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運転免許がなくて、ごめんなさい。
接客などで、人と相対する仕事をしていると、逆の立場になったときに不快な思いを与えないように気をつけようと、常に思っている。
でも一度、やっちゃったなーと思ったことがある。
私はひとりっ子で育った。
母が亡くなり、次に父が亡くなったときには、すべての手続きを私がしなければならなかった。
交通事故で他界した父だったので、警察での手続きをはじめ、葬儀・埋葬、年金、生命保険、実家の土地建物などの相続関係、電気、水道、ガスなどや、銀行等の口座解約手続き、などなど。
実家とは違う県で生活をしていたため、少しずつ手続きを進めようと片道5時間程度かけて、何度か往復していた。
どこにいっても言われることがある。
「本人確認として、運転免許証をみせてください」
当時、わたしは運転免許を取得していなかった。
だから健康保険証など、その機関が定める手続きができるよう書類を準備していた。
何度も何度も、毎回毎回、
「運転免許証を確認させてください。」
「すみません、持っていないんです。」
そう言わなければならなかった。
ある窓口に行ったときも、そうだった。
「運転免許証を確認させてください。」
「すみません、持っていないんです。」
「代理人の方が来られるようでしたら、その方の運転免許証があればすぐ手続きできますよ。」
え? 娘である私が窓口に来てもダメで、免許を持っていれば他人のほうができるってこと?
私は父が亡くなってから、ずっと誰にも相談できず、仕事の合間に県をまたいで行ったり来たりして疲れ切っていたのだと思う。
その代理人の話を聞いたときに、ブチッと何かが切れた。
「運転免許って、国民の義務なんですか!?」
運転免許をもっていないことで、それまでも不便な思いをしたことは多々あった。
でもその時は、それまでの何十倍も悔しかった。
私の剣幕に別の人が飛んできて対応してくれたけど、結局、ルールはルール。
その場で手続きは完結しなかった。
とても情けなかった。
窓口の人に食ってかかっても、何も解決しないのに。
対応した人は、決まりを守っただけなのに、嫌な思いをさせてしまった。
そんな自分が情けなかった。
数年後、いい年をして学生に交じって自動車教習所に通い、免許を取得した。
父が私に、免許を取得させてくれたのかもしれない。
あのときの窓口のかた、本当にすみませんでした。
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