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破壊神マグちゃんZ(第二話)


「おやじィ!レバニラとビールな!」「エビチリにギョーザ3人前!チューハイとハイボール」
労働者と思われる客たちの注文が飛ぶ。一気に店が活気づく。
「おお、ルリちゃんお手伝い頑張ってるねぇ。グラスちょうだいな」「まいど~今日はアジフライがオススメだよ」「いいねえ~じゃ、頼んじゃおうかな?」「じーちゃん!アジフライ1つ!」
威勢の良い掛け合いが心地よい。

満席になったため、招き猫の横に追いやられたマグ=メヌエクは怪訝そうなまなざしで店内を眺める。
『ど、どういうこと?なんか宇宙人みたいなヒトばっかりなんだけど?』節足動物や軟体動物、4本腕の岩石人間・・混沌住人に慣れ親しんでいる流々もさすがにこの一団には困惑する。
「ナプタークよ。この有様はどうなっておる?混沌の者ばかりではないか」
喧騒の厨房からはナプタークらしい回答が返ってくる。
「金を払うのは客だ。金を払わないのは従業員。それ以外は気にしたこともないな」洗い場のナプターク「詳しいことはユピススにでも聞くがよい。」揚げ場のナプターク「ウーネラスは久しく見ておらんな。」
分体で厨房は大混雑。とてもこれ以上の情報は聞き取れなさそうだった。
「ルリよ、ユピススはいつ訪れるのだ」
「ユッピー?週に1回ぐらいかな?今週はまだ来てないよ」
「そうか、しばし待つことにしよう。」

数日経ち、なじみの客も分かるようになってきた。
瑠璃は近くの幼稚園に通っているが、そちらも混沌住人ばかりでニンゲンは見当たらない。マグ=メヌエクからすれば混沌の世界である現状は心地よささえ感じていたが、流々がうるさく問いてきた。
そんな中、初めてニンゲンの客が食堂に訪れる。
「いつものお得セットひとつ~・・あれ?新しい住人っスか?ちゃんと紹介してくれなきゃ困りますよナプさん。」青年らしい客がマグ=メヌエクを一瞥して席に着く。
『あ、普通の人もいるのか~ホッとしたよ』瑠璃以外にも人類が生存していたことに安堵する流々。しかしマグ=メヌエクは青年を凝視している。
『どしたの?マグちゃん?』
「・・なんだ彼奴は・・ニンゲンでは無い。」
『え?どう見てもさわやかお兄さんだよ?』
「よく似ておるが、我の目には魔導具が動いているようにしか見えぬ。ウーネラスの仕業か?」
『マジか・・じゃあ瑠璃ちゃんも?』「ルリはニンゲンで間違いない」
青年がこちらの視線に気づいた。
「ピンクボールさん、初めまして。自分は聖十字騎士団の者ですが、明日にでも騎士団で住民登録してもらえますかね?場所はナプさんに聞いてください・・・ナプさんお願いできますか?」
『聖十字騎士団?ウネさんが推してる騎士団っぽいけど・・このお兄さんの恰好は役所のヒトみたいだね・・』
「フムン・・ユピススも現れぬし、出向いてやろう」
「あたしが案内してあげるよ」と瑠璃。




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