切り抜き動画はどうすれば面白くなるのか。考えてみます。
切り抜き動画を編集する人にとって共通の、そして永遠の課題は「どうすれば切り抜きが面白くなるのか」ということだと思います。
このnoteでは大まかに切り抜き動画を編集するためのメソッドをまとめ、これから切り抜きを始める人も始めやすいように、もちろん編集を既にやっておられる切り抜き師さんにもタメになるように、最も基本的で重要なポイントを書いていきます。
はじめに
まずは自己紹介から。私はZuppin’ という名前で切り抜き動画を上げていて、にじさんじEN所属の狂蘭メロコさんの切り抜きを主としています。
私自身、まだ切り抜きを始めて一年ほどしか経っていないのですが、やっている中で色々と気付いたことがありますので、切り抜き動画の作り方のコツをポイントごとにまとめてみました。少しでも皆さんのお役に立てれば嬉しいです。
この記事の意図
あえて特定のチャンネルをあげつらうことはしませんが、音声から文字起こしする機能などで適当に字幕をつけた編集をし、サムネイルだけセンシティブにすることで再生数を稼ぐ切り抜きも、最近はよく目に付くようになってきました。ちなみにこれは二次創作ガイドラインに違反する行為とみなされる可能性が高いです。例えばANYCOLOR(にじさんじ)さんの規約にはこう書かれています。
いわゆるクリックベイト的な手法と言えるでしょう。またこうした粗悪な大量生産の切り抜きというのは字幕もいい加減で、編集も荒く見づらいのが特徴です。
ちなみに、編集をはじめたばかりでも頑張って作っておられる方の動画には愛があるので、見てすぐに分かります。大量生産の切り抜きとは明らかに違います。ですからそういう方は、練習のためにも、ぜひ愛を忘れずに編集を続けてください。練習あるのみ!
今回は、そうした初心者の方や「切り抜きしたいけど出来るか不安…」という方にもこれを見てもらって、ぜひ切り抜きを始めて欲しいという思いから記事を書いております。リスペクトのない悪質な切り抜きが伸びてしまうのが現状、しかし、もっともっと良い切り抜きが増えて欲しいと思うわけです。
切り抜きをする上で大切なこと
では具体的な編集の方法の前に、まず一番大切な前提条件みたいなものを書いておきます。サッとで構いませんので、必ず読んでください。
・規約に従う
これを無視するようではそもそも切り抜き師としてダメです。規約違反があった場合は運営側から削除依頼が来たり、最悪の場合はチャンネルがBANになることもあるかもしれません。常に「これって規約的にOKなのかな?」と疑問を持ちながら二次創作を行うようにしましょう。
個人・企業など様々なVTuberの形がありますが、まずは設定されたガイドラインをよく読み、違反のないように十分気をつけましょう。知らなかった・読んでなかった、が通用するわけはないです。
企業によっては、あなたの運営する切り抜きチャンネルを登録するシステムがあります。例えば、ANYCOLORさんは以下のように連絡先登録フォームを開設しています。
これに登録することで、切り抜き動画のガイドラインについてのお知らせを優先的に送ってもらえるようです。また規約違反があった場合に、YouTubeでの削除申請の前に、あなたの連絡先へ削除依頼を送ってくれるというシステムになります。
他にもホロライブのCOVERさんも申請フォームを設けていますし、ぶいすぽっ!さんはそもそも申請し許諾を得た人にしか切り抜き動画の投稿を許可していません。
私はホロライブのタレントさんとのコラボ、もしくはチャンネルに出演している配信を切り抜くことがあるため、この申請をしています。また、ぶいすぽっ!のストリーマーさんとの共演もあったため(相手視点を切り抜くわけではありませんが)、念の為に切り抜き制作の申請し、許諾番号をいただいています。
・誰が面白いのか?
