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その飲酒に意味はあるのか 2025/01/3-7 年末年始・ベルリン大冒険スペシャル(後編)

惰性で飲酒をする30代子なし女、飲酒した日だけ日記を書いている。今回は年末年始にドイツに行ったのでその旅行記、後半戦です。

前半はこちら


2025/1/3 金

この日はベルリンから新幹線で2時間ほどの古都ドレスデンへ向かった。ドイツは都市国家だから街ごとに全然雰囲気が違うよね、と誰かが言っていたので、ベルリンから行きやすいところはないかと探して出てきたのがドレスデン。古都らしい立派な旧市街があるらしい、ゲルハルト・リヒターの出身地、ロマン派の画家カスパル・ダーヴィト・フリードリヒの有名な作品「雲海の上の旅人」が絵画館に収蔵されている……それくらいの前情報だけで訪問を決めた。

ドレスデンへの新幹線のチケットを前持って購入したが、座席指定を忘れていた。ドイツの新幹線は指定席車両・自由席車両が決まっているわけではなく、席の上の電光表示を見てその席が予約されているかどうかを判断しなくてはいけない。とはいえ「この席は予約されている可能性があります」という意味の曖昧な表示になっていることが多い。誰もいない席なら座ってよくて、退いてと言われたら退く。二人がけやボックス席にすでに誰かいて、その空席に座るときは、「ここ、誰も来ないですか?」と先客に軽く確認する。日本のシステムに慣れていると不安だが、まぁこれで十分だよなと思えてくる。
そんなこんなでフランスからの観光客と相席した新幹線は、半分ほど進んだあと突然低速運行になり、30分遅延して到着した。予約していた帰りの新幹線が勝手にキャンセルされて、焦って取り直したりもした。
まぁ、そんなもんだろうとおおらかになるしかない。

実はドレスデンはクリスマスマーケットで有名な街で、最古のクリスマスマーケットはドレスデンのものらしい。ネットで調べたら「590回目の開催」と書かれていてびっくりした。あまりの気合の入りようと、”本物”らしさに「もしかしてディズニーランドの元ネタってクリスマスマーケットなのか!?」と思うようになる。

ドレスデンはかつての統治者が非常に豪華絢爛な宝物のコレクションを残しており、ドレスデン城に膨大な展示がされている。
鏡張りの部屋に、女児の夢みたいな大きさの宝石が何百と転がっているのは圧巻だった。数年前に盗難事件が過去発生したせいか、警備が非常に厳重で、荷物は全部ロッカーに置いていけと言われる。写真も撮れなかった。

ゲルハルト・リヒターと、カスパル・ダーヴィト・フリードリヒを目当てに訪問したアルベルティーヌム(新絵画館)はちょうどカスパル・ダーヴィト・フリードリヒ展が開催中。展覧会は大人気で当日券は売り切れ。普段は常設展に展示されている「雲海の上の旅人」にお目にかかることはできなかった。
常設展はかなり気合がはいっていて、リヒターはもちろん、古典的な彫刻展示室の奥にヒト・シュタイエルの極彩色の映像作品があったり、ティルマンスの壁(部屋ではなく壁と言いたくなるくらいペタペタ貼られている)があったり、かなり見応えがあっておすすめできる。

ティスマンスの壁
とても気に入った絵画の絵葉書が売られてなくてしょんぼり
彫刻の展示方法が自由で、すごくよかった1
彫刻の展示方法が自由で、すごくよかった2

帰りの新幹線は21時近くにしたので、マップで見つけた現地のレストランで食事を取る。やはりベルリンと距離があるからメニューも少し様子が違いそうだった。すごくおいしかった。

ドレスデン風ザウアーブラーテン。
酢や香辛料に漬け込んだ牛肉を蒸し焼きにしたものらしい。ソースにコクがあってとてもおいしかった。着け合わせのじゃがいも団子は芋餅のようでほっとする味

