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2.死生観

「エリアドルの王国」

中学生の私に父が買ってきた本で、今まで何度も何度も読み直してきた、私の死生観の一部になっている本の話をしたい。

作者は13歳のフランス人の女の子。当時の自分とそれほど歳の変わらない女の子が、どうしてこんな物語を書けたんだろう。

出生も家柄も性格も違う3人の女の子が、予言に導かれて、勇者と共に世界を救うというストーリー。これだけ聞くと王道ファンタジーのようだけど、家族とは、友とは、愛とは、そして死とは何なのかが問われている。

物語の中で、彼女たちが死神に会いに行き、死神がストライキをやめるように説得しに行くシーンがある。死神が、人を死に導く役目が嫌だとストライキを起こしていたため、たとえどれだけ瀕死の重体でも人が死ねなくなっていたのだ。
彼女たちは、「あなたがいるから『生』に意味があるのよ。あなたがいなければ、だれも今を大切にしようとはしなくなる。あなたは『生』の一部なの!」と訴える。これは14歳の私にとって衝撃的だった。生と死は正反対の概念で、死は悲しいもので、でも人はいつかは死ぬから怖い、と思っていた。

小学生の時のある夜寝る前に、どうしてそんなことを思ったのかは覚えてないが、急に母が死んだらどうしようと不安に襲われ大泣きした事を思い出した。母に泣きつき、慰められながら泣き疲れて寝た日から、私にとって死は私から母を奪う怖いものだった。

以来死が私の周りをチラつく度に、この本を読むことにしている。祖父の死、愛猫の死、祖母の死、大切な人の死。これからも色んな死が私の前を通り過ぎる事だろう。私もいつか死ぬ。それまで私の生を可愛がる事にする。


ところで私がこの本で1番気に入っているのは、死神も黒髪ショートボブのお茶目な女の子として描かれているところ。いつか来る私の死に際にも、彼女が「会いたかったわ」と笑って手を引いてくれると信じている。

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