いとも簡単に幸せになれる
今年初めて梅干しを作った。
料理家の今井真美さんのジップロックで漬けるレシピを参照しながら行った。最高に楽しかった。芳醇な香りを放つ梅をひとつひとつ手にとる行為も、水を張ったボウルにいれると産毛の間に空気が溜まりガラスに覆われた様に輝く姿も、塩に漬けられて梅酢を出しながら変質していく様子も、全て新鮮な美しさが楽しかった。
天日干しをしている間、裏返したり日当たりの良いところに移動したり、植物が繁殖目的に用意したモノを甲斐甲斐しく世話をする自分におかしみを感じて楽しかった。乾燥具合を見るために表面に浮く塩の様子を眺めるのも、五感を使って食べ時を判断する原始的な行為に興奮した。
出来上がった梅干しを口に含むと、強烈な塩気と熟した食感、そしてなんだか鮮烈に痺れるような風味が舌を撫でた。鼻に抜ける香りは華やかな果実のそれで、その対比も面白かった。
こんなミニマルな味なのか、手作りの梅干しは。けっこう衝撃だった。友人の母の手作りの梅干しをいただいたこともあったけど、自分で仕込んだ故のバイアスなのか今まで食べた梅干しと全く別物に感じた。
割とどこでも手軽に手に入る梅干しをわざわざ自分で作るだけでこんなに楽めるのか。なんと安上がりで素晴らしいのだろう。
無職の時、昼頃に起きて洗濯物を干してベットの上に仰向けになり頭の後ろに腕を組みながら全くの独り言として、うまく干せたなぁ、と呟いた時、私、いとも簡単に幸せになれるな。と思った。
今後も生活を楽しむセンスを磨いていきたいなと思いながら梅干しを食べている。
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