ドレスデンの日はこの旅行中で一番寒かった。トラムを待っていると雪が降ってきた。

クリスマスツリーの撤去現場

駅のコンビニにおにぎりがズラッと売られていることに気づき、サーモンとわかめ味を購入してみる。3ユーロもしたけど米がベチャベチャで最悪だった。

2025/1/4 土

朝食をカフェで摂ることにする。Googleマップでホテルの近くを「キャロットケーキ」で検索して出てきたお店が美味しそうだったから。キャロットケーキはなかったけど、ぎっしりピスタチオのケーキを食べることができた。バターたっぷりの焼き菓子が本当に美味しい。

うまく貼れるリンクがないのですが、Mandarin Coffee Roastery というお店でした

美術館の予約時間まで余裕があるので、もう一軒カフェをはしごする。こちらもドンピシャのキャロットケーキはなかったけど、美味しい焼き菓子があった。

外観もおしゃれ

1/2に入れなかった、ナン・ゴールディン展へリベンジ。

ナン・ゴールディンは自分にとって「教科書に載っている写真家」だった。もしかしたら展覧会で写真を見たことがあるかもしれないけど、一枚一枚の写真をバラバラに展示するのではなく、スライドショーにまとめて音楽とともに映像作品にまとめられていることが多いはずで、スライドショーをこれまで見た記憶はない。
展覧会会場には6つの黒い布につつまれた仮設テントがあって、それぞれ中でスライドショーが上映されている。わかっていたけどしんどい写真が多い。複数の作品で共通のスナップ写真が素材として使われていることがわかる。スナップ写真は背景でかかっている音楽に合わせて鳴る楽器の音みたいにサンプリングされているのだ。ボケたりブレたりしている写真は撮りたくて撮れるものばかりではないし、そういう写真にもその良さがあると思うとシャッターはどんどん切っていいんだなとも思った。

その後ベルリン中央駅すぐのハンブルガーバンホフ現代美術館へ。広大で展示室が大量にある。

19世紀の旧駅舎を活用した現代美術館
ヨーゼフ・ボイス作品が常設展示に
ブルース・ナウマンの Room With My Soul Left Out,Room That Dose Not Care という作品
部屋の中に十字型でどん詰まりのある箱がまるっとそのままポンと置かれている

展覧会が5−6個並行して行われていて、見るのはかなり大変だった。
常設展示の巨大なインスタレーション、その名も Endless Exhibition というシリーズを見つけながら歩くのが面白かった。

ATMかと思ったら作品だった

夜はクラフトビールバーではしご酒することにした。旧東ベルリン側のミッテ地区の北の方は若い人が多くて、バーに活気がある。旧西ベルリン側と歩いている人の数も、層も全然違うので驚く。

ミッケラー・ベルリン
BRLO というベルリンのクラフトビールメーカーのタップルーム

タップルームは当然ビールだけ飲むところで、みんなおつまみしか食べていない。お腹が空いてきたので、アレクサンダー広場の FIVE GUYS という日本未上陸のアメリカ初ファストフード店に行くことにした。
めちゃくちゃ美味しい。味付けがとても簡素なんだけども、肉の味がぎゅうぎゅうで、ちゃんとしたレストランでナイフとフォークで肉を食べているとき同様「ああ私、今おいしい肉を食べている……!」と実感できるようなハンバーガーだった。バーガーはもちろんポテトとミルクシェイクもべらぼうに美味しかった。去年行ったソウルでも見た気がする。なんとか、日本にも上陸してくれないかな……為替の差が難しいかもしれないけど。

パッケージは簡素。
ポテトの容器は紙コップだったけど、全然入りきってなくて紙袋の中で溢れていた

この日の最終目的地は MUTED HONE というビアバー。

タップはもちろん、ものすごい量のボトルビールを提供していて、メニューの字がとても小さい。ランビックやサワー、セゾンといったヨーロッパらしい酸っぱいビールの品揃えが多いみたい。

よく見ると下に「もくじ」の記載があって、
このフォントサイズのまま17ページまでぎっしりボトルビールのメニューが続く

私はナイトロという、窒素ガスを充填した滑らかな口当たりのビールが大好き。日本では作っているメーカーがそもそも少ないのもあるけれど、こちらのバーにはナイトロ専用の注ぎ口が備わっていてとても嬉しかった。

