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野乃姫(4)

童の名前は風丸と言った。

身分が違うので、姫様に近づくなどもっての外。
しかし、風丸はまさに風のように、
          いつのまにか姫様のそばにいるのだった。


 風丸は、様々なお土産を姫様に持って来た。可憐な野の花。綺麗に色づいた紅葉の葉。貝合わせに使う貝。袖に蛍を忍ばせてきて座敷にぱっと放ったこともあった。そして、屋敷の外のおもしろい話を語って聞かせるのだった。一人でいることが多い野乃姫様にとって、それらはみんな心の慰めになった。
(つづく)