基本的な心構えとして、面白いのは配信者さんであって、自分ではないということはきちんとわきまえておく必要があります。もちろん編集の面白さというのもあるんですが、我々が住んでいるのはあくまで二次創作の世界なので、0から1を生み出している配信者さんありきの創作になるわけです。「どうだ!自分って面白いだろ!」をやりたければ是非0から自分で何かを生み出してください。
要するにリスペクトがあるかどうかという話で、それは出来上がったものを見れば一目瞭然かと思います。
・収益化について
切り抜きをする上で好きな気持ちは大前提です。当たり前です。推しの好きなところを伝えたい!が無ければ続けられないのが二次創作です。お金稼ぎのためのコンテンツとして消費するようになっては、もはやそこに「好き」の気持ちはありませんし、そういう意味でも収益を目的とするのは、私はやめておいた方が良いと思います。
ただし、二次創作の規約やYouTubeの規約に則っている限りは、収益化が一応は認められるところもあります(事務所ごとに異なる)。
いずれにせよ、制作費用のためなどに収益を得るなら理解できますが、完全にお金稼ぎのために切り抜きを作るのは危険だと思います。
・技術は盗むもの
自分のスタイルを持つことは重要です。しかし、ほかの切り抜き師さんの動画を見て良いと思ったところは、どんどん取り入れていくべきだと思います。もちろん全部をそっくりパクるのはダメなので、自分なりにアレンジしつつですが。私も周りの切り抜き師さんや尊敬する切り抜き師さんの動画から刺激を受け、色んな影響を受けて編集スタイルを変えてきました。
以下に個人的に好きな切り抜き師さんを載せておきます。ぜひ色んな動画のスタイルを見てどんどん学んでいきましょう。(もちろん私も学んでいる途中です)
ゆずポン酢 さん
…にじさんじといえばこの方。膨大なアーカイブを追い、丁寧にまとめる職人。基本的なテクニックが詰まっている。
https://www.youtube.com/watch?v=AEFd_7SqYeM
Kaybow さん
…ENの切り抜きと言えばこの方。独特のテンポ感と英語圏のネットミームの使い方が天才的。同時にサムネ職人。
https://youtu.be/UAOZeARSsng?si=Ve694x-stzL8hJT
清掃員バイト さん
…丁寧で見やすい字幕。画面上のテロップが消えずに溜まっていく編集が特徴的で面白い。愛に溢れた神切り抜き師。
https://youtu.be/pHk260KvK74?si=BaDpMTlAnlbkCr4g
あひるだっく【ホロライブ切り抜きch】 さん
…圧倒的な素材の数と編集力。配信の画面だけでなく制作した画像を用いる編集が特徴。
https://www.youtube.com/watch?v=M0riv9lmEok
にじさんじどうでしょう さん
…また違った形で画面上にテロップが残る編集をしている。色々な素材も使いこなしているのがすごい。
https://www.youtube.com/watch?v=N-ZqfUqfTGs
けーる さん
…字幕は必要最低限に、ツッコミのテロップを多めに。カット編集に個性があり、メインに対象物のアップなどで、独特のテンポの良さと面白さを演出している。
https://www.youtube.com/watch?v=J14BRp1xfvo
私がメインで切り抜くのは狂蘭メロコさんなので、英語から日本語に訳した字幕が必要であることがほとんどです。よってJPの切り抜きのようなことができない場面が多く、字幕を減らすのが難しいという課題を抱えています。
ちなみにこうした切り抜き師さん達を参考にさせていただき、試行錯誤の結果生まれたのがこちらの動画です。
・“完成” は無い
「よしこれで100点」という瞬間は訪れません。後から見返して直したくなる箇所なんて無限にあります。特に始めたばかりの頃の動画を見返すと「なんでこのフォントを使ってるんだ…」「ここはカットしとけよぉ…」とツッコミの嵐になります。
しかし「もっとこうできた」は次回以降に活かすしかありません。たくさん編集して慣れる必要があるので、いくつか作って終わりではなく、とりあえず続けてみること。私もつい先月や、ひどい時には先週の動画を見返して、全然ダメだなとか思いながらやっています。
編集のポイント
では具体的にどういう点に気を付けて編集すれば、配信の内容がより面白く動画になるのか。ポイントごとに書いていきます。
・カット編集
まずテロップなどを付ける前に全てのカット編集を行うのがオススメです。全てをカット編集していきながら大まかな完成イメージを膨らませていきます。