ベルリンの夜は今日が最後。ミッテ周辺の飲食店やバーをもっと楽しみたかった。もし次があるなら暮らすようにベルリンに長期滞在して、カフェやバーを焦らずゆったり散歩しながら開拓できたら楽しいだろうな。東京で自分がそうしているように。

2025/1/5 日

日曜日は移動日にあてることにした。ドイツでは日曜日は「閉店法」と呼ばれる法律で商店を開けてはならないらしい。

6時半に起床。ホテルはスムーズにチェックアウト。宿泊税だけあとで追加で支払ってくれと言われる。前のホテルでは言われなかったので、ホテルによっていつ請求するかがまちまちなんだろうか。
朝は知人に教えてもらって予約したカフェに行く。無造作にチーズとハムと野菜と果物を積んだだけに見えるプレートがとても美味しい。

右はトーストにエッグベネディクトとアボカドが載っている

移動まで時間があるので、蚤の市が立っている公演までトラムで移動。

絵画
生首栓

蚤の市はカオスでいろんなものが売られていた。いかにもお土産屋といった雑貨店はもちろん、食器・衣類・絵画・電化製品なんでもある。何かのリモコンがバラで売られていて、誰が買うんだと呆れた。可愛い服もあったけど、チキって買うことができなかった。悩んで買わなかった。
二つ目の蚤の市を見てからあまりの寒さに近くのカフェに避難してカフェラテを飲む。店内は席が一つしかなく、近所の人っぽいマダムがゆで卵を食べていた。そのテーブルに相席のような形で立ってコーヒーを飲む。全然洒落た店ではないけどもキャロットケーキも食べる。やはり美味しい。キャロットケーキ、帰って家で作りたいな。まだ時間があるので昨日キャロットケーキが有名と聞いてたけどキャロットケーキがなかった店を覗くが、やはりキャロットケーキはなかった。
ベルリンのスーパーで土産のお菓子を一部買おうかと思ったけど、日曜はスーパーも空いてないので諦めて、アレクサンダープラッツ駅から空港へ向かった。途中雪が積もっていた。

空港は国内線だからどうせ適当だろうと思っていたら、かなり警備が厳重だった。荷物検査を通るとき、うっかりカイロを貼ってたせいか、身ぐるみ剥がされ全身触られて恥ずかしかった。
ゲートの近くのレストランで、スープとビールを飲んで飛行機を待つ。

スープには特に何も書かれていなくてもパンがついてくることが多くて、嬉しい

着いたのはフランクフルトの空港。フランクフルトから少し北のヴェッツラーという街が我々の最終目的地なのでフランクフルト中央駅へ移動する必要がある。
ベルリンとフランクフルトでは鉄道の乗り方が少し違って、改札がないのは同じだけど、切符に打刻をする必要はないらしい。
などということを調べていたら、逆向きの地下鉄に間違えて乗ってしまう。途中で気づいて降りたら、随分雪が積もっていた。ベルリンほど寒くはない。

フランクフルト中央駅を逃すと夕食を食べる場所がなさそうなので、ベルリンでも見かけたフライドポテト専門店でソーセージもりもりのポテトを食べる。フライドポテト大好きなので嬉しい。牛丼のようなニュアンスなんだろうか。

カリーヴルストスペシャル、みたいな名前だったはず

ヴェッツラーへ向かう電車には観光客らしき人は全然いなくて、検札に来た職員さんに怪訝そうに「帰りの電車のチケット持ってる?」と訊かれた。持ってないよと答えた。

駅のコンビニだけが開いていて、Mr.Brownが売られていた
なぜか駅前のバス停にショッピングカートが放置されていた

ベルリンとフランクフルトから来るとヴェッツラーはいかにも田舎に見えた。外は真っ暗だし、明かりもついてないし、当然誰も歩いてない。駅でバスに乗ったのも我々だけで、不思議な気分に浸っていたら途中何もなさそうなところでドッと人が乗ってきて、またすぐに降りていった。
宿泊先もおそらく数組しかいないんだろう。チェックインのときに朝食を予約していないよ、と指摘され、閑散っぷりを目の当たりしていたから慌てて朝食を予約した。

