいる
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本編完走ののちの感想
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『贅婿』本編をこのほどやっと見た
"サンドイッチの具のなかみ"
小気味よいテンポのなか
主人公寧毅のスキルの高さで様々な苦境を爽快に解決してゆく
私は『慶余年』は見ていないため、どの俳優も先入観がない
ある意味張若昀さえも
知った俳優は賀太師役の銭波さんだけだ
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悪役とてもどこか愛嬌があり
鮑文翰も烏公子も憎みきれない可愛さがある
ラスボス感満載だった賀太師さえも呆気なく
身内の不幸は耿くんだけだった
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最後の最後に隣国の皇帝が現れ
そのお方こそ暁晨と語らっていた人物だった
数多の犠牲と寧毅の知恵を持ってもぎ取った旧領土も
更に一枚狡猾な名君み溢れる皇帝の企みによって安寧もたった二年のものとなることを匂わせ終わる
民と国の安寧など
欲と野望の前には全く無意味なものーーー
めでたしめでたしではなく
無常な現実の厳しさを描いて見せるのもいかにも中国。
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劇中
ときには遊び心たっぷりに
ときには容赦なく現代の記憶があるにも関わらず躊躇なく悪人は殺す
そんな寧毅
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目の前の環境を直様受け入れ、判断力も剃刀並みに切れる
ここまで聡明でやり手で人懐こい寧毅の口から
"親友"と表現される男だったのだ、唐明遠はーーー
折り畳み椅子で殴られ
タイムスリップしてからは椀の中に浮かんだイメージを最後に視聴者からは忘れられていたであろう彼は
最後に"クズ人間"の代表として登場する
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"一年で武王朝を滅ぼして見せましょう"
「あの」寧毅ーーー江皓辰は陥れられたのだ、あんなに切れる江皓辰が!
第二季でいったいどんな攻防が見られるのだろう、と期待が膨らむものの
続きがあるとは限らないのがあちらの日常だ。
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今回全てを見たことで、張暁晨のキャラクターは
"アノトキノアイツダ!"
という"面白さ"ーーー
純粋に物語だけを見るならば、とても"すてきな"
もしくは"粋な"描かれかたをしていたと言える。
張暁晨という俳優の大ファンである私は、推しである彼の出番が、とても面白く評判を呼んだ本編に全く関われなかったことを大変残念に思う。
それは変わりはしないが、
この愛される主人公を酷いやりかたで陥れたクズとして、最後の最後で現れるという幕引きを効果抜群で演出する要員として、彼が起用されたことは、とても喜ばしいことなのだと思うことにした。
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張暁晨は大ヒットした『慶余年』のメンバーではなく、全く関わりはない。
しかし"クズ人間"をうまく演じられる俳優がいる
ともしか覚えていてもらい、今回この作品に出たことで
またもや『慶余年』と同じキャストで撮られた『雪中悍刀行』にも出られたということは、とても嬉しいことなのだ。
雪中悍刀行奇譚
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他でもない張若昀の主演作
『雪中悍刀行』にて
またもや本気で殴りかかられる場面がある。
『贅婿』とのシンクロに話題となった
ここは笑い転げる演出のはずだが
私は笑えなかった。
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殴られ胸倉を掴まれ
痛めつけられる役ばかり見ているのだ
推しが虐げられている場面で笑えるはずがない
例えその役が与えられるだけで有り難く
そんな役ばかりを好んで彼が演じていたとしてもーーー
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しかたがない
誰よりも憎たらしく演じることができるのだ
しかたがない
暁晨自身も心に複雑な闇を持つそんな役を演じてみたら楽しいに違いないと思っている以上は。
楽しい楽しい本編に出番がなかったことはファンである私にはとてもとても残念には違いない
しかし
楽しい楽しい本編を見て、最後に以外なものが出てきて、それで幕。
なあんだ、ここで終わり、マァいいや、とても面白かったーーー
そう思ってもらえる手伝いをしたのだ、と思うことにする。
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たった3行のせりふで、強い印象を残す。
短い短いシーンでも、役柄を理解しこう演じる、と決めたスタイルで表現してみせる。
『贅婿』の中の彼は、やはり素敵で完璧な
"張暁晨"なのだーーー