そしてカットで重要なのは、音の波形を見ながらカットしていくということ。作りたい動画にとって余計な部分は無くしていきます。余計な部分とは、大まかにこれらのことです。
・間
・フィラー(えー / えっと / んー等)
・言い間違い
・繰り返し
内容が改変されたり、歪んだりしない程度に、なるべく以上で書いたものを無くしていきます。もちろん「間」が面白ければ残しても良いのですが、ただ間延びするだけならカットしてしまうと良いと思います。
ただし、カットの際に音がブツ切りになりすぎないように、フェードインやフェードアウトを入れるのはひとつの工夫です。
雑談のラジオ的な良さを出したいならそれでも良いので、これは目指す動画のスタイルによるところが大きいでしょう。ただ、これから書きますが、「字幕」を全て付けようと思うと、とても量が多くなって編集が大変なのが問題です。また、その雰囲気を楽しみたいならカットをあまりしないことになるので、元配信を見たら良いのでは?とも思います。
よって、切り抜きする際はテンポを重視して編集し、配信とは別の物を作り上げるというのが私の切り抜きに対する考え方です。
・字幕/ツッコミのテキスト
文字を入れるといっても、字幕、ツッコミ、補足テキストなど、色々な種類があります。ただ全てに共通して言えるのは、シンプルで読みやすいものが求められるということです。
また、必ず波形を見ながら音と字幕を合わせてください。これは私の個人的な感想なのですが、ほんのわずか(1~2フレーム)だけ字幕の表示が早いと綺麗に見える気がします。
〈字幕〉
何も全部を書き起す必要は無いと思いますので、読みにくさの原因となる余計な文字を減らすと良いでしょう。そもそもそういったフィラー(えっと等)の箇所はカットの際に無くしておくと字幕も付けやすくなります。
また、白色のテキストに濃い色のふちどりをし、シャドウ(影)を付けるなど、とにかく読みやすい字幕を心がけます。
〈ツッコミ〉
字幕とは字体を変えて入れます。明朝体、白文字に黒のふち取りが多い印象ですが、ツッコミだと明確に分かるようなら、スタイルは自由で良いと思います。ただし、ツッコミを入れる動画は編集者の自我が現れるので、視聴者の好き嫌いは別れやすいと思います。
〈重要な発言〉
他にもシュールな発言や、重要な箇所を白の明朝体など分かりやすいテロップで入れることがよくあります。インパクトが大事ですね。
・補足や注釈
正しい情報、文脈(コンテクスト)、大事な英語の語句などを補足的に追加することが求められる場面もあるでしょう。
「〜〜とは〇〇のこと。」「その後は〜〜でした。」など、情報を加える注釈的なテロップを皆さんも見たことがあると思います。
・チャプター分け
ある程度の長さがある動画の場合、動画をチャプター分けすることがあります。チャプターが始まるタイミングで大きく文字を出すカットインを挿入したり、そのチャプター中ずっと上に文字を出しっぱなしにしたり、やり方はさまざまです。
・フォント、大きさ、配置
では上で書いたようなテキストをどのようなスタイルで表示するのが良いのでしょうか。簡潔に一言、思ってるよりも大きくして良いです。
編集してるのがPCでも見てる人はスマホが多いわけで、特にツッコミや面白いセリフのテロップは、画面の半分が埋まるくらいまで大きくする人もいるほどです。
英語字幕を付ける場合には、その大きさや配置も考えながら編集していきます。英語学習に重点を当てる動画は英語字幕を大きく日本語字幕を小さく(もしくは薄く)します。そうでなければ、英語字幕は小さく日本語字幕を大きくすると良いでしょう。動画の目的に合わせて変えていきましょう。
ただし、誤字・脱字のチェックは怠らないように常に神経を使いましょう。すごく気を付けていても投稿した後に誤字に気付くことが多々あります。(切り抜きをやっておられる方なら共感していただけると思いますが。) 意識しててもたまにミスするので、本当に注意しましょう。
・効果音
効果音は多すぎず少なすぎず、バリエーションを増やす必要があります。同じ効果音を何度も使うとあまり面白くなりません。オススメの効果音配布サイトは「効果音ラボ」さんと「OtoLogic」さんです。
・画像
話しているものの写真・画像を補足として出すなど、視覚的に分かりやすくなると一気に面白くなります。配信者さんの画像でも「いらすとや」の画像でも、とにかく視覚的に分かりやすく面白くしていきましょう。
・BGM
配信にBGMがある場合はあまりオススメしませんが、BGMを付けて動画を演出すると一気に面白くなる時があります。元々のBGM音量が無かったり小さければ別のものを入れても良いと思います。
(参考動画① https://www.youtube.com/shorts/2Uazbfr51Ac)
