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ねこが潜り込んでくる話
リビングのエアコンはわたしが寝室に行く時にオフになるけども、暖気はしばらく残るしホットカーペットはつけっぱなしでねこのベッドはいつもほかほかだ。
ねこもそれは充分わかっていて、わたしがベッドに入りスマホをいじるのをやめ、ライトを消すのを確認するとそっとリビングへ戻っていく。
そして早朝4時過ぎからそれは始まる。
枕元でそっとわたしの額に爪を立て、ちょっと起きてくんねえか、というねこ。
多分リビングの室温が下がったのと、トイレを済ませたよという報告なのだけれどそんな報告は寝てる時はいらない。
でも仕方ないので目を開けずに「えらいね」と褒めて(なぜならニンゲンが目を開いた=起きるということだとねこは認識しているから)そのまままた寝ようとすると、今度は額をちみちみと噛む。
額のような脂肪の少ないところをなぜ。
で、しょうがないので「はいる?」と布団を少しだけ持ち上げると、ちらっとのぞいて、どーしよっかなーというねこ。
しばらくのぞいて、やっぱりいい、と後退りするので「ああそう、じゃあおやすみ」とふとんをばふばふと戻して目を閉じると、また今度は瞼のあたりをちょいちょいとつついてくる。
「やっぱりはいる?」ともう一度布団を持ち上げる。
頭を突っ込み、うーん……としばし考えるねこ。
一体なにを考えることがあるのか。
それなのに、ねこはさらに布団の中に一歩進み頭だけつっこんだ状態でまたしても考え込む。
その間、布団はねこの肩の高さくらいにはめくれている。
寒い。
結局ねこは、そのあとズボッと入ってきてくるりと向きを変えわたしの右腕を枕にどすんと倒れ込むようなかたちで寝るのだけれど、バックハグのような状態になるので正直肩がものすごく冷える。
彼はひとりで寝るときは身体丸ごと布団の中に潜り込むくせに、ニンゲンというかわたしと寝る時にはわたしと同じ並びで頭が出ていないといやらしい。
そうなると自然とその下にあるわたしの肩も布団外になるわけで、そりゃ寒いに決まっている。
そこでおやすみマフラーの出番。
おやすみマフラーとはその名の通り、寝る時に首周りと肩の冷えを防ぐための小さいマフラーで、それを装着すれば多少肩が出ようがまあまあ暖かい。
さあ来い、ねこよ。
ふははははは。
というわたしの思惑は逆張りとなった。
ねこもその短くもない猫生でこういうふわふわは暖かいと知っている。
それもニンゲンと密着しているふわふわは特に暖かい。
だからこの中に入ればもっと暖かいに決まっている。
そう考えたらしいねこが、わたしの首とおやすみマフラーのすきまに入ろうと頭をぐいぐいと突っ込んできた。
マフラーはボタンで留めてある。
ジャスト首サイズ。
そこに頭を。
ヤーメーテーーーーーー。
こうしてわたしの安眠は奪われる。
でも仕方ない。
なぜならねこは正義だから。
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