海賊とよばれた男 感想
「知識」「知恵」
読み終わった後、この二つが必要だ、僕はそう思いました。
百田尚樹さんの作品としては、『永遠の0』を読んだことがあるだけでしたが、僕が関西出身ということもあり、テレビでは百田さんの思想を知る機会は多く、基本的に肯定する部分が多かったので、本作もあまり抵抗なく読むことが出来ました。
そのうえで、『永遠の0』よりも強く感じたのは、冒頭に記した二つが今、必要だということです。
作中に登場する国岡商店が大きくなるにあたりいくつもの障害がありました。しかし、その障害を乗り越えるための「知識」が主人公たちにはあり、さらに「知識」では補えない「知恵」を振り絞った結果、どんな問題をも解決することが出来たのではと思います。
僕は読了時点で24歳です。戦争はおろか、高度経済成長の歓びも、この作品では一切語られていないバブル経済の崩壊にも、一切かかわっていません。
ただ、このような作品がこの時代に誕生し、多数の読者に読まれているのはどうしてかと考えると、ただの歴史小説として愛読されているだけではなく、戦争と同じように『焼け野原』と化した現状の世界に危機感を抱いている人が多いからなのではないか、とも思います。
今を憂うことは簡単です。それを発信することで『自分が社会の一端を担っている』ように感じることも容易になりました。
だが、必要とされているのはそんな声ではないはずです。
僕たちが必死に「知識」を蓄え「知恵」を絞って戦わねばならない。そんなことを、教えてくれている作品だと、僕は感じています。
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