10月に入り、あんなにガヤガヤしていたセミの鳴き声はなくなり、
きっと今年も足早に過ぎ去ってしまうのだろうと、毎年のことですが そんな予感しかしません。
国内でいいから、ゆったりとした気持ちで旅に出たいと願いつつも 身動きが取れなかったと、早くも今年を振り返ります。
そんな遠い目をしているときに、一通の案内状が届きました。
「幸兵衛窯 秋のいろどり市」
これまでも定期的にイベントの案内状をいただいていましたが、今回のように懐かしさがこみ上げることはなかったと思います。コロナ禍がもたらした生活は、悪いものばかりでもなかったように思いますが、鬱々とした気持ちになっていたのも事実です。
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岐阜県多治見市にある幸兵衛窯は、1804年開窯の かつては江戸城へ染付食器を納める御用窯でした。
現在は、体験の詰まった美濃陶磁の里として ミシュラン・グリーンガイドの二つ星にも選定されています。
幸兵衛窯六代目の加藤卓男さん(1917~2005)は、300年ほど前に途絶えてしまった幻のペルシャ陶器・ラスター彩を生涯かけて研究し、製法を再現されました。その功績により、人間国宝に認定されています。
※ラスターとは、陶磁器の表面に薄い金属の膜を作り、光の当たり方によって虹彩(ラスター)を生じさせる技法です。
ラスター彩の技術は秘伝の秘とされ、代々工房の家族だけで口伝された技術でした。
スペイン陶芸の絵付け技法の一つとして、私はこのラスター彩を知り、
もとを辿れば、それはイスラム支配の時代にスペインへもたらされたものでした。
そして、この途絶えてしまった技術が日本(幸兵衛窯)でよみがえり、
イランから技術を学びに弟子がやってくるという、時代を超えた循環。
“世界は繋がっている”
加藤卓男さんは、初期より青釉(ペルシャンブルー)の研究もされており、ハッとするような透明感のある鮮やかな深い青色に 吸い込まれそうになります。
砂漠の民にとってのペルシャンブルーは、母なるカスピ海の色と称えられ、生命の象徴であり、聖なる色彩とされているそうです。
こちらは、以前に 幸兵衛窯から連れてきたものです↓
「ホルス(ハヤブサ)」
〜青釉オーナメント・エジプトの神々シリーズ
”天空と太陽の神として崇められ、ペンダントの文様は魂の再生を表す”
遠い地のエジプトの神であろうが おかまいなし、お正月だけ神社にお参りするのもそうですが、何かにあやかりたいという いかにもご都合主義な行動かもしれませんね。
エジプトの神様を玄関に飾って、私たちを見守ってもらっています。
さてはて、今年はオンラインでも開催される 秋のいろどり市を覗いてみようっと♪