2025/1/6-7 月

なぜヴェッツラーなのか。ここは世界的カメラメーカー・ライカの本社と博物館があり、同行者がそのファンだからである。

ホテルの窓から

ホテルの朝ご飯はベルリンと違って魚料理があった。酢で締めたしめ鯖のような料理。ドイツに来てから魚はほとんど食べていなかったので新鮮だった。

魚と
ハム

野菜にチーズ、肉、フルーツ……と前日のカフェを真似て盛ってみるとやはり美味しい。シンプルで当たり前のようなことだけど、日本のホテルの朝食でも真似してみたい。乳製品の美味しさは日本だと北海道にでも行かないと満足できないだろうか。

ファインダーのようなライカ博物館

ライカはもともとヴェッツラーで創業して、別の土地に移転して、最近また戻ってきたらしい。建物がとにかくきれい。掲示物のフォントもすべてプロダクトのフォントと統一されていて、ステレオタイプの「ドイツらしい」几帳面さがあった。

ライカ本社には社員食堂があって、一般の人も食事ができるが、朝ご飯でお腹いっぱいだったのでコーラだけ飲んだ。

レンズのようなライカ本社

月曜日は一部の施設(カフェが有名らしい)が開いておらず、観光客向けのツアーも開催されていなかったし、ショップも一部開いてなかった。受付の人に「今日は閉まってるの?」と訊くと「そうだよ、明日までいる?」と返ってくる。「いない」と答える。本当にもう二度と来ない土地かも……と思うと、切ない。そんなふうに思うこともなく二度踏みしめることのない土地のことも少し考えた。

ここでライカの写真機1号機(ウル・ライカ)が初めての写真を撮ったらしい

またフランクフルトへと帰る。途中乗り換えを強いられて降りた駅に虹が出ていた。

フランクフルトに着くともう夕方。フランクフルト中央駅前は人がかなり多い。東京ほどとは言わないけれど、ベルリンと全然印象が違う。いかがわしい店ばかりの通りもあった。焼き菓子が食べたくてカフェを探して向かったけれど、「コーヒーマシンが壊れてるんだ」と言われて、諦めて別の店でチーズケーキを食べる。キャロットケーキがもう一度食べたかったけど、仕方ない。
スーパーでお土産を買い込んで、フランクフルト空港へ移動した。帰りはANAとのコードシェア便だったからお米も出た。

ANAのWi-Fiはテキストメッセージなら無料でできるというので入れてみたら通知だけ受信できるようなモードでつらいのでやめた。もうみんな働いているから、心臓に悪い通知ばかり来る。

飛行機の中でドイツどうでしたか?って聞かれるんだろうな、と考える
一口で答えられる内容を用意しとかなきゃ。
・年末の爆竹で大騒ぎしている人たちが楽しかった
・特にベルリンの人口密度はナイス フランクフルトは結構人が多かった
・カフェがすごく良かった。ケーキが美味しくて。
このあたりかな、と箇条書きが残っていた。もう少し頑張ってメモしてほしかったよ。

さすがに疲れていたせいか、21時ごろ発の便だったからか、帰りの飛行機はよく眠ることができて、ほとんど本も読めなかった。こたけ正義感の「弁論」のYouTubeをダウンロードしておいたから、見ることができた。この日記を書いている頃には削除されているだろうが、60分の長尺漫談って伏線回収が見事で、漫談というともっとライブ感を楽しむものだと思っていたけれど、演劇かテレビ番組を見ているような見事な構成だった。

帰国したら 1/7 の夕方になっていた。一度家に荷物を置いて、そのままの足でいつものバー2つにお土産を持っていく。早速、さきほど考えた箇条書きから話を広げてうまくいった。外国のことはみんな気になるよね。

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