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正反対のものに、心惹かれることがあります。
スペイン陶芸が表現する 色鮮やかさとは、対極にあるもの。
雨降る 七夕の日に、笹の葉を生けて 星空を想像したくなるような、そんな作品たち。
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もう、5〜6年前になるでしょうか。
陶作家の 若杉聖子さん の講演会に足を運んだのは。
物静かで 思慮深い空気に包まれた 若杉さんが語る言葉は、
ひとつひとつ、大切にして、放たれる。
まるで、若杉さんの 生きる時間を感じられたような、そんな講演会でした。
真っ白な作品ばかりを創る 若杉さんに、ある方が質問をしました。
「彩色しようと思ったことは ないのですか?」
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「金色は 特に、使いたくない。
簡単に 華やかさを 出せてしまうから。」
若杉さんの表現は、潔い。
泥漿鋳込み(でいしょういこみ)の技法を用いて、
いのちを感じるような 柔らかなフォルムを、白磁で表現する。
加飾は、一切しない。
透明釉さえも、かけない。
真っ白な作品には、光と影の表情を映し出して、
その力をも取り込み、神々しさを感じ入る。
肌の質感はしっとりとして、やんわりとした空気がある。
仕上げるまでに、何度も何度もヤスリで磨く工程には、
黙々として、祈りを感じる。
過去の一時、割れる表情を作品にしようと、
作品(だったか?石膏だったか?)を、何回も何回も投げつけたことが、あったそうです。
「神々しい静寂さ」を放つ、現在の作品にたどり着くまでには、
大胆で荒々しい側面もあったのだなと、
いまの潔い表現に対する、必然性と納得感を得た気がします。
花香奉
静かに音せぬ道場に 仏に花香奉り 心を鎮めてしばらくも 読めばぞ仏は見えたまふ
(静かな道場で仏に花や香をお供えし、落ち着いた心で法華経の読経を行えば、仏はその姿を現すのである)
若杉さんの作品に、再会できて嬉しい。
於 兵庫陶芸美術館
開館15周年記念特別展
「No Man’s Land-陶芸の未来、未だ見ぬ地平の先-」
※会期は終了しています
▼若杉聖子さん▼