見出し画像

失恋ボブ

最近、髪の毛をバッサリ切ってボブにした。
ずっと黒髪ロングを貫いてきた。
実に15年振りのショートヘアだ。

友人や職場の同僚に、ボブにした理由を聞かれたら「インスタで見て自分も挑戦してみたくなったから」と答えている。当たり障りなくて、ベストな回答だと自負している。

しかし、本当の理由は「失恋」というものをしたから。新しい自分に会ってみたくなったのだ。

好きだった彼とは同じ授業を履修し、知り合った。
授業の回数が重なるにつれて、趣味や家族のことまで幅広く話せる間柄になっていた。

そして卒業直前、勇気を振り絞ってご飯に誘った。「授業で助けてくれたお礼」と、必死に理由をつけて。

自分で言うのもなんだが、私は良い子ちゃんだから彼女の有無を事前に確認した。女の敵は女だと思うし、自分が彼女の立場だったらイヤだから。
本人曰く、「いない」そうだった。

舞い上がった私は早速ダイエットに励んだ。2週間で4kgほど落とした。そして当日は柄にもなく、新しいワンピースをおろし、美容室でヘアセットまでしてもらい、ずっと笑顔を心掛けていた。
必死に自然を装って一緒に撮ってもらったツーショットに映る自分は、憎いくらいに幸せそうな顔をしている。恋のチカラってすごい。

しかし、現実は違った。
ひょんなことから後日、彼の彼女と思しき女の子のインスタを見つけてしまったのだ。
水族館で撮影された、彼の姿が映った写真。私とご飯に行く前日に撮影されたものだった。
 
どうやら嘘をつかれていたらしい。
私はショックを受けて、毎晩泣いた。
今でも思い出してたまに泣いてしまうくらい。しんどい。

嘘をつかれていたことがショックというより、彼にとっての私は嘘をついても良い存在だったということが辛かった。

まあ彼は、私とは卒業したらお別れだから、穏便に終わろうと考えて苦し紛れのウソをついたのだろうけど。女の勘は怖いものです。

ずるい私は、彼女と別れる日を待つかのようにLINEもそのまま繋がっているし、一緒に遊んでいたゲームのフレンドとしても繋がっている。
恐らくこの先、会うことはないと思うけど、「女友達」というポジションが捨てられなかった。本当にずるい。

そして最近は、彼が物の角に足の小指をぶつけるくらいの不幸を願ってしまう自分がいる。勝手に好きになって、勝手に詮索して真実を知ったくせに。チキって気持ちすら伝えられなかったくせに。我ながら酷いな。でもそれくらい許してくれないかな。