(参考動画② https://www.youtube.com/shorts/OpxHyazhUJY)
・エフェクト
編集に慣れてきたらで良いのですが、エフェクト付けると動画をかなり面白く演出できます。例えば、セクシーなことを言ったシーンにピンク色のフィルターをかけたり、慌てているシーンで画面を振動させたり。こうしたエフェクトがあるとより充実した動画になるでしょう。
また、効果的にアップを使うと良いでしょう。強調したい面白いシーンなどがあれば、その部分は一瞬だけ顔をドアップにするという演出です。
(参考動画① https://www.youtube.com/shorts/x73VZWI6r-s)
(参考動画② https://youtube.com/shorts/KtZqDlW3S0c)
・プレビュー
はじめに動画の見どころを持ってくると視聴維持されやすいということがあります。「ちょい見せ」ということですね。動画がある程度の長さがある場合はあると良いと思います。
(参考動画 https://www.youtube.com/watch?v=kQhHZBhr_vg)
サムネイルについて
1番面白いシーンなど、その動画を象徴するところを “切り抜く”。つまり切り抜きの切り抜きということになります。切り抜き動画の切り抜き画像がサムネイル。
内容と乖離しすぎないようにすることが重要です。あまりに内容と異なる場合、たいていガイドライン違反になるので注意しましょう。
スマホだとおすすめは「Perfect Image」「アイビスペイントX」「Picsart」です。ひとつのアプリで完結することはないため、いくつかのアプリをまたぎながらサムネイルを作ります。
また、ショート動画の場合はサムネイルを設定できないのですが、iPhoneなどスマホでYouTubeを開いて投稿すると、動画内の好きなシーンをサムネとして設定できます。ショートを編集する場合は「このコマをサムネにするぞ!」という特別気合いを入れた面白シーンなどを、自分で決めながら編集しておくことをおすすめします。
タイトルの付け方
切り抜き動画を投稿する上で意外と重要な要素がサムネイルのほかにもあります。それは「タイトル」です。いかに最初の数十文字で “見たい” と思わせるかが鍵になってきます。
例えば【切り抜き】や【狂蘭メロコ】などを最初に持ってきたら、その時点で当たり前に分かっている情報に何文字も割くことになります。【爆笑】などはまだ良いかもしれませんが、できるだけサムネイルでは分かりづらい情報を付け足すようにタイトルを付けると面白いでしょう。
配信・ゲーム理解
最後になりますが、おそらく最も重要なのが、切り抜き元となる配信への高い理解度、配信でプレイされているゲームへの理解度になります。「ちょっと見かけた配信が面白かったので、その3分だけ切り抜いてあとは見ていない」といった事態はあってはならないと私は考えています。
最低でも配信全体を視聴し、切り抜き箇所の前後の文脈や補足を確認しておくこと。可能ならば、その配信者・VTuberさんの配信をある程度の期間、視聴し続けてその人への理解度が高まっていることが大事だと思います。
また、配信でプレイされるゲームへの理解もある程度は必要です。少し調べてみて専門用語や戦略などの知識を身に付けておくと、より切り抜きが見やすくなる助けになるでしょう。
最後の最後で切り抜きへのハードルを高めるようなことを書いてしまって申し訳ありませんが、「有名配信者さんの面白シーンを切り抜いておけば視聴回数を稼げる」と考えた人が、その配信者さんへの知識があまり無い状態のまま作った切り抜き動画の見にくさといったら、それはもう目を覆うほどのものです。
話題性だけに頼るのではなく、配信者さんへの愛が感じられる動画が増えて欲しい。この記事に一貫して埋め込まれた私の想いを、どうかご周知いただきたいです。
おわりに
私も時間が限られている中で編集しているのでこれらを実現できない時もあります。生活がありますし、ある程度のところで妥協するしかない時も多いです。ただ、できるだけ面白くなるように、こうしたことを意識しながらやってみるとより良くなると思います。
私なんかよりも面白い切り抜きを作る方、編集力のある方はたくさんいらっしゃいますので、編集の技術的な面ではそうした方たちを参考にしつつ、メソッドとしては私のまとめたものを参考にしていただけたら嬉しいです。
ご質問・ご指摘あるいは改善点などあれば、遠慮なくコメントに書いていただけるとお答えできますので、是非よろしくお願いします。
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