なぜ、品川杏奈は、キツネからずるい考え方を教えられることになったか
売り悩む百貨店の企画課で働く入社5年目女子の前に突然現れたキツネ。
キツネのずるがしこさに翻弄されていくうちに、ラテラルシンキングが身につき、仕事も人生も家族もうまく回りだす。7万部突破「ずるい考え方」のマンガ化!
2021年1月10日発売『まんがで身につく ずるい考え方』( 木村 尚義 著 /星井 博文 シナリオ /たかうま創 イラスト)の著者の木村 尚義 氏によるコラムを連載!
今回は、まんがで身につく ずるい考え方の企画会議でどんな話し合いが行われたかお送りします。このお話しの最後には、書店さんで飾っていただいているPOPの答えがわかります。ぜひ、お目通しください。
※まだ、POPをご覧になっていない方は、書店に足をお運びくださいね。
さて、悩み多き主人公の品川杏奈は、キツネからずるい考え方を教えられます。会議を実況風に再現してみましょう。
メンターは誰に?
最初の編集会議にて。
「なにか、メンターになるキャラ決めましょう」
一同うなずく。
ええ? かっこいいキャラにならないの?
書籍の作り方としては、原書の著者(木村です)と出版元のあさ出版の編集者、シナリオの星井博文さん、マンガ制作プロダクション"トレンド・プロ"の担当者の数人で編集会議が行われます。
"まんがでわかる"というカテゴリでは、メンターと呼ばれる指導者が出てきて主人公にアドバイスを与えることがセオリーになっています。
まあ、大抵は著者がメンターとして登場するわけです。
まんが版ずるい考え方では、どんなにかっこいいキャラになるのかと期待しまておりました。
著者として。
それが、冒頭の「なにか、メンターになるキャラ決めましょう」
木村さん、普通の人だから……という共通認識で、すでにキャラありき。
うううっ。
あらためて希望を聞かれます。
星井さん 「木村さん、導くキャラは何がいいでしょうか?」
平静を装って、はいはい。ずるい考え方を教えるキャラですね。
ふさわしいキャラ案ですよね。
ふ・さ・わ・し・いの区切りを微妙に強調します。
「そうですねぇ、ずるいキャラは、人間じゃなくていっそのこと神様にしましょうか」
ゾウの神様が教えてベストセラーになった本もあったことですし。
知恵の神様はどうでしょう?
アマテラスオオミカミが、天の岩戸に隠れて地上が暗闇になった時、知恵を貸したアマノヤゴコロオモイカネノミコト。
事前に調べておいた知識を披露する私。
準備万端のはずが、様子がおかしい。
一同、「はぁっ?」 怪訝な顔をしつつ私を見つめる。
しばしの沈黙。
会議室が気まずい空気が充満します。
十分に換気されているのに。
「ほな、神様じゃあらへんけど、キツネなんてどうやろか。昔から人をたぶらかす、ズル賢いそうな動物でオモロくないですか」
“なんでもマンガにする男”星井さんの助け船。
関西弁が沈黙を破って場を和ませます。
こうして、困っている主人公に、
キツネがラテラルシンキングを教えることになったのです。
ついでに関西弁に…。
舞台はつぶれかけのボロボロ神社
なんやかんやで、著者の神様というアイデアを折衷案として、
「お稲荷さんのお狐さま」に決まります。
キツネに決まったからには、著者として稲荷神社を調べました。
稲荷神社は、稲という文字からもわかるとおり、豊作を司る神様です。
豊作は、「とみをつくる」ということで現代では、農作物に限らず商売繁盛のご利益もあります。
稲荷神社の狛犬はキツネです。
キツネは眷属、つまり神様のお使いです。
なぜお使いがキツネか。
稲が実ると重みで、稲穂が垂れ下がります。
この稲穂がキツネの尾っぽに見えるから、ちょうどいいと神様がお使いに抜擢されたと伝えられています。
「主人公の実家は神社にしますわ。それも潰れかけのボロボロの神社でどうやろ」
江戸期から400年以上続く神社。
それなりに繁栄していたが昭和の頃に改築してから70年以上も過ぎてしまった。
修理したいのだけれど宮大工の仕事になるので、結構な出費となるが資金繰りができない。
地域が高齢化して昔からの氏子が減ってしまっているからだ。
氏子がいなければ、地鎮祭とか大きめの収入源が絶たれてしまう。
このままでは、神社は廃社して土地をマンション用地にしてしまうしかない…。
そんな神社に暮らす人々とキツネさまの物語、というわけです。
キツネはどんなキャラにする?
主人公、登場人物たちを導くキツネのキャラ設定は、かなり重要です。
そこで、次のような設定になりました。
神様のお使いだから人の言葉がわかる。
キツネは神社を救いたいんですけど、直接手出しはできない。
だから、もどかしくて姿を現すものの、特定の人にだけしか見えない。
神社の復興は、神社の孫娘である杏奈にお願いするしかない。
そこで、自ら杏奈のメンターとなり、様々なことを教え、導いていく…。
キツネさんは、こうして生まれたのです。
その後、ストーリー構成の話に移り、
編集会議が終わったのは数時間後でした――。
さて、書店POPのクイズの答え、もうおわかりですね。
①人間の言葉をしゃべる
②特定の人だけが見える
③ずるい考え方を教える
ということで、正解は全部です!
***
まんがは、謎解きを含めてストーリーが大事。
「物語を動さんといかんので、キツネはんも、秘密をもっとることにしましょ」と星井さん。
秘密を何とかするため、神社を復活させなきゃいけない。
これが、杏奈にキツネがラテラルシンキングを導く動機となるわけですね。
ただ、キツネにとっては重大な秘密なんです。けど、他人から見ると……?
どんな秘密かは、本書をお読みください。
※注 この記事は"かなり"の脚色をしておりますが、だいだいはこのように進みました。
『まんがで身につく ずるい考え方』
刊行日:2021年1月10日(日) 価格:1,430円(税込)
著者名:木村 尚義 (著), 星井 博文(シナリオ),たかうま創(作画)
ページ数:184ページ ISBN:978-4-86